20. 日常の話。 その②
──すっかり、忘れてた…え、今何時?
時計を見ると7時になろうとしているところだった。
「仕立て屋は10時に来ますが先程シャロン様より速達が届いてまして。」と封筒を渡される。
10時か…なら、まだ時間あるな〜なんて考えながら開封してみるとメモ紙のような紙が1枚。
『こないだのこと詳しく聞きたいから8時には行くわ!』
と書いてある。
「…………は?」
…………8時……あと1時間!
急いで朝食の残りを口に入れる。
「シャロン様はなん」「8時には来るって書いてある!」「え?!」
「シャロン、たまにすごい行動起こすよな」とジョセフが食後のお茶を飲みながら呟いている。
「ご馳走様でした!」
食器を片付けるついでにお菓子を頼んでおいた料理長に時間が早くなることを伝えなくちゃ。
「義姉様と兄様たちのも一緒に持って行くわね!」と集めて調理場へ持って行く。普通はやらないんだろうけど朝はみな忙しいからこれくらいは手伝う。
調理場では片付けをしている料理人が1人と料理長がいる。
「あれっ。マリア様、すいません!」「いいの!用事もあるからついでよ」と食器を洗っている料理人シモンに持ってきた食器を渡す。
「なんかご用ですか?お嬢。」調理台を片付けているのは料理長のエルヴィスだ。
「エルヴィスさん、今日予定してるシャロンとのお茶会なんだけど、さっき連絡があって、これから8時に来るって言うの。」
「はあ、そりゃまた急ですな。」とははは、と笑うエルヴィス。
「だから今出せるもの、何かある?」「大丈夫ですよ。…たしか、焼き菓子がいくつかありましたな。それでよいですか?」「ありがとう!助かるわ。」「んじゃ、用意しときます。」
ありがとう、ともう一度お礼を言って調理場をあとにする。
食堂へ戻るとすでに2人はいなくなっていた。
「あとは…」歯磨きして、少しメイクしようかな。
なんて考えながら自室へ向かっていると「お嬢!」とアシュクロフから呼ばれる。
「なにー?」となるべく、いつもの調子で返事をする。
「お茶の準備、お嬢の部屋にします?それとも四阿にします?」あー…どっちにしよう?天気もいいし気温も丁度良さそうだし…「四阿にする!」「りょーかい。」と去っていく。
…ちょっと心臓がどきどきしているがいつも通り、だっただろうか。
変な感じになってない、よね?と一人反省会をしながら部屋へ入る。
歯磨きをし化粧台に座り今日は何色にしよう?とパレットを眺め「今日は若草色だから…黄色系にしようかな。」とメイクを施していく。
こちらの化粧品はほぼ日本と変わらない。と言っても色味は少ないけれど、使い心地は気にならない。明治大正とかそれくらいかな、と勝手に思っている。
成分も自然由来で鉛のような危険なものはないらしく安心して使える。…私はこれ、過去に絶対転生者がいたのだと思っている。だってこの国の科学力に見合ってないから。
魔法でおおよそなんでも出来てしまうからか科学の発展があまりない。
だけど変なとこで"向こうの世界らしい感じ"が見え隠れするのだ。
「…よし。こんなもんかな?」と様々な角度からメイクの出来栄えを見ているとティアナが部屋にきたのでどう?と聞く。いつもメイクしてくれるのはティアナだから。
「うん…大丈夫です!だいぶお上手になりましたね。」と太鼓判を貰った。
「あとはもう少しここに色を…こう…すると、さらに良くなります。」
「おお〜 すごい。ちょっと入れるだけでだいぶ変わるわね!ありがとう。」やっぱりメイクは気分が上がる。
「とんでもございません。髪型はどうされますか?」と聞かれるがそのままで充分なのでいいわ、と断る。
そうこうしている内に時間がきたようで、アシュクロフが呼びに来た。
「お嬢、そろそろ時間です。」「ありがとう、今行く。」ティアナにありがとう、と手を振り玄関へと向かうことにする。
玄関に着くとシャロンが乗っているであろう馬車が入ってくるところだった。
なんとなく「今日、どうかな?変じゃない?」とアシュクロフに聞いてしまうも「……いつもと変わらないです。」と素っ気なく返されたのでムカついたから足を踏んでおいた。
ぃって〜、なんて言ってるアシュクロフを無視してシャロンを出迎える。
「おはようマリア!」手を振りながらこちらへ来る。
「おはよ!シャロン。というか早すぎではないですかね?シャロン様?」とジト目を向けるも、
「だってあれから連絡ないし、もう気になって気になって!」たっぷり話して貰うわよ!と目をキラキラさせている。
「もー…今日は天気もいいから四阿にしたの。いい?」と聞くと全然いいわ、と返ってくるのでさっそく庭に向かう。




