56. 魔法の話。 学園編
「う〜ん。─よし!」
やはり昨日たくさん寝たからかずいぶん早くに目が覚めてしまったが、気持ちのいい朝なので気分がいい。
ティアナが用意してくれたのだろう着替えのセットが置いてあったのでそれと、制服を掴んでお風呂に行こうと扉を開けたら
「わっ」「ふぇ?」
アシュクロフが立っていた。
私がちょうど扉を開けたらしく彼の手はノブを掴もうとした形で宙に浮いている。
「おはようアシュ。」
「お、はようございます…今起こそうかと…」と彼は目を瞬いている。
「…なんかごめん?」
「いや…大丈夫です……もう体調はいいですか?」
「うん。…心配してくれてありがとう。もう元気よ」
と笑顔を見せるとアシュクロフも頷き、笑顔を返してくれた。
「お風呂、行ってもいい?」
「もちろんです。ご用意できてますよ。」
じゃいってくるね、と手を振りそこで別れた。
お風呂に入ったあと朝食に行ったがみんなにかなり心配をかけていたようで、もう大丈夫だと何度も答える羽目になった。
だけど、みんなから愛されてるなって嬉しくなった。
自室に戻り今日、必要なものをかばんに詰めて行く。昨日はダウンしてて準備できなかったから。
そして今日の髪型は前々から決めていた、"みつ編み"!
ふっふっふ。なぜみつ編みかというと今日はいよいよ、実技科目の訓練初日だから!
なので今日は絶対に登校したかったのだ。
みつ編みは前世から得意なのでふふーんと調子よく編んでいく。
メイクもし、忘れ物がないかチェックしているとアシュクロフが呼びに来た。
「お嬢、時間です……と、えらい可愛いですね」
「えへへー似合う?」と聞くとふわりと笑顔が返ってきた。評判がいいようだ。
そしていつものように登校する。先週でだいぶ慣れた感がある。
学園に着いて、午後からの実技が楽しみで楽しみで午前中はもとより昼食を食べてる間までも上機嫌でいたらシャロンから「マリアが気持ち悪い…」とかなり不評だったが気にしない。
昼休みの間に着替えるため更衣室へ。
授業が始まるまでに着替え終わっていればいいので人はまばら。
普段着ている制服は訓練で汚したり破れたりしたら大変なので訓練用の制服がある。
魔法専攻の生徒は上からローブのようなものを着るだけだが剣術を選んでいる生徒はいわゆる騎士服、というのだろうか?マンガやゲームでよく見るやつだ。
男女共にズボンでブーツを履いている。
それと不安な人は軽い防具を着けたりもする。もちろんシャロンとトラビスは昔から剣術訓練をしているので着けない。
ちなみに私は魔法専攻、シャロンは剣術専攻、トラビスは剣術/魔法両方だ。見事にそれぞれに分かれてしまったが仕方がない。
このローブと騎士服、剣と防具の納品がようやく終わったので晴れて今日から実技訓練開始だ。
更衣室にはそれぞれ決まったロッカーがあるのでそこに脱いだ制服などを入れ鍵をかける。貴重品もきちんとしまった。
着替え終わり、あとは授業開始まで校庭の隅で時間を潰すことした。
隅にあるベンチに3人で並んで座る。
「そういえば今日はエドガー先輩来なかったね。」
「…そういえばそうですわね。」
「アンジェリカ先輩がああ言ってたからもう止めたんじゃない?」
確かにアンジェリカから今度説明を聞くことになっている。
「今度よく話を聞かないとね」
ふと横を見ると校舎からセリスとミアが出てくるところだった。
ミア─本名ミア・クロスベル。
私は知らなかったのだけど、彼女は神殿長の長子なのだそうだ。
神殿というのは国にある施設のことで、俗称は"聖女神殿"。
神殿という名前だが別に宗教団体ではない。ただ、聖女が現れると神殿に神託だかなんだかが降りるらしい。このあたりは秘匿されているようで詳しく知っているのは件の神殿長や王族だけだとか。
たまたまセリスと同い年だったため、彼女の世話役を任されたようだ。
2人とも私と同じローブを着ているので彼女らも魔法専攻なのだろう。
と、予鈴が鳴っているのが耳に入った。
先生方も校舎に集まりだしいよいよ実技授業が始まる。
3人お互い頑張ってね、と手を振りそれぞれ分かれていく。
私はエリ先生と補助の先生がいるところへ集まる。
魔法専攻の生徒は私やニコラス、セリス、ミアを含め全部で8人。
ちなみに剣術専攻も8人、残りはみな両方選択なので両方を選んだ生徒が一番多い。
集まりきったところで本鈴が鳴り、エリ先生が話し始める。
「はい、みなさんいますね?─それではいよいよ実技訓練を開始します。」
「はい!」と元気よく返事をする。
「まずこの場所をもう一度説明します。座学のときにやったようにその白い線で囲まれた内側が、魔法が1/5になる結界が張ってあります。
なのでここでは基本的に思い切り魔法を撃ってもらって構わないわ。
外に出たらここでの威力の5倍になると思ってね。」
…後宮の結界の応用なんだろうか。1/5か…
「早速だけど、みなさんの力を見るためにこれからあの木人に魔法を使ってもらうわ。」
と示す先には10体ほど木人が立っている。素材は…石?
「石で出来ていて、強化魔法もかけてあるからちょっとやそっとじゃ傷ひとつつかないわよ。ではまずみんなの中で一番魔法を使い慣れてるニコラス君からお願いできる?」
ニコラスは魔法使いの一族なので小さい頃から訓練している。
彼は、はいと返事をし木人の前に立った。
「自分の良いときでいいわ。」
とエリ先生に言われたが、ニコラスはすっと片手を前に出しハッという掛け声と共にボーリング玉くらいの火球を木人にぶつけた。
ドォォンというすごい音がし土煙があがる。そこそこ離れた私たちのほうまで衝撃がきた。
おぉ、とみんなざわざわしている。さすがニコラス…
「うん、さすがニコラス君ね。お疲れ様」と戻ってきた彼にエリ先生が声をかけている。
ちなみに木人は…少し揺れているが傷はおろか煤もついていない。
私の横に座りながら「…うーん、最大に近いくらいの威力で撃ったつもりなんだけど…結界すごいな。」と同意を求めてきた。
なぜわざわざ私の横に…と思いつつそれを出さないようにしながら
「でもさすがね。…ほら、他の子たちは全然威力が違うわ。」
と他の子たちの様子を見るがニコラスとは威力が全然違う。
…私の番はまだかな?と思っていたのだけど、どうやら最後のようだ。
「じゃ、最後ね。マリアさんお願いするわ。」
「はい。」




