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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
79/135

77. 夏祭りの話。 ②

「最初はどこに行こう?」

「そうだな…早めに昼食がいいと思う。」

「今日は出店の食べ物がいいわ!種類もたくさんだし!」

「そうしよう。…マリアは何が食べたい?」


今日は手を繋ぎ道を歩く。

いつも以上に人がいて歩くのが大変だが、アシュクロフが先導してくれる。

歩いていくと食べ物の出店が並ぶ広場に出る。

あちこちから美味しい匂いと呼び込む声が聞こえる。


「うわぁたくさんあって、目移りしちゃう…」

出店の食べ物ってどうしてあんなに美味しそうに見えるのか…

そんな私の様子を見るアシュクロフの顔は穏やかな笑顔を浮かべている。

「アシュは食べたい物ないの?」

「俺か?…マリアが食べたい物かな」

「もー、それじゃ決まらないじゃない…」

と笑いながら出店を眺めていくのが、たまらなく幸せだ。


3周くらい回ってフィッシュ&チップスとクレープ、それと飲み物は私はジュースにしたがアシュクロフはクラフトビールにしたようだ。


広場から少し離れたところに椅子とテーブルが並んでいる場所が用意されているのでそこへ行くともうだいぶ人で埋まっていた。

端のベンチが空いていたので急いで座る。

「まだ空いててよかったわ!」

「そうだな。…こぼさないようにな?」

「う、ん…」と注意しながらベンチの端にジュースを一旦置いてクレープを頬張る。

クレープはおかず系ではなくフルーツとクリームたっぷりの甘いのにした。

「ん〜、果物が美味しい〜」

アシュクロフが眩しそうに見つめてくるので

「アシュも食べる?」とクレープを差し出すが

「…いや、いい。」

と私の口の端に付いてしまっていたクリームを指で拭いそれをぺろりと舐めた。

わー、マンガみたい!なんて心の中で独りごちてなんとか平静を装った。

「…マリア、少し痩せたみたいだからよく食べろ。」

「……大丈夫よ。…ちゃんと、食べてるわ。」

……なんでわかるんだろう?彼は私の変化にいつも気付く。

でもあれから、ちゃんと気を付けて食べるようにしていて、お母様からもだいぶ戻ったわねと言われているのだけど…


アシュクロフがいない間に学園であったことを話しながら食事を済ませる。

彼は相槌をうったり、心配したりしながらも話しを聞いてくれた。

…だけど、私がセリスからナニカを受けたことは話せなかった。


次は物の売ってある出店やくじ引き、射的などの遊戯の出店の並ぶ通りに来た。

─そこでアシュクロフの意外な特技が判明する。


「兄ちゃんすげーなー!初めて見たぞ、いきなりど真ん中とか!」

と店のおじさんがガハハと笑っているが

「…まぐれですよ。」とアシュクロフは頬をかいている。


射的、と言っても銃ではなく弓矢だ。小さい、子供でも引ける弓。

日本の祭りの射的と違って弓矢なのでそれなりに距離がある。年齢で距離は変わるらしい。

アシュクロフは大人なので一番遠い距離だったのだが……


「残り2本はどうする?」とおじさんが聞いている。

だが騒ぎを聞きつけギャラリーが増えてきたのをアシュクロフは嫌がったようで

「マリア、もういいか?」と困り顔だ。

「そうね。」と私も注目されるのは嫌だったのでいきましょう、と促す。

「おやじさん、残りはこの子に」と近くの子供に残りを渡し、いいのかい?と驚き顔のおじさんに首肯しながら1等の賞品を貰い、その場をあとにした。


「アシュが弓が得意だったなんて知らなかった!」

と1等のくまのぬいぐるみを抱きながら彼に寄り添う。

「…得意、というか……まぐれだよまぐれ………」

「まぐれであっても、すごいはすごいなのよ。」

と顔を見上げると恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうだ。

「…ぬいぐるみ、邪魔じゃないか?」

「大丈夫…」と言いつつも確かに、少し大きい。

1等なだけあって40cmくらいはあるのだ。

すると「持つよ。」と持っていかれてしまった。

「……ふふふ…案外似合っているわ。というか色が一緒ね!」

「あー……確かに橙色だ、な…」

「じゃあ、その子の名前は"アシュクロフ"ね。」

「は?!」

人混みから抜け休憩も兼ねて少し脇道に入り立ち止まり

「そして、誕生日は今日。」

と言いながら襟元のリボンをぬいぐるみに結んでやる。

一連の行動にアシュクロフは困惑顔だ。

「…ぬいぐるみってね、名前を付けてリボンを結んだ日が誕生日になるのよ。」

彼は目を瞬いている。

「それに、貴方が、私にくれたぬいぐるみ。…大事にするわ。」

とぬいぐるみにキスをしてやる。

「……落とさないでね?」「…落とすもんか」

アシュクロフにぬいぐるみを託し、また人混みに戻っていく。


それからはアクセサリーを眺めたり、赤ちゃん用のおもちゃがあったからサラにあげようとそれを買ったり、チュロスがあったから2人で分けて食べたり…と祭りを楽しんだ。


夕方が近くなりますます人が増えてきた。

「す、ごい人ね…」「ああ…スリに注意しろ。…あともうちょっとこっちに…」

とアシュクロフが引き寄せようとしたのだが前から人が割り込んできて手を離さざるをえなかった。


──だが、それがいけなかった。


祭りの出店や屋台のご飯はなぜ、ああも食欲を刺激するのでしょうか…

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