46. 学園の話。 校内案内
学園自体、規模が小さいので校舎案内と言ってもそんなに時間はかからない。
まずは先程までいた教室がある教室棟。学園生活で主に過ごすのはこの棟だ。
3階建てになっていて、1階に玄関及びロッカー置き場(海外ドラマとかで見るようなアレ)、事務室、職員室、保健室、学園長室がある。
2階は2年生の教室、空き教室、更衣室。3階も同じ造りで1年生用だ。
そして1階から渡り廊下を渡った先にもう1棟。
と、渡り廊下を歩いているときに運動場と入学式を行った講堂が見えた。
「あっちは運動場だ。体育と実技科目はあちらで行う。」
とアレックス先生がしゃべっている。今は2年生が実技の訓練をやっているようで3つ集団が見える。
「実技訓練、結構近くでやってるね。」
「そうですわね。何かあったときに先生方が補助出来るようになっているのかしら?」
と2人でひそひそ話をしていたのだが後ろから
「正解。たまに暴走しちゃう生徒がいるのよ」
とエリ先生が話しかけてきた。
「なるほど〜」「さ、行きましょう。みんな行ってしまうわ」
と彼女から背中を押される。
第2棟は1階に食堂、倉庫。2階に芸術室、芸術室倉庫、会議室。3階に生徒会室、自習室…となっている。
そして更に奥、壁を隔てた向こうに図書館がある。
実は図書館は学園だけの施設ではない。
壁の向こうの学園の外に建っていて国立図書館として誰でも利用出来るようになっている。
しかし外からの不審者が学園に入らないようにしなければならないが衛兵・守衛などの人が立っているわけではない。
ではどうするのか?
「じゃ、今から図書館の利用鍵を渡すぞ。」
とアレックス先生からカード状の魔道具を渡されていく。
これが答え。前世でいうところのカードキーだ。
学園の生徒だけが使えるカードキーで持ち主の魔力を記録し、それらを照合して学園と図書館の通路の扉が開く仕組みになっているそうだ。
入学して初めてその扉を通るときに記録がされ、卒業するときにその記録を消す処理が行われるためカード自体は使いまわし&他人には使えない、のだとか。
「みんな1枚ずつ持ったか?よし、じゃ魔力を込めながらこの扉を1人ずつ通るんだ。」通ったらその鍵を使ってこちらに戻るように、とアレックス先生が指示をし順番に通っていく。
30人いるし、私たちは後ろの方にいたのでまだ順番は先。
すごい仕組みね、とシャロン、トラビスとおしゃべりをしていたのだがふと渡り廊下の窓の外に大きな樹があることに気付いた。
「あれが…」「マリア?あら、大きな樹ですわね。」
何かありますの?とシャロンが一緒に外を覗くので
「義姉様から聞いたの。…恋愛成就の樹らしいわ。」
シャロンたちには関係ないね、と笑うと彼女とトラビスが顔を見合わせて恥ずかしそうにしている。
ふと横を見るとセリスが同じように樹を見ている。…彼女はああいうジンクスを信じるような子なんだろうか。
…とこちらに気付いて、フンッと行ってしまった。
「先に行ってくるね〜」とトラビスが扉をくぐりに行く。
それから順番に私たちも無事登録が終わり教室へと戻った。
「みんなお疲れ様〜。学園内はわかったかしら?小さいから迷子にはならないと思うわ。」
「それと、鍵のかかっている部屋には入らないように。」
主に倉庫とかな、とアレックス先生が言うのでみなはーい、と返事をする。
「では他になにか質問とかあるかしら?」とエリ先生。
するとセリスが手を挙げ
「エリ先生は男性だと聞いたのですが本当ですか?」
といきなり言い出した。
にわかに騒がしくなる教室。
「…セリスさん、なぜその質問を?」とエリ先生が静かに質問し返している。
すると彼女は─
「だって、気持ち悪くないですか?」
「─性別なんてただの記号よ。エリ先生が男性だろうと女性だろうと先生は優秀な魔法の使い手。それ以上でも以下でもない。
性別なんて些末なこと、どうでもいいわ。」
気付けば私は反論していた。
やっちゃったなあという感情と許さないという感情と折り混ざってなんとも言い難い気持ちが胸に広がる。
「─私も、マリアの意見に賛成ですわ。エリ先生は我が国屈指の魔法使い。先生がいらっしゃるからわざわざこの学園へ通う留学生もいるでしょう?」
とシャロンが援護してくれ、生徒の大半も意見に納得してくれたところで終鈴が鳴る。
「…いずれ、機会があれば話すわ。」とエリ先生が言い
「では今日はここまで。明日から普通に授業だ。遅刻とかするなよー」とアレックス先生が笑い飛ばしその日の学園は終わった。
「腹立つ〜。いくら聖女だからってアレはないわ」
と1人憤慨している私がいるのはロッカー置き場の近くにある校内ベンチだ。
シャロンとトラビスが先生から用事で職員室に呼び出されたのでここから絶対に離れるな、と2人から厳命されてここで待っている。
「あら、マリアさん?」
と声のした方を見るとエリ先生だった。
「ごきげんよう、エリ先生」
「どうかしたの?」「シャロンとトラビスを待っているんです。」
と答えたら、隣いいかしら?と聞いてきたので首肯した。
「…さっきはありがとう。」
「…私なんかが意見してしまってすいません。」
「"なんか"ではないし……とても嬉しかったわ。」
とふわりと笑う先生は本当に男性とは思えない。
「……もしかして、知ってる?」
「あ……」変な顔で見つめてしまっていたらしい。
「あの…私、家名はクローヴィスです。兄はウィルフレッドとジョセフ…」
「…………あ!5年くらい前と3年くらい前の生徒?」と言うので首肯した。
「話自体は、サラ義姉様からなんですが…」
「ああ、サラさん!…なるほどね」とエリ先生は眉を下げている。
「義姉様は悪くないので、怒らないで下さい!…とても、素晴らしい先生だと学園生活を心配する私に話してくれたんです。」
「怒らないわ。サラさんはとてもいい子だったし、当時庇ってくれたのはサラさんだった…」と先生は遠い目をしている。
「…みんな、元気にしている?」
「はい!とても元気ですよ。あ!ウィル兄様と義姉様の間に今年赤ちゃんが産まれるんです!」あと半年くらいなんですよ、と伝えると
「えぇ?!それはすごいわ。そう、あの子たち親になるのね…」
ととても嬉しそうだ。
ちなみにエリ先生はアラフォーです。美魔女!




