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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
93/135

91.

「……この、青二才どもが!なぜわからない?!聖女という存在の素晴らしさ!諸外国からも一目置かれる存在!!彼女さえいれば…!」

と立ち上がり熱弁を奮う神殿長だが

「──貴方は何か勘違いしておられるようだ。」

とヴィンセントの声が響く。

「貴方は誰から何を聞いたのかは知らないが、我が国の聖女の力は決して万能の力などではない。…祈れば草木が生え、天候を操り、死者が蘇る…()()()()()()()()()。」

「し、しかしっ…まだ判明していない力があるかもしれない…!」

「なかなか往生際が悪いですね。無いものは無い。…それは()()()()()()()で判明している。」

「なっ……」

「"聖遺物"のような物…が『神殿だけ』にあるとは思わないことです。」王家にもあるんですよ、とヴィンセント。

神殿長は「そんな…」と椅子に座り込む。

「…今日はお引き取りください。またいずれ、神殿側とは()()()()()話し合いましょう。」

とヴィンセントが退出を促せば神殿長が立つのをミアが手伝い、軽く会釈をし2人でゆっくりと扉へと近付く。

「……ああ、ミア嬢にはあとでこちらから遣いを出しますから従ってください。」学園寮に部屋を用意させます、と彼が声かけているがミアがわずかに頷いただけであとは黙って出ていってしまった。


「「………」」

しばらく2人で呆然と立ち上がったまま扉を見ていたのだが私は急に怖くなりふるふると震えだした。

それにヴィンセントが気付き「…大丈夫か?」と抱きしめ背中を擦ってくれる。


「……わ、れながら…無茶苦茶したわ…」と口から零れる。

「フフッ……でも、格好良かったな。」

「格好いい…ふふふ……惚れ直した?」

といたずらっぽく聞けば

「…そうだな。……でもまさかあんな嘘をつくとは。」

悪い子だ、と笑いながら額にキスをされる。

「…『嘘も方便』て言葉があるのよ。」「…ホウベン?」

「んー…嘘も使い方によっては役に立つ、って感じかしら。」

なるほど、と話しながら私たちも部屋をあとにする。


「ああ…そろそろ侯爵家に向かわなくては。」

「…そっか。」と少し寂しくなる。

「……もうこっちで暮らすか?」「いや、それはない。」

と即答すればがっくりと項垂れるヴィンセント。

…さすがにそこまでの心構えがまだないし、暮らしたらナニをされるか…わからないから、ね……

とりあえず帽子とぬいぐるみと昨日の服を取りにあてがわれた部屋に向かう。


部屋に入ると洋服がきちんと洗濯され置いてあった。

取りに近付こうとしたら一緒に入室していたヴィンセントに後ろから抱きしめられた。

「……ヴィニー…」

「……今まで、どうやって我慢していたのかまったくわからない…」

と私の肩に頭を載せている。

「別に"今生の別れ"じゃないんだから……それに、」


「──私だって、すごく寂しい…」


ぐるりと身体を反転させられキスされるのかと思えば、一瞬間がありぎゅうっと強く抱きしめられた。

「──我慢、しないとな。」

「…ふふふふふ……偉い偉い。」

「…もう、俺が侯爵家に住むか。」

「……さすがにもう、ダメなんじゃ?」

「……さすがにもう、ダメか。」

くすくすと2人で笑い合うこの瞬間が、たまらなく幸せを感じる。



侯爵家へ向かう馬車の中で『これから』を話し合う。

「─明日、発表になるが…夏休みが明けても学園へは行くのだな?」

「もちろん。ちゃんと卒業するわ。」

「先程、ミア嬢が無事寮に着いたと連絡があった。」

「…良かった。ありがとうヴィニー!」

「その、指輪は外さないで欲しいんだが…」

「うーん……学園の間は首飾りにしてはダメ?…ちょっと、恥ずかしい…」

「…まあ、肌身から離さないなら…」

「ん。…そういえばヴィニーにはないね?」

「……あー…えっと……実は──」

とそっと懐中時計を取り出すとチェーン部分に指輪が通してあった。

デザインは一緒だが…嵌っている石が、違う?

「……赤い、魔石…?」

「……マリアの瞳は"珊瑚色"だから…」

「えへへ……ね、貸して?着けてあげる。」

と言うとチェーンから外して渡してくれる。

ついでにまじまじと差し出された左手を見ると、やはり男性なので私より大きくてしっかりとした手だ。

「……まだ"婚約"なのに結婚指輪みたい。」

「まあ…この婚約はもう、誰にも覆せないからな。」

そして私もヴィンセントが()()してくれたように、左手にキスをしそっと薬指に指輪を嵌めてやる。

「…っ まったく…このお嬢様は本当に…どれだけ俺を魅了したら気が済むんだ?」

と眉尻を下げるヴィンセントをニヤッと上目遣いで見上げどちらともなく深く、深く唇を重ねる。


それから侯爵家に着くまでただ2人、腕を絡め指を絡め、黙って寄り添い馬車に揺られるだけだった。



屋敷に着くと知らせがいっていたのであろう、クローヴィス家のみんなとシャロンとトラビスが待っていてくれた。

ヴィンセントのエスコートで馬車を降り少し恥ずかしく思いながらも

「…ただいま戻りました。」

と告げる。

「…おかえり」「おかえりなさい、マリアちゃん」

とお父様、お母様が抱きしめてくれた。

「とにかく、全員談話室へ」とお父様に促され移動する。


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