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40話「リスベルンの王太子の初恋」




「クヴェル殿、アデリナ殿。

 謁見の間へ来てほしい」


お昼まで寝かせて欲しい……と思ったら、とっくにお昼を過ぎていた。


クヴェルにライニゲンダー・シャワーをかけてもらい体を綺麗にしたあと、いつもの服に着替えた。


国王の話が長くなると面倒なので、クヴェルがアイテムボックスに入れていた食料で簡単に食事を済ませた。


宴の時間には早い気がするけど、何かあったのかしら?





◇◇◇◇◇





子供の姿のクヴェルと謁見の間に向かう。


謁見の間の扉を開けると、玉座に国王がいて、隣の椅子に若い男がかけていた。


リスベルンの王太子、テオドリック殿下ね。

顔色も良さそうだし、回復されたのね。


テオドリック殿下は紫色の長髪に、銀色の目の美男子だった。


大人のクヴェルの方が百倍かっこいいけど。


テオドリック殿下がこちらに気づき、颯爽と歩いてくる。


「お初にお目にかかります……」


お初でもないかな。昨日会ってるし。


「アデリナ殿、お会いしたかった!

 私の女神!

 昨日は助けてくださりありがとうございました!」


テオドリック殿下が私の手を取り、破顔した。


女神……?


「いえ、助けたのはクヴェルで……」


隣りにいるクヴェルを見ると、眉間にシワを寄せ、人を殺しそうな目でテオドリック殿下を睨んでいた。


「王太子だかなんだか知らないけど、気安くアデリナに触らないでくれる!」


クヴェルがテオドリック殿下の手を叩いた。


「クヴェル!

 相手はリスベルンの王太子だよ……!」


「知らな〜〜い。

 僕の大切な人に触れる奴は誰でも関係な〜〜い」


クヴェルは子供みたいな事を言って、そっぽを向いてしまった。


「失礼しました。

 テオドリック殿下」


「いえ、私の方こそきちんとした挨拶もなしに、触れたことをお詫びいたします」


テオドリック殿下が頭を下げた。


礼儀正しい人だな。


「改めてお礼を言わせてください。

 昨日は助けてくださりありがとうございます。

 私だけではなく、兵士も国民も救われました」


テオドリック殿下が歯を見せて笑う。

爽やかだな。


「お礼ならクヴェルに言ってください。

 私は彼の補助をしただけですから」


「もちろん。

 クヴェル様にもお礼を申し上げます」


テオドリック殿下がお礼を伝えても、そっぽを向いたままでクヴェルは眉一つ動かさなかった。


「今宵はミドガルズオルムを討伐を祝して宴を開きます。

 アデリナ殿、私のパートナーとして参加していただけませんか?」


テオドリック殿下が手のひらを上にして、私の前に差し出した。


「えっ……?」


バチンと火花が散り、テオドリック殿下の手が弾かれた。


「クヴェル、殿下に何したの!?」


「アデリナの周りにハエが飛んでたから、結界を張っただけだよ」


クヴェルはクールに言い放ち、テオドリック殿下を睨めつけた。


神様だからって、好き勝手し過ぎじゃない?


「クヴェル様は手厳しい。

 愛を囁く機会もくださらない」


愛? 誰が誰に囁くの?


「宴とかどうでもいいよ。

 僕は報奨金を貰って帰る。

 国王、約束を果たしたんだから北の街道の封鎖を解いてよね」


クヴェルはめちゃくちゃご機嫌斜めだわ。


「クヴェル殿、そう急がなくてもよろしいではありませんか」


国王が玉座から降りて、ここまで歩いてきた。


「お二人をお呼びしたのは、お礼を伝えたいからだけではございません。

 今朝、トリヴァイン王国から伝書鳩が付きまして……」


国王は懐から手紙を取り出した。


トリヴァインからの伝書鳩?


嫌な予感しかしないわ。


「あの国で何が起ころうと……僕たちにはもう関係ないよ」


クヴェルの表情は冷たく、声も普段より低かった。


クヴェルは手紙の内容に心当たりがあるの?


「陛下、手紙には何が書かれていたんですか?」


「アデリナ。

 君が気に掛ける必要はないよ」


クヴェルが止める気持もわかる。


でも、トリヴァインは私の生まれ育った国だし……。


「ごめんね、クヴェル。

 あなたが私の事を心配してくれるのはわかるよ。

 でも、気になるの」


聞かなかったら後悔すると思う。


「陛下、話してください。

 手紙にはなんと書かれていたのですか?」


「アデリナ殿、あなたならそう言うと思っていました。

 手紙の送り主はトリヴァイン王国の国王、ヨアヒム・トリヴァイン殿です」


トリヴァインの国王が、他国宛に伝書鳩を飛ばすなんてよっぽどのことがあったんだわ。


普通なら使者を立てるはずだもの。


「トリヴァインの国王陛下はなんと言ってきたのですか?」


「トリヴァインの国王からの用件は二つ。

 一つ目は、第十五代国王の時に持ち出した水竜に関する文献を返すこと。

 それから二つ目……こちらが重要です」


リスベルンの国王は手紙から目を離し、一呼吸ついた。


「アデリナという名の少女と、青い髪の少年が現れたら、二人の身柄を保護し、トリヴァイン王国に送り返すように。

 そう記されておりました」


ドクン……! と心臓が嫌な音を立てた。


トリヴァインの国王が私とクヴェルを探してる?


ううん、探してるだけじゃなく国に連れ戻そうとしてる?


婚約破棄して、勘当して、国外追放を命じたのはそっちじゃない!


今更私になんの用があるの?




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