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私の執事の秘密のオシゴト。  作者: ruka
本編
14/135

13. お願いする話。


私の世話のためだけに連れてきたのだろうな、というのが丸わかりだった。

だってアシュクロフは孤児だったし、屋敷の端の方に移動していた私の部屋の隣をあてがわれたし。

間違いが起きてもおかしくなかったけどみんな疲弊していて深く考えなかったのだろう。実際何も起きなかったけど。

私もよく懐いて段々と平和を取り戻した。

(というかその頃は前世の面の方が強く出ていて…アシュクロフが好みど真ん中だったから嬉しくてくっついていた。だから外から見たら最初から懐いたように見えてると思う。)


……あれ、これ私…割と普通にアシュクロフが好きなんじゃ…?


当時は本当、なんでこんな繰り返し悪夢見せられてるんだって腹が立って克服してやるって頑なになってたけど10歳の精神に引っ張られるのか結局毎晩悪夢で精神すり減らしてて、そんな時お父様がアシュクロフを連れてきて『私のためだけにこんなイケメン連れてきてなおかつ四六時中一緒にいていいだと?!』って勝手に盛り上がって病みかけてた精神が正常な方に向かっていった気がする。……我ながら現金なやつだ。

家族やティアナが私のせいでやつれていくのをもう見たくなかったし、みんなに休んで欲しかったから甘えるのを控えていた時に私だけのイケメンとか現れたら……言う事を聞いてくれる猫が手に入ったような気持ちだった。(前世からするとかなり年下だったのも相まってか不思議と下心のような感情は湧かなかった。むしろ可愛くてたまに頼んで頭撫でさせて貰ったりしてた…)

今思うと、私は初めからアシュクロフが好きになっていたのかもしれない。

出会いのときが正常ではなかったからこの気持ちは違うと蓋をしたのだろうか。

(今世の面が強くなってくるにつれ兄を慕うような気持ちに変わった、と思っていたのだわ…なんで忘れていたのだろう。)


──え、じゃあこれからの状況を逆手に取ってしまえば…



「お嬢、部屋に入らないんですか?」

と背後からアシュクロフが声をかけてくる。


「ひゃぃ?! ちょっと!びっくりさせないでくれる?!」

……びびびびっくりした…! すっかり存在を忘れてたわ…

「扉に手をかけたままなんかぶつぶつ言ってるので気が触れたかと。」

「そんなわけないでしょ?!……ちょっと色々ありすぎていっぱいいっぱいなのよ!」

扉を開けてくれたのでありがとう、と小さく言って入る。


部屋ではティアナがベッドの準備をしてくれているのが目に入ったので「ティア、いつもありがとう。」と声をかけるととんでもございません、とにこにこしている。

「着替え、こちらに置いておきますね。お風呂の順番がきましたらまた伺います。」「わかったわ。お願いね」と言うと、では失礼しますと部屋を出ていく。

…普通なら部屋に男女2人きりにしないのだろうけど私とアシュクロフは別だ。

まあ、その…気付いてしまった今ではちょっと恥ずかしいがなんとか押し込める。──そう、これから()()()をお願いしなくてはいけないから。


アシュクロフが自分の分の飲み物を用意して私の向かいに座る。

いつからだろうか。食後お風呂に入るまでの時間、こうやって話しをして欲しいと頼んだのは私だ。

その日1日あったことやなんでもない話しを2人でするこの時間が癒し。

……私、アシュクロフのこと好きすぎではなかろうか…ちょっと遠い目をしてしまう。


「で、お嬢。なにか俺に言うことは?」アシュクロフが切り出す。

う……ちゃんと言わなきゃ……

「ご、ごめんなさい…… 実は──」


事の次第を説明する。

アシュクロフは口を挟まず最後まで黙って聞いてくれた。


「──と、いうわけで……… あの、だから、恋人のふりをして欲しいの!」…ちょっと上目遣いをして見つめてみる。

「……………」カップを持ったまま目を細めるアシュクロフ。

「……な、なによ…」「いいですよ。」

「嫌なら別に──えっ?!…い、いいの?」聞き間違いだろうか…

「俺は構いませんよ。─それで、お嬢の役に立てるなら。」ズズッとカップに残っているであろう液体を飲み干している。

「本当にいいのね?…あとからやっぱ止めた、はダメだからね?」そうなったら私の計画台無しだし、出来ればそのまま…と考えその下心は一旦地中深くに埋めることにする。"急いては事を仕損じる"のよ。

「大丈夫ですよ。そんな、途中で放り出したりしません。」

「信じるからね?」「…そんな信用ないんですか俺」とジト目を向けられ、「いや、そういうワケじゃないけど…よくこんな、突拍子もないこと受けてくれるな、って……」と自分から頼んでおきながらしどろもどろになる。

「…まあ、お嬢…あんまりワガママとか言わないんで、それくらいならお安い御用です。」ニッと笑うアシュクロフ。

あ゛っ…その顔は心臓に悪い…ッ これから私大丈夫なのかな……


「あ、えと…じゃあ、これからよろしく、ね?」とガチの告白した訳でもないのに恥ずかしくなったがアシュクロフは「こちらこそよろしくお願いします。」となんでもないような顔で言うのがなんかむかつく…!


「それで具体的には何したらいいんですか?というかもう学園通うのですからこれから忙しくなるのでは?」

「あー……そう、ね……」魔法学園への入学はもうすぐだ。

「──まずはお父様たちに説明して…」他は何をしたらいいのだろう?

「旦那様たちへは俺から説明しましょうか。」

「えっ、いいの?」「というかお嬢だと巧く説明出来ないでしょう?」

うっ……痛いところを突かれる。そう、昔から説明が苦手なのだ。

「あと嘘をつけない。」「うぐっ……」ふっ、と笑われるのが悔しい。

「じゃ、じゃあお願いする…わ…」「わかりました。…と、そろそろ時間ですね」

計ったかのように扉が叩かれ、返事をするとティアナが顔をのぞかせお風呂ですと告げられたので「じゃあよろしくね。」とアシュクロフに声をかけお風呂に行く事にした。


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