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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
55/135

53. その心は?の話。

「っ…すまない…あぁ…僕本当にダメだな……」

と項垂れるヴィンセント。

エリ先生と顔を見合わせ、笑った。

ヴィンセントは驚き、バツの悪そうな顔をしながらも彼も笑い出した。


それから様々な話をし、気付くとかなり時間が経っていたようで

「…あら、もうこんな時間ね。」とエリ先生が時計を見ているので私も見るともう夕刻だ。

「わ、本当ですね。…そろそろお暇しないと。」

「楽しい時間はあっという間だな…」

「…私は先に失礼させてもらうわ。ついでに馬車を呼んでくるから来るまで2人でおしゃべりを楽しんでね。」

じゃあね、とエリ先生の計らいでヴィンセントと2人きりになる。(といっても部屋の隅には侍女さんが控えているが)


「…今日はありがとうございました。」

「いや…こちらこそ本当に、来てくれてありがとう。」

「…雨、びっくりしましたね。」「そうだな。」

"さっきのこと"をお互い思い出したのか2人で顔を伏せてしまう。


沈黙を破ったのはヴィンセントだった。

「…また、来てくれるか…?」

そっと顔を上げると揺れる瞳にぶつかる。

「……はい。また、お話ししたいですし、お庭も見たいです。」

と素直に肯定する。

「また手紙も書く。」「はい。私も書きます。」


─この人を『異性として好き』かどうかはまだわからないが、とても大切にしてくれてるのはよくわかった。

大切にしてくれる人を邪険にする道理はないし、たとえ友人で終わるかもしれなくても嫌いになる必要なはい─。


と他にも他愛のない話しをしていたら馬車が来たようで、どうやらセリスも帰ったようだったから今度は馬車停めまでヴィンセントが送ってくれた。


「いろいろと本当にありがとうございました。」

「こちらこそ。」

と馬車へヴィンセントの手を借りて乗り込む。

「さようなら、風邪ひかないようにしてくださいね。」

「マリア嬢こそ。ゆっくりお風呂に入ってよく寝るんだぞ。…ではまた」

とヴィンセントが御者に出るよう促す。

お互い手を振り、初めての2人きりのお茶会は終わった。


帰路では今日あったことが思い出される。

「……さすが王子様(?)、乙女心をギュンギュン刺激してくる。」

ゆっくり話しをしてみると親しみやすい人だというのがわかったし、今日のお茶会は良い結果だっただろう。


……アシュクロフはどう、思うだろう。


と今朝から姿を見ていない執事の事が頭をよぎる。

アシュクロフは本当は私をどう思っているのだろうか?

恋人役を頼みそれを了承してくれて、ヴィンセントにも告げてみたがそんなの関係なくヴィンセントはぐいぐいくる。宣言もされたくらいに。

私はアシュクロフを好きだとは思うが、告白したりはしていないのでただの役でしかなく、別に本当の恋人のように振る舞う必要もないから現に先日2人で出掛けた以降、特に何もなく日々が過ぎている。

そこで今日のようなことがあれば、揺れ動いていまうのが乙女心というもの…


「でもやっぱり"お妃様"はないなあ……」


今の状況があまりよくないことなのはわかっている。

いわゆる三角関係?のようなものだから。

……自分がひどく悪女のように思えてくる。

傍から見ると実際そうなんだろうな。


さっさとアシュクロフに告白して関係を進めるか?とも考えたが"NO"を突きつけられたときが、やはり怖い。


──馬車の窓の外を見ながら『青春してんな』と他人事のように思った。


帰宅するとすでに夕食の時間になっていて、急いで食堂へと向かった。

帰宅が遅くなったことを謝ったが気にしないでいい、とお父様お母様は許してくれた。

お茶会のことはなぜか聞かれなくて、雨のことを聞かれたのでエリ先生のことを話した。

「え、エリ先生て宮廷魔法使いなのか?」とウィルフレッドとジョセフが驚いている。サラは知らなかったの?と言っているが。


「いい先生だったでしょう?エリ先生。」

「うん、とてもいい先生ね。」

とサラと笑いあった。


雨のことがあったのでゆっくりお風呂に浸かったのだが、自室に戻ってからほんの少しぼーっとするので早く寝ようとしていたらアシュクロフがきた。

「…今日はずいぶん遅いね?」

「別の仕事が抜けられなくて…」

「…週2のやつ?」「いえ、違います。」

…忙しそうだな。無理はしていないだろうか?

「…あぁそうだ、さっそく手紙が届いていましたよ。」

「ありがとう。」

と渡すため近付いてきた彼に

「もう遅いですから読むのは明日にして、今日は休んで下さい。」

と頭を撫でられた。

驚いて彼を見るととても優しい笑顔を浮かべていて、私はぎゅうっと胸の奥が痛くなるのを感じた。


「わかったわ…」と手紙を文机に置き、ベッドへと向かう。

布団に潜り込むとアシュクロフが掛け布団を肩までかけてくれる。

「まるで小さな子供扱いね。」と嫌味を言えば「…黙って寝てください。」とぽんぽんされた。

それが存外、気分が良くて。

「おやすみなさい。」「おやすみなさいませ。」


とても穏やかな気持ちで目を閉じた。



──最近は夢も見ないくらいよく眠れてるなあ。

来週くらいには部屋を変えてもらおうかな。

今日は休日だけど何をしよう?

まずは起き……


「………あれ?…なんか身体、熱い…」

頭も痛い。……風邪?

もうすぐティアナが──


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