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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
39/135

37. デートの話。


自室で衣装棚(クローゼット)を覗くが、まあ普段が普段なので特に選ぶようなものはない。

白の長袖シャツに灰色のベスト、濃い灰色のズボン…

長袖は少し折り曲げて、初任給で買ったお気に入りの懐中時計をベストの胸ポケットへ。

あとは……


──デート前に女性が着飾る気分が少し、わかった気がする。


玄関へ向かうとアルフォンスさんとマリアが話しをしていた。

家中をうろついている彼が捕まったのは結局玄関だったようだ。


「あ、アシュ!今アルフォンスさんに話していたとこ。」

「アシュクロフ、くれぐれも頼みましたよ。」とアルフォンスさんから念押しされるので「わかりました、大丈夫です。」としっかり返事をした。

馬車は用意しますか?と彼から聞かれるがマリアが歩いていきます、と答える。街までは徒歩20分ほどで着く。

天気も陽気もいいし散歩がてら良さそうだ。


「昼食もいらないです。昼過ぎには戻ります。」

「かしこまりました。お気を付けていってらっしゃいませ。」

と見送られ、2人でその場をあとにした。


しばらくは他愛もない話をしながら歩いていたのだが屋敷からほどなく離れたところで急にマリアが腕に手を絡ませてきた。

驚き彼女を見るとなんでもないように歩いているが少し、耳が赤い気がする…


「…お嬢?」

「……こっ…"恋人"なのだからいいでしょ…」

俺とは反対方向に少し顔を背けながら言うマリア。

「ふっ…仕方がないですね」「あと街なかでは敬語もなしね。」「え。」


「だってそうでしょう。今は、主従じゃないの。」

と見上げてくる顔が直視出来なかった。

あまり見ないようにし、にやけ顔を隠すように空いてる手で口元を隠し「わか、り……わかった。」と頷くと満足げな笑顔が返ってきた。


「あ…でも名前、は無理だから、な?」

「……まあ、しょうがないわ。」

「それでも旦那様に知られたら殺されそうだな…」

「…そんなこと、ないわよ。………たぶん」

と顔を見合わせたが、んふふとマリアが笑い出したのでつられて笑ってしまった。

「その時は、一緒に怒られるわ。」

「……期待しないでおきます。どう考えても俺1人だけ怒られる未来しか見えません…」

「言葉遣い」「あ……」


それからおしゃべりを続けていたのだが口調がなかなか定まらずマリアから突っ込まれ続けた。…まあ街に着く頃には安定したが。


「まだ少し早い時間だから人少ないわね。」

「そうだな。…最初はどこへ?文房具店か?」

「うーん…そうね、選ぶのにどれだけ時間かかるかわからないから最初にしましょう。」

「じゃあいつもの店か。」

マリアには行きつけの文房具店がある。彼女愛用のガラスペンや専用に調合したインクなど文房具類は全てその店だ。


「…そういえば、一緒には来たことないな。」

「確かにそうね。いつもシャロンと一緒だわ。」

「……その、このまま入るの、か?」と腕に目をやる。

「…………どうしよう?」「俺に聞くな……」


結局、店にいるときは離そうということになった。

ほどなくして文房具店に着く。…まだ客の姿はないようで助かった。


店の扉を開くとちりん、と鈴が鳴る。

扉を押さえてやりマリアが「こんにちは」と入っていく後を追う。


「あれ、マリアお嬢様ごきげんよう!お早いですね。」

と人の良さそうな店主が店の奥から顔を出す。

「ちょっと、ガラスペンを探してて。贈り物なんです。」

「ガラスペン…ああ、そうだ先日新作が………こちらです。」

とゴソゴソと奥から箱を出してきて会計机に乗せた。


「職人が立太子の記念にと作ろうとしたそうなんですが、結局この1本しか…綺麗な青色が出なかったらしくて。」

マリアと一緒に箱を覗くと、軸に紺と金で螺旋状に模様の入った1本のガラスペン。…紺が

「…濃紺(ロイヤルブルー)に近い色、ね。」

「そうなんです。これしかこの色が出なかったそうで。モノはいいし、マリアお嬢様にお見せしてからでもいいかと思いまして入荷しといたんです。」さすが行きつけなだけあって彼女の好みをよく把握している。

「これにするわ。あとインクも調合して欲しいの。色は…紺で。」

「かしこまりました。」「お願いします。その間インク瓶を見ておくわ。」


「……あれ、もう1本あったらなあ…」とマリアが独りごちている。

「お揃い?」

「違う。…あげてしまうのが勿体ないくらい好みだった。でも…喜んでは、貰えそうね。」と少し嬉しそうだ。


「インク瓶は良いのあるかしら…?」

瓶が並んでいる棚を一緒に眺めていたがふと目に入ったものがあり「お嬢、これは?」とおすすめしてみると「う、わぁ…よく見つけたわね!」と破顔している。

それは、2つで1つの絵柄になるように絵付けしてある瓶。絵柄は番いの青い鳥のようだ。

「うーん…でもこれ片方だけなのは…」「片方はお嬢が使えばいい。」

「え……なん、で…」「…言わなければわからないし両方差し上げるわけにもいかない。」

考え込むマリア。…うーん、ダメ押しするか。

「じゃあ、片方俺が買ってお嬢に贈る、それでどう?」

「あ……まあ、それなら……」

たまにこうやって騙されてくれるのが可愛い。


調合終わったインクを先程の瓶に詰めてもらい、ガラスペンと共に包んで貰う。

もうひとつの瓶は俺が支払い屋敷に戻ってから渡すことにした。

「ありがとうございました!良い買い物出来ました。」とにこにこ顔のマリア。

店主が「こちらこそありがとうございました。またのご来店お待ちしております。」と腰を折っている。

そうしてマリアは店主に手を振り、俺は頭を下げ2人で店を出た。


「荷物、持つから渡して。」

「あ、うん。ありがとう…割らないでね?」

「お嬢のインク瓶も入ってるから大丈夫」

「それのなにが大丈夫なのか全然わからない…」


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