48. お祝いの話。
食堂へ行くと少し飾り付けがしてあって、テーブルには私の好物が並んでいた。
中へ入ると使用人も含めみんなから「入学おめでとう!」と拍手をされる。
「わあ!ありがとう〜!」
まさかここまで盛大にしてくれるとは思っていなかった。
「今日はこの席だぞ」とお父様がいつも座っている位置、いわゆるお誕生日席にお父様がエスコートしてくれる。
「まずは俺からなー」とジョセフが包みを渡してきた。
「ありがとう!ジョセ兄様〜」…この感じはノートかな?
「これは俺とサラから」「ありがとう〜ウィル兄様、義姉様!」…なんだろう、とちらっと覗くと髪飾りのようだった。
「最後は私たちからよ」とお母様から渡される。
「ありがとう!お父様、お母様!」
「開けてみなさい。」とお父様から促され落とさないように気を付けながら包みを開けると
「筆記用具入れ?…と…これ…!」
ガバッとお父様お母様を見る。
「贔屓の文房具屋の店主から貴女が欲しそうにしていたと伝えられたのよ。」
「職人がもう1本出来た、と持ってきたそうだ。」
それはガラスペン。
先日、ヴィンセントに贈ったものと軸の模様のデザインは違うが色は同じもののように見える。
「やっぱり綺麗……ありがとうございます、お父様お母様…!」
「どういたしまして。」「マリアちゃんが喜んでくれて嬉しいわ。」
「兄様たちと義姉様もありがとう!」
「おめでとう、マリア」「おめでとうマリアちゃん」「よかったなーマリア」
みんなが笑顔で祝福してくれる。ただそれだけなのに本当に嬉しい。
誕生日とはまた違った嬉しさだ。
プレゼントはアシュに頼んで部屋に持っていって貰った。
「さ、冷めないうちにいただこうか。エルヴィスとシモンが頑張ってくれたようだからな。」
ではいただこう、とお父様の合図でいただきます!と料理に手を付けていく。
料理たちは本当に美味しくて、楽しくてあっという間に時間が経つ。
お酒も少し飲ませてもらって明日も学園だから早く休みなさい、とほわほわとした気分で自室へと戻った。
疲れとお酒ですごく眠たい。だけどお風呂に入らなければ…と思いながらもソファから動けない。
アシュクロフが心配で「大丈夫ですか…」とおろおろしている。
その姿がなんだかとても可愛らしくて
「アシュ〜ここ!」とソファの私の左隣に座るよう座面をぽんぽんする。
「…はあっ?!」と彼は驚いているが早く!と急かす。
しぶしぶ失礼します、と座るアシュクロフ。
…だいぶ隙間があるが今はまあ、よしとしよう。
「…えへへへへ」「……お嬢そんなに酒弱かったですっけ…」
そんなに飲んだつもりはないのだが、今日は変な酔い方をしている。
彼は私の左側に座ったのでお揃いのイヤーカフがよく見える。
それが嬉しくて、手を伸ばしてソレに触れると
「わっ、ちょっ、何なんですかっ」と耳を手で隠し顔を赤くする。
「……かわいい」なんだこの生き物は。
お酒が入り前世の性質が顔を出す。
「可愛いなー」とアシュクロフの頭を撫でるが彼は驚きからか目を見開いて固まり、されるがままになっている。
と撫でていた手を突然掴まれ
「そ、れ以上はだめ…です……」
「あ…ごめん…」
アシュクロフは可哀想になるくらい赤くなっていた。ちょっと調子に乗りすぎた…
「ごめんなさい…」酔いも少し覚めてきて罪悪感が頭をもたげるが
「……お返しです」
と掴まれた手の平にキスをされ、ぺろっと舐められた。
驚き目を瞬いていると
「さ、酔いも覚めたでしょう?お風呂に入って早く休んで下さい。」
と彼はさっさと立ち上がり着替えを渡され、部屋を追い出された。
「むう…結局最後は負けた気がする…」
とキスされた手の平を見つめ
「……やっぱり好きだな。」と独りごちる。
─その晩も悪夢は見なかったので、そう遠くない未来に部屋を動けるかもしれない。
隣の部屋からアシュクロフがいなくなるのは寂しいけど…
…玄関まで遠いのはやっぱりダメだわ、と思いながら今朝も玄関まで早歩きで向かっている。
今日の髪飾りは昨晩ウィルフレッドとサラから貰ったものを早速着けた。
黄色い花を模した飾りの付いたヘアコーム。
カバンの中には新しい筆箱とガラスペンも入っている。ノートもまだ未使用だったので貰ったものと入れ替えた。
昨日は"また明日学園か"と少し憂鬱だったけどこれらのお陰で気分が上がっている。
おはよう、と馬車に乗り込むと早速シャロンが可愛い髪飾りね、と褒めてくれた。
「ウィル兄様と義姉様から戴いたの!」
「良かったわね。よく似合っていますわ。」
へへへ、と嬉しくなる。
「今日から授業だね。」「そうだねー。というか先生の目の前とかつらいんだけど…」とトラビスが凹んでいる。
「しっかりと勉強してくださいまし。」とシャロンは言っているがトラビスは別に勉強が出来ないわけではない。むしろ入試成績は上位者のはずだ。
…夫婦漫才みたいなものかな?と思っている。
さあ、今日から勉強頑張るぞ!と空元気かもしれないが出しておく。
…勉強は苦手なんだけどね。




