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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
73/135

71. 2人の距離の話。 その②

「…ちなみにあの迷路はもうなくなった。」

「え。」

「というか、潰した。……君が、マリアが迷子になったから。」

「…防犯上の理由があったのでは?」

「結界があるし、まともに機能したこともなかったからな…」

ちょっと勿体ない気もするが、王家は意外と質素倹約らしく維持費が馬鹿にならないというのも潰した理由だそうだ。

「……少し、見てみたかったです。」

「…また迷子になるんじゃないか?」

「ひどい。」

とヴィンセントはにやにやしているが私はムッとした顔になる。


「ごめん。そんなに怒らないでくれ。」

廊下でのこともあったのでプイと顔を背ける。

「…参ったな。……どうすればいい?」

「……それ本人に聞くんですか?」

「また機嫌を損ねるよりはよっぽどいいと思うんだが?」

「…まあ、そうですね。」

とちらりとヴィンセントを見るとすごくしょんぼりとした顔をしていた。

「ふふふ…ヴィニー様、情けない顔……」とつい笑ってしまった。

不敬かとも思ったが

「…マリアにはどんな顔を見られても平気だ。」

情けないところも散々見られてるしな、と眉尻を下げながらも笑顔だ。


「…許してくれるか?」

「…しょうがないですね。」

ありがとう、と言うヴィンセントと2人でくすくす笑いあった。


少し、うとうとしてきたのが自分でもわかる。

「……次起きたら、頃合いをみて君を屋敷まで送る。」

「……わかりました…ヴィニー様、ありがとうございます…」

「気にするな。……おやすみ、マリア。」

「…おやすみ、なさい……」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


すうすうと穏やかな寝息が聞こえ始める。

「……悪夢など見なければいいが…」


あの『(おぞま)しい力』を一身に受け、昏睡したが目を覚ましてくれた。

昏睡している間の話しをしてくれたが次は悪夢を見るかもしれない。

まあ、うなされたところで俺がいるから大丈夫だが。

…今俺が出来るのはこれくらいか、と眠るマリアの額に口付けをする。

『悪夢を見ませんように』とまじないの意味も籠めて。


完全に寝入ったのを見計らい席を立ち、入口にいる騎士団長のもとへと向かう。

「─ヴィンセント殿下。」

「ご苦労、私もこれから休む。」

「はっ」

「…特に異常はないか?」

「ええ、大丈夫です。おやすみなさいませ。」

「ありがとう、おやすみ。」


中に戻りマリアの様子をちらりと見て、よく眠っているようなので自分も間仕切りの向こうの寝台へと潜り込み、今日のことを思い浮かべる。


──『アンタはアカンやろう』…か。


…一体、マリアは()()なのか。

俺の知らない知識や、他人の魔力を感じられる程の魔法適性……

だがそれらに気付いてもなお、彼女にますます惹かれる自分がいる。

子供の頃に見た()()()()から俺は彼女に魅了され続けているのだ。

「……だけど、まさか"おばけ"が苦手だとは、知らなかったな。」

ふふっと笑いがもれるがいけない、と気を引き締める。…嫌われたくないからな。

今日は守られてしまったがこれからは俺が守る。…おばけだろうとなんだろうと、全てから守るから…そう、誓ったのだから。


「──果たして()()に勝てるだろうか…?」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ありがとうございました。殿下。」

「いや、構わない。むしろ私に任せてくれて、ありがとう。」

「とんでもございません。(わたくし)では…たぶん無理でしたわ。」


──人の、話し声…シャロンとヴィンセント…?

なん、で………あぁ、私、昨日……


そっとカーテンの隙間から覗くシャロンと目が合う。

「…マリア、起きましたの?」

「う、ん…おはようシャロン……」

ともそもそと起き上がる。

「おはよう、マリア。ですがもう昼ですわ。」

「えっ?!うそっ」

「…よく、寝ていたようですわね。」

と自身のポケットから櫛を取り出し髪を梳いてくれるシャロン。

「あ…ありがとう。」

「いいのよ。…(わたくし)は、何もできなかったから。」と少し辛そうだ。

「シャロン……」「本当に、本当によかった………」

シャロンからぎゅうっと抱きしめられるので私も抱きしめ返す。

「ごめんね…」「…いいのよ。わかっていたから。」

…どういうことだろうか?

「マリアは、ああいう時勝手に体が動くのなんて昔から知っていますわ。」

「…そ、う?」

「ええ。ですが、あまり心配かけすぎないで?」

「ごめんなさい…」

「…もう昼休みが終わってしまうから、詳しいことはまた今度。」

「うん。ごめんね、ありがとう。」とシャロンとまた抱き合う。


「──マリア、貴女の周りはみな(わたくし)を含め、貴女を愛する人たちばかりだから、それだけは決して忘れないで。」


とシャロンは私の瞳を見つめながら少し強めに言い、保健室を去っていった。

──この言葉の真意を知ったのは、少しあとだ。


シャロンと入れ替わるようにヴィンセントが入ってくる。

「馬車の用意ができたようだから屋敷へ送ろう。」

「はい。ありがとうございます。荷物を取りに行っても?」

「もちろんだ。…付いていくよ。」


更衣室へ荷物を取りに行き、帰り際学園長先生によくよくお礼と挨拶をし、エリ先生は授業中だったのでよろしくお伝えくださいと頼み、早退させてもらった。


保健室のベッドに寝た記憶は…何度かあります。

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