第24話 バレた
辛うじて、室内のナノマシンを制御して盾を形成。ただし、全ては防ぎきれなかった。オレとフィオナ。そしてリアムとカレン。つまり、守れたのは人間だけだ。
「雑魚は任せたよ!」
外から鋭い女の声。それにいかにも山賊でございますってな感じの男たちが従っている。つまり、こいつがリーダーに違いない。
そんなことはもちろん、リアムもカレンも理解している。
だが、そのリーダーを倒そうにもその余裕はどこにもない。群がる山賊もどきに対応するだけで精一杯だ。
そして、オレとフィオナはというと女首領に真っ向から対峙する羽目になっていた。
「へえ。アンタが噂のお姫様かい」
「…………そう。だから、あの2人は関係無い」
スチャっと杖を構える。
フィオナもそういえば、魔法を使えるんだよな。戦闘用のヤツ。
ここのところ、ノンビリしてたというか荒事が無かったのですっかり忘れてたけど。
「どれ。お手並み拝見っていこうかね」
「…………えい」
例によって、気合いの抜けた声とは裏腹にいくつもの火球がフィオナの周囲に浮かび上がる。幸いにというべきか、この建物は完全に土で出来上がっているので延焼の心配だけは無い。
「はっ。なかなかやるじゃないか」
1つでも当たれば致命傷の炎を見ても女はまるで動じなかった。それどころか余裕のある笑みさえ浮かべている。
「くっそ……テメエら退きやがれ!」
「領主様! 逃げ……っ!」
リアムとカレンが隣室に追い込まれていくのを横目で眺めながら、フィオナがぎゅっと唇を噛みしめる。
賊どもにやられるような2人じゃないが、とにかく数で押し込まれ防戦一方のままではさすがに分が悪い。ジワジワと後退を余儀なくされ、フィオナの寝室の隣の部屋へと追い込まれていく。
……マズイ。このまま、2人が部屋に押し込まれてしまえば袋のネズミだ。あとは1つしか無い扉を少数で固められれば実質的に閉じ込められてしまう。
余った賊は必然的にこっちに来るわけだから、さらに分が悪くなる。
わかっちゃいるけど、防ぐ手立てが無い。
嫌らしいな!
状況を打開すべく、オレは室内のナノマシンを操作。まずはフィオナの炎弾を模倣する。これは以前にやったことがあるから、すぐに出来た。
だが……
「へえ……」
と女が鋭い目つきでオレを見つめる。
……まさか。
「まさか、ネコだったとはね。そりゃあ、誰も気がつかないわけだ。アンタが精霊使いかい」
バレてる? な、なんで?
「なら、ちょいとご挨拶しないとね」
女の声に従って、オレの制御下に無いナノマシンがオレの作り出した炎弾に纏わり付く。何を? と思う間もなく、オレが制御しているはずのナノマシンからの通信が途絶。
え? と思う間もなく、炎弾が消え失せてしまった。
(やられた……!)
危惧していたように、女はオレと同じナノマシン使いだった。
だけど、こっちもやられっぱなしじゃない。通信が途絶する直前のナノマシンから得た情報を完全制御下にあるナノマシンに解析させる。
そして、わかったこと。
それはこの女のご先祖様……おそらく数万年っていう単位だが、とにかくその1人がナノマシンの開発者の1人だったらしい。
もちろん、そのご先祖様はとっくに鬼籍に入っているわけだけど……おそらくオレやシーワンには理解出来ない魔法とやらで自分をそのご先祖様と偽っている。
だから、限定的な権限でもってオレの制御しているナノマシンに指示を与えることが出来る。
ただし、管理者権限はこっちが上だ。それなのに操作を許してしまっているのは……オレのミスだった。
そもそもオレ以外にはナノマシンなんて扱えないと思い込んでいたので、セキュリティ対策なんかなんにもしてない。
ザルどころかワクだ。
そこを突かれた。
さらに女はごく少量だけど……完全に制御出来るナノマシンも持っているみたいだ。カスタマイズってヤツだな。
これに関してはオレは一切の権限がないので、何も情報がわからない。ただ、おそらくオレと似たようなことが出来るだろうというだけだ。
整理しよう。
1 女は限定的なナノマシンの操作権限を持つユーザーに偽装している
2 それでも権限はオレの方が上
3 ただし、ユーザー設定をサボっていたので操作を許している
4 が、女はナノマシンの制御の仕方がわからない
5 それとは別に完全に制御出来るナノマシンも持っている。ただし少量。
よって、オレがするべきは
1 周囲のナノマシンのセキュリティ対策を実施
2 その後、掌握したナノマシンで女のナノマシンを制圧
3 対抗手段を奪ったところで捕獲
だ。
よっしっとオレが気合いを入れたところで、フィオナが炎弾を女に向けて放つ。女はナノマシンを制御して炎を中和しようと試みるが……魔力によって生成された炎を打ち消すのは結構難しいんだよね。
炎弾の原理を理解していないと無理だ。
それをすぐに悟ったのか、女は炎の動きを止める方向へと舵を切った。ナノマシンで砂を操作してそれを壁にする。砂は溶けはするが燃えはしないので、物理的なシールドとしての効果はある。
赤熱しガラス状に融解した盾が女とフィオナの間に立ちはだかる。
ジリジリとした力押しだ。女にしてもナノマシンを炎に近づけすぎると、灼けてしまうからね。
その隙にオレは室内のナノマシンのセキュリティ対策に乗り出した。といっても単に実行権限を正規のものにするだけだ。懐かしのPCならワンコマンド。
の予定だったが……数が多すぎた。やることは単純なのに、脳味噌の処理が追いつかない!
(…………痛っううううう!!!)
灼けるような痛みに思わずのたうちまわる。
「タ、タスク!?」
(だ、大丈夫。ちょっと負荷が大きかっただけ!)
くっそ。ネコの脳味噌というかネコボディのナノマシン味噌じゃ容量が足りないんだ! 普段は制御しているナノマシンの量が欲しかったから、ネコが向いていたけど、今は単純作業を並列で行える制御系の余裕が要る!
扱えるナノマシンの数は減るけど、それでも数十グラムはある。あの女の完全制御下のナノマシンよりもずっと多い。
みた感じ、せいぜい数gっぽいからね。
ただ……ネコじゃないのがみんなにバレるな。
……そんなこと言ってる場合じゃ無いか!
オレは意を決して、フィオナが時間を稼いでいる今のうちにネコから人へと戻ることを決意した。
ついに刺客と全面対決。
タスクもちょっと覚悟を決めます。
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PS 時間が空いてしまいもうしわけございませんでした。




