61. 2回目のお茶会の話。
今回は前回と違ってよく晴れた良い日になった。
気温もほどほどにあるので着るものは黄緑色でチェック柄の襟付きの長袖ワンピースを選んだ。
髪型はみつ編みにして…と──
「本日もお招きありがとうございます。」
今日はセリスはいなかったがヴィンセントの手が空かなかったとかで以前も会った従者に連れてこられた。
「やあ、すまないな迎えに行けなくて。」
「いえ、お気になさらないで下さい。」
「さっそくなんだが…実は今日は客人がいて……」
先に伝えられなくて申し訳ない、とヴィンセントは眉尻を下げている。
「お客様、ですか…?」…一体、誰だろう?
「うん、学園で時間が取れなかったとかで…ねじ込まれた。」
と苦笑するヴィンセントが構わないか?と言うので首肯すると手招きをしている。
「ごきげんよう、マリアちゃん」
と声のした方を見るとアンジェリカがそこにはいた。
「え、アンジェリカ先輩?」
「なかなか忙しくて学園で時間が取れなくて…エドから今日のことを聞いたから無礼を承知で義兄上様に頼み込んだの。」
「事情を聞いたら、俺もいたほうがいいかと思って。」
「…ということは生徒会の話しですね?」
「そう!義兄上様は前会長だし、一緒にしっかり説明させてもらうわね。」
ヴィンセントが淹れてくれた紅茶を片手にアンジェリカが生徒会の説明を始める。
「生徒会はそこまで大変ではないわ。主な仕事は3つ。」
とアンジェリカが身振り手振りを加えながら話してくれる。
一番大きな仕事は『研究会・愛好会・同好会の予算関連』。
前世でいうところの"部活動"の予算組みである。
予算が正しく使われているか、過不足ないかなどを見るのだとか。
(余談だが生徒数が少ないので各会は掛け持ちし放題だそうだ。)
次に秋頃にある『文化祭の運営』。
これもよくある役割だ。研究会の発表の場でもあるのでみな張り切るらしい。
文化祭は計3日間行われ、最終日は夕刻に軽く打ち上げパーティーのようなものがあり、それも生徒会が采配するそうだ。
あとは『校内風紀の取り締まり』。
まあ、高校生だものね……なんとなく前世で覚えがある……
「──これくらいかしら。」
アンジェリカはふぅ、と紅茶を飲み一息ついている。
「説明ありがとうございました。」
「あぁ、あと『卒業パーティーの采配』もあるわ。これは主に1年生が担当するから実質、引き継ぎのようなものかしらね。」
…なるほど。エドガーからやみくもに入ってくれと請われるよりはよっぽど入ってもいいかな?と思えてくるから説明って大事だ。
「なにかわからないこととかあれば聞くわよ?」
「そうですね…役職とかあるんですよね?」
「まあ、そうね。ちなみに3人にはもう予定があるのよ。」
「え。」
「シャロンちゃんが副会長、トラビス君が会計補佐、マリアちゃんが書記。今は私が副会長なんだけど会計になるわ。」
順当な配置だ。しかし2年間、やれるだろうか…?
「…ちなみに2年間きっちりやる必要はない。」
と今まで黙って聞いていたヴィンセントが口を開く。
「とりあえず1年間やってみたらいいんじゃないか?」
「いいんですか?それで。」
「まあ、大半は2年間やる人が多いが別にやらなきゃならないということはない。」
「そう、なんですね…」1年間だけならやってみてもいいかな…?
「実際、俺も2年生に上がるとき1人、研究会に集中したいとかで辞めていった。」
「…それと実はシャロンちゃんたちは先生からも打診してもらってるんだけど2人とも、『マリアちゃんが入らないなら入らない』と言っていて仕事内容とかは別にどうでもよくてマリアちゃんと離れるのが嫌って事みたいね。」
まあ、彼女らは仕事は普通にこなせるだろうから問題はないのだろうが…
「なぜ私……」
「…それだけ大切にされてるってことじゃないの?」
「……放っておいたら何するかわからないの間違いでは…」
と自嘲が混じる。
「まあ、あの、わかりました。……とりあえず1年間、だけ」「ありがとう!!」
と食い気味にお礼を言ってくるアンジェリカ。
「これで、セリスさんをやっと断れるわ。」と安堵のため息をついている。
「…なんかセリスさんが可哀相ですね?」
「正直、彼女本当に義兄上様しか見てないのよ。そりゃもう驚くくらい!」
どうしてああなっちゃったのかしら、とアンジェリカは独りごちている。
「じゃ、そろそろお邪魔虫は退散するわ。─義兄上様、場をお貸し下さりありがとうございました。」
「いや、未来の義妹のためだからな。」
──"義妹のため"…その一言になぜか胸の奥に小さくチクリとするものがある。
「ではごきげんよう、義兄上様。マリアちゃんはまた休み明けにね!」
「は、い…」
とアンジェリカは何度も手を振りその場を去っていった。
「…アンジェリカはたまに突拍子もないことするんだよな。」
とヴィンセントはぼやいているが、その様子がこれまた小さく胸を刺す。
──ああ。私、嫉妬してるんだわ…
彼女はエドガーの婚約者でヴィンセントとはただの義兄妹というはっきりとした関係であるにも関わらず、明確に彼女に嫉妬したのだ。
『ヴィンセントを独占している』ということに優越感を感じていたらしいことに気付いて私は、自分が少し嫌になった。
「どうかしたか?」
と急にヴィンセントから問われ
「っ、…なんでもないですよ?」と笑顔を貼り付ける。
「…アンジェリカは。」「?」
「……君に話すことではないかもしれないが彼女は俺の婚約者候補だったんだ。」うんと小さい頃だけど、と付け加えるヴィンセント。
私はびっくりして目を瞬くことしかできない。
「騎士団長の娘という立場上、どうしても俺たち兄弟と一緒にいることが多くて。」
と眉を下げている。
…というか一人称がアンジェリカが来たときから『俺』になっている。
完全なプライベートだと『俺』になるんだろう。
「家格も合っていて年も近いってことで、遊び相手でもあったし"将来は"なんて話しも確かにあった。」
私はただ、黙って話を聞く。
「だけど、初等学校へ入って数年経ったらエドガーとアンジェリカが好きあっていることがわかってね。だったらエドガーを婿養子にやろうってことで決着したんだ。」




