39話「人助け」
37話〜47話を改稿しました。
改稿した部分
・テオドリック王太子の性格
・40話〜43話シリアス展開に変更
・最終話、子供のクヴェルから大人のクヴェルに変更
ミドガルズオルムの住処から王都に戻る途中、リスベルンの王太子と兵士を乗せたカヌーと再び遭遇した。
空気と水を浄化し、食料も分け与えた結果か、彼らは午前中に会った時より元気そうに見えた。
「クヴェル、リスベルンの王太子と兵士達がいるよ」
「そうだね」
クヴェルは彼らにあまり興味がないらしく、そっけない返事が返ってきた。
「リスベルンの王様から、王太子を助けるように依頼されていたよね??」
「そうだっけ?」
クヴェルたら忘れてるのかしら? それとも忘れた振りをしてるの?
「食料も水も分け与えたし、湿原の空気も水も浄化されたし、ほっといても自力で帰れるんじゃない?」
クヴェルは庶民には優しいが、王族や兵士には冷たいところがある。
ここからカヌーで帰るとなると、三日から一週間ほどかかるのではないだろうか?
国王も兵士の家族も、彼らが無事に帰還するのを一日千秋の思いで待っていることだろう。
「帰り道は一緒だし、彼らの船を引っ張って行けないかな?」
クヴェルは私のお願いに弱い。口ではあれこれと冷たい事を言うが根はお節介だ。ダメ元でお願いしてみよう。
「はぁ……アデリナは本当に人がいいね」
クヴェルが折れてくれた。
クヴェルはカヌーに向かってゆっくりと降下していく。ステルスの魔法を使っているので私達の姿は彼らには見えない。
行くときは霧で太陽が隠れてた。ミドガルズオルムを浄化したので霧が晴れ、太陽の光が降り注いでいる。
クヴェルの影が湿原に大きな影を作っている。姿が見えなくても勘の良い人間には、誰が助けたのかわかってしまうかもしれない。
クヴェルは竜神としてリスベルンに協力する気はないので、まずいかもしれない。
しかし、彼らが見たのはあくまでクヴェルの影だ。いくらでも言い訳できる。
私はカヌーに向かってロープを下ろした。ロープでカヌーとカヌーを固定して、纏めて引っ張っていく作戦だ。
片方の端をカヌーに結び、反対の端をクヴェルのしっぽにくくりつけた。
全ての準備が終わるとクヴェルは川沿いにゆっくりと飛び始めた。
行きは猛スピードで、真っ直ぐに飛んできた。
帰りはくねくねと曲がる川の上を、カヌーを引きながら進んでいる。
クヴェルの飛ぶスピードは行きの半分くらいだ。
西の空に日が沈みかけてきた。このペースだとリスベルンの王都に着く頃には夜になっているだろう。
しょうがないよね。王太子と兵士を置いて帰るわけにもいかないし。
クヴェルには無理を言ってしまったので、後でお礼をしないとね。
早く王宮に帰って、ふかふかのベッドで休みたい。
◇◇◇◇◇◇◇
リスベルン王国、王宮、夜九時。
リスベルン王都近くまで来たので、カヌーを繋いでいたロープを外した。
リスベルンの王太子が、こっちをじっと見ている気がしたけど……。
竜が珍しかったのかしら?
ここまで来たら王都は目と鼻の先だ。自力で帰れるだろう。
彼らを川に残し、私達は一足先に王宮に帰った。
クヴェルは屋上に降り立つと、人間の姿に戻った。
今日一日でいろんなことがあったのでクヴェルも疲れてるみたい。
国王にミドガルズオルムを浄化したことと、王太子と兵士を王都の近くまで運んだ事を告げ、休むことにした。
詳しいことは明日伝えればいいよね。
国王は安堵の表情を浮かべ、王太子を迎えに行くように兵士に命じていた。
明日は王太子の帰還とミドガルズオルムを浄化したお祝いの宴が開かれるそうだ。
クヴェルにライニゲンダー・シャワーの魔法をかけてもらい、天蓋付きのベッドに潜り込む。
大人の姿に戻ったクヴェルと口付けを交わし、クヴェルの温もりを感じながら眠った。
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