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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
20/135

19. 日常の話。


──こんなに穏やかな朝を迎えたのはいつぶりかな。


なんて考えながら髪をいじるティアナを鏡越しに眺める。

とびきり可愛く、なんて言っていたけど結い上げたりとかはしないからあっという間に終わる。

「出来ましたよ。」「ありがとう!」自分では微妙にこう、綺麗にはならないのよね。

「…さすがに、アシュに謝ってくるわ。」と告げるも、あまり気になさらなくてもよいのでは?と返される。

「私が悪かったもの。余裕がなかったとはいえ…」だからいってくるわ、と部屋を後にする。


彼の部屋は隣なのですぐに着いてしまう。

扉の前で数回、深呼吸をしてから「よし。」とノックをする。


「──どうぞ。」

「お、おはよう。アシュ─」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


──ティアナさんの泣き声が聞こえたから、何事かと驚いてマリアの部屋に行ったのに。

自室に戻りよろよろと寝椅子(ソファ)に座る。


手酷く追い払われた……あんなこと初めてだった。

「はぁ…… 何かしたかな、俺……」と天井を仰ぎ見て考えるも、わからない。

頭を捻っていると扉を叩く音がする。

誰だろう?「どうぞ。」と声をかけると「おはよう、アシュ」とマリアの声。


───は?、と思っていると扉が開いていくのが見える。


ふと思うところがあり、文机を見ると上に書類が乗っているのが見えた。

(……っ あれだけは見られたら絶対マズイ!)と瞬時に体が動く。

急いで引き出しにしまったところでマリアが部屋に入ってきた。


「アシュ…あのね、さっきはごめんなさい。」と扉のすぐ近くで頭を下げるマリア。

「昨晩…ゆ、夢を見てね……あの……」もじもじとしながらなかなか先を言い出さないので「とりあえずすわっ「いや、そんな長居はしないから!」とぶんぶんと両手を横に振り断られる。…やっぱり何かやらかしたか?とか考えていたらマリアがすぅっと息を吸い込み


「貴方の、夢を見たの。 ─そ、それで恥ずかしくてあんな事を…だからごめんなさいっ」


と早口で捲し立て「それだけなの」と言い残してさっさと部屋を出ていってしまった。


一瞬ぽかんとしてしまったが──今、何と言った?

俺の、夢を見た…? は?あの悪夢ばかり見ていたマリアが?


俺の夢を、見た──。


ゾクゾクとした快感が背筋を撫でていく。

顔に手をやるとやばいくらいの笑顔をしている事がわかる。


「やっ、ばい……めちゃくちゃ嬉しい……」両手で顔を覆い、幸せを噛みしめる。


──胸によぎった"ある思い"は見なかったふりをして─


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……はぁ …全然謝れた気がしない…」と独りごちる。


朝のことを謝ろうとアシュクロフの部屋を訪ねたはいいけどやっぱり恥ずかしくなって早口で捲し立ててさっさと出てきてしまった。

「しかも私、『貴方の夢を見た』とか…どんだけイタイやつよ……」

はあ、とまたため息が出てしまう。


今は朝食をとるため食堂へと向かっているところだ。

この時間だとまだ誰かいるかな?と思いながら廊下を歩いていると途中、ジョセフが部屋から出てきた。

「おはようございます、ジョセ兄様」と声をかけると「…おはよう」とまだ眠たそうな声が返ってくる。


一緒に食堂に向かいながらおしゃべりをする。

「夜ふかしでもしたの?」

「いや、まあちょっと、彼女から借りた本読んでたらすっかり遅くなってさ…今日会うから返そうと思って。」ふぁ、とあくびをするジョセフ。


彼には平民の彼女がいる。詳しくは知らないんだけど…学園で出会ったとかなんとか。

ただし結婚する気は今のところ、お互いないらしい。

そのことを聞いたとき、ウィルフレッドとサラは初等学校で出会ってそのまま結婚までしたけどジョセフのようなタイプもいるのだなと思った。(前世の知識からしたら貴族社会で醜聞がとか思ったけど全然そんなことなかった。…まあ、婚前交渉はご法度みたいだけど。)


「ジョセ兄様が!読書!!」とちょっと大袈裟に茶化す。

「俺だって本くらい読む。」「どうせ斜め読みでしょ?」「…バレたか。」…それ、彼女さんから感想聞かれたらどうする気?

「あらすじはわかったから大丈夫。」

…どうやら顔に出てたらしい。

ジョセフは変なところで要領がいいのが、少し羨ましい。


食堂に着くとウィルフレッドとサラが食後のお茶を飲んでいた。

「おはようございます。ウィル兄様、サラ義姉様(おねえさま)」「おはよー」と2人で挨拶する。

「2人ともおはよう。」「おはよう。ジョセフ君、マリアちゃん」

サラは今日も元気そうでよかった。

「さて、俺はそろそろ行ってくる。」とウィルフレッドが席を立つ。サラが見送ろうとするがそのままでいい、と制し「いってきます。」とサラの頬にキスをしている。朝からラブラブだな!ご馳走様です。

「いってらっしゃい。」「いってらっしゃーい」「いってらー」と残された3人それぞれが声をかける。


さ、朝食いただきますかーと食べ始めるとサラから「マリアちゃん、何か良い事でもあったの?とても顔色がいいわ」と言われたので

「そうかな?…あ。あれだ、夢を見たけど悪夢じゃなかったからかな。」と素直に答えておく。内容は言えないけど…

「あら、本当? 良かったわね…!」「おー、本当かマリア?良かったなあ」と2人から祝福され、えへへとくすぐったくなる。

「そのまま、悪夢見なくなるといいな」とジョセフから言われ「そうだね。」と笑顔で答えた。


「お嬢。」

と突然アシュクロフの声がしてびくりと肩が跳ねる。

「な、なに?アシュ…」食事を続けるふりをして顔を見ないようにしながら返事をする。

「今日の予定、覚えてます?」「予定…?なんかあったっけ?」

…ああ、昨日寝る前も何かあった気がしたけどそのまま寝てしまったのだ。


「今日は仕立て屋の来る日です。あとシャロン様もいらっしゃって、制服を見せ合うと約束してましたよね?」


「───忘れてた…!」


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