65.
「…時間が貰えるならそれで。」
とニコラスも驚きつつ了承している。
「ところでニコラス貴方…あまりおいたが過ぎると、わかってるわよね?」
「………一体なんのことです?」
「……まあ、今はそこまでではないようだから見逃してあげるけど。」
「………っ」
2人はなんの話をしているのだろうか?ニコラスがすごく悔しそうな顔をしている。
「ニコラス…?アンジェリカ先輩も一体…」
「マリアちゃんは気にしなくていいわ。ニコラスの、問題だから。」
と彼女から見つめられているがニコラスは黙ったままだ。そんな彼を余所に
「じゃあマリアちゃん、明日から生徒会に参加してくれる?」
とアンジェリカから声をかけられ私はわかりました、と頷くしかできなかった。
「…ニコラス?」
アンジェリカが立ち去ったほうを見ながら黙ったままのニコラス。
「…アンジェリカ先輩と仲いいの?」
「……っ …ただの、"腐れ縁"だよ。」
私の質問でようやく意識をこちらに向ける。
「"幼馴染"とかじゃないんだ?」
「ハハッ…小さい頃から無茶振りされた記憶しかない!」
とものすごい嫌悪感を露わにする彼に少したじろぐ。
「そ、そうなの?」「……もうやめよう。せっかくの楽しい時間なんだから。」
…よほど嫌だったのか強めの口調でこの話題は遮られた。
「なんかごめん…」「いや、いいよ…僕の方こそごめん。」
しばらく無言が続いたのだが
「…マリア、僕から手紙を出しても構わない?」
「えっと…」
…正直、学園で話すだけなら構わないが手紙まで、となるとそこまで相手はしたくなかった。
「……生徒会が始まるし、返事するのが遅くなるかもしれないから…」
とやんわりと断ったつもりだったのだが
「気にしないよ。…いつまでも待つから。」
だから出すね、と一方的に決められてしまった。
「マリア、今日は少し早く帰りますわよ。」
とシャロンから急に声をかけられ少し驚いてしまった。
「わ、びっくりした。わかったわ。…じゃあニコラスまたね」
「…うん。またね」
馬車へ乗り込みながらシャロンへどうしたのかと聞けば
「用事を思い出しましたのよ。」
とその日はいつもより早く帰宅した。
帰宅するとアシュクロフが出かけようとしているところだった。
「あれ、アシュ今から出かけるの?」
「っ、お嬢…おかえりなさいませ。」
とびくりと身体を震わせかなり驚いた様子の彼。
…そんなに驚かなくてもいいと思うのだけど?
「ただいま。気を付けて行ってきてね?」
「えっ…あ、はい…いってまいります。」
私が突っ込んだ話をすると思っていたのかおっかなびっくり出かけていった。
それからいつも私が帰宅する時間直前くらいにアシュクロフは戻ってきた。
「おかえりなさい」
「お嬢。…ただいま戻りました。」
と少し嬉しそうに言う彼が可愛らしい。
いつもは私が『ただいま』を言う側だからか私も少し不思議な感じだ。
「今日は早かったのですね?」
「ああ、シャロンが用事があるとか言ってたわ。」
なるほど、とアシュクロフは納得している。
「あ、そうだ。私ね生徒会に入ったの。」
「おや、そうなんですか。なにか役員とかに?」
「アンジェリカ先輩が言うには私は書記らしいんだけど明日からだから仕事内容とかはまだ知らないわ。」
「…まあ、お嬢なら大丈夫でしょうが…落書きとかしちゃダメですよ?」
「なんでそうなるのよ…」
「シャロン様たちは?」
「もちろんシャロンとトラビス君も一緒よ!」
「……ちなみにイルミネ伯爵令息は?」
「あ!それなんだけどね、アンジェリカ先輩が『30分くらいなら』って時間をくれたのよ。」
「……というか結局続いてるし、しかも満更でもないお嬢の様子に驚きなんですが?」
と少し不機嫌になるアシュクロフ。
そうだった!彼にはまだ話していなかった。
「それなんだけどね、実は魔法の話しがすごい有益な話しばかりでね、学園で話すくらいならいいかなって。」
「…へぇ?」とさらに不機嫌になるアシュクロフ。
「……ダメ、だった?」
「どうして?」
「なんか、機嫌悪くなってるから…」
「え。」
とアシュクロフは自分でも気付いていなかったのかパッと口元を手で押さえ驚いているが
「すいません…何でもないです…」と顔を背けられた。
「そ、う…?」…彼がそう言うのだからそれ以上は何も言えない。
「あの、生徒会頑張ってください。」
「…ありがとう。書記だけどね。」
「お嬢、字が綺麗だから喜ばれますよ。」
そうかなーえへへ、となんだか嬉しくなる。
字が綺麗って言われるのは地味に嬉しい。こちらの文字は少し難しいから尚更だ。
アシュクロフの機嫌も直り穏やかに笑っているのが小さな幸せを感じる。
そんなこんなで翌日から生徒会の仕事が私の学園生活に追加された。
前世の高校生活より充実しているのではないだろうか?
私はいわゆる"大学デビュー"てやつで高校生までは陰キャで、帰宅部でオタク友達とおしゃべりしながらもさっさと帰り、家でゲームしているのがデフォルトだった。
…あの日々はあの日々でとても楽しかったけどね。
「──こんな感じだけど、わかったかしら?」
……いけないいけない。今はアンジェリカから生徒会の説明を受けているところだった。
「わかりました。」「わかりましたわ。」「大丈夫です。」
と3人それぞれ返事をする。
シャロンは副会長になるのでアンジェリカから引き継ぎを受け、私とトラビスは書類の整理から。
こうして生徒会の仕事を少しづつ覚えていった。




