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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
8/135

8. 回想する話。

最後の方、痛い表現があります。


「マリアちゃんの考えてくれたスープ、本当に美味しかったわ。」


運ばれてきた昼食をゆっくり食べながらサラが口を開く。

「良かった!料理長と頑張ったかいがあるわ。」

「あのスープだと…コルネル伯爵家にいる私のお祖母様も口に出来そう。」

コルネル伯爵家とはサラの実家。お祖母様も一緒に暮らしてるのね。

「今度詳しく教えてくれる?」

「もちろん!というか領地会報紙でみんなにも教えようと思ってたとこ。」

有益な情報は文字にして領地のみんなにも教える。新聞もあるけど読むのにお金がかかるし内容は国全体のことだ。

口コミだと伝言ゲームになっちゃって内容が変わってしまうから、私が初等学校に上がる頃お父様に会報紙の案を出した。

識字率が高いこともあり無料で配布される会報紙はすぐに受け入れられ喜ばれた。

それに、紙が高級品というのが割と定番な気がするんだけど、この国では質は悪いけど安価な紙も普通に流通しているから無料配布でも特に痛手にならない。

印刷も活版印刷技術があり、シャロンの家が印刷所を持っていたから広告を会報紙に載せる代わりに安くしてもらった。

ちなみにすぐあちらでも会報紙を真似していた。街を治めているわけではないから商会報紙になっていたが。


あ、そうだ。義姉様(おねえさま)ならなんか覚えてるかな…?

ふと昨晩のことを思い出す。


「ねぇ義姉様。話は変わるのだけど、私が10歳くらいの頃私に関することで何かなかったか、覚えてることない?」

「10歳…… わざわざ聞いてくるってことは、"あの事件"ではないのよね?」

「そう、"あれ"じゃなくて別のこと。」

うーん…と顎に人差し指を当てて考えるサラ。

「マリアちゃんが10歳と言えば、私とウィルが婚約式をやったわね。」

うんうんと首を縦に振る。私10歳、サラたち2人が15歳の時だ。

「婚約式、義姉様すっごい綺麗だったな〜。あっもちろん結婚式のほうがもっともっと綺麗だったけど!」

「うふふ、ありがとう。 …あ、そういえば婚約式のあと"あれ"の前に『婚約式ごっこをしたの!』って嬉しそうにお話ししてたわ。確か」

「婚約式、ごっこ……?」 …記憶にない…というか誰とやったの?

「ええ。あの日は…義母様(おかあさま)と2人で王妃様のお茶会に行っていたと思うわ。その日の夕食のときに楽しそうだったの覚えてる。」

「………10歳頃の記憶、"あれ"に大半占められてて他の記憶が曖昧なのよね。」ムムムムム、と眉間にシワを寄せて考えるも…出てこない。


──"あれ" 

街で私とウィルフレッド・サラの3人が暴漢に遭った事件だ。


2人の婚約式を控えたある日、私たち3人は街に遊びに出掛けた。

理由は私が直接2人にお祝いをあげたかったから。

悩みに悩んで発注した品を届けられるのが待ちきれなくて取りに行こうと2人を誘ったのだ。

店舗兼工房は大通りからほんの少し入った道にあったのが悪かったのか…それは今でもわからない。


早く早く!と2人の手を引く私に苦笑しながらも付いてきてくれるウィルフレッドとサラ。

「ここの工房ね、すっごく腕が良いの!」と振り返りながら話す私。

「こら。ちゃんと前を見て歩け!」「そうよ、危ないわよ。」と嗜められるも、

「えへへ… 大丈、ぶっ」と、ぼすんと結局人にぶつかってしまった。

「ほら!言ったそばからこれだ。 申し訳ありません!妹が失礼を。」頭を下げるウィルフレッドに「申し訳ありません!お怪我などありませんか?」とサラも謝っている。

「ご、ごめんなさい…!」私も腰を90度くらいに曲げ謝る。

…が、目の前の人物は黙ったままだ。

ちらっと見上げるとどこを見ているのか焦点の合わない眼、なにかブツブツと呟いているのか口が少し動いている薄汚れた男性。

「あの……」

声をかけようとしたや否や手を強く引かれる。

え?っと思うとサラに庇われるように抱き締められていた。

肩越しに男が何かを振り下ろすのが見える。


「キャァァァァ!!」大通り側から女性の叫び声がする。

「サラっ!!! 貴様ッ何をするッ!!」お兄様がひどく怒っている。

サラの身体が重たい。息遣いが荒い。私にのしかかって──。


どうしたの? ──なんで、義姉様の背中が真っ赤なの?


サラを抱きかかえたままずるりと地面にへたり込む。

──見ると、肩から腰にかけてバッサリと斜めに斬られたあと。


男が刃物で斬りかかってきたのだ──。


「…おねっ…おねえ、さま…? おねえさまおねえさまおねえさま!!!」血が、止まらない。

「マ…マリ、アちゃん……怪我、はない…?」にこりと引きつった笑顔を浮かべている。

「わ、わたしは大丈夫…でも義姉様が……っ サラ義姉様…!!」

「サラっ サラ!!! っ誰か!医者をっ…サラを助けてくれ…っ」

ウィルフレッドの悲痛な叫びが聞こえる。


わた…っ わたしのせい、で……!!


「私がっ 助けるのっ」

私の命と引き換えにしてもいいから何か…!!


──瞬間、頭に浮かぶもの。

必死にそれを引き寄せる、と同時に発動させる。


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