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失恋戦士〜ステータスが、失恋の回数の累乗強くなる  作者: キサラキ
第2章 一年編〜水瓶座の刺客
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水瓶座の男、戦いの終わり

ヒイラギは、地面に降り立ち、静かに相手を見据える。

魔獣は、体についた土埃を払う。


「クハ……クハハ……クハハ、クハハハハハハ!いいな、小僧!よもや、あのような形で、攻撃が飛んでくるとは思わなんだ。しかし、しょぼいな。あぁ、貴様らは学生だったけか、それもまだまだ何も学んでいない。ならば仕方がないかもしれんな」

「ああ、俺はまだ、何もできないよ。だから、教えてくれないか」

「何をだ?」

「どうやったら、お前に勝てるのか」

「そんな方法はない」

「そうか……ありがとう。じゃあ」


ヒイラギは、体の周りにいくつもの魔法の球を浮かべる。


「精一杯、足止めさせてもらう」

「いいだろう、楽しませろよ、小僧」


とは、言ったものの、どうしたものだろうか。

チマリに、やられたのだろう、右腕が焼けただれている。

片腕がないことは、だいぶこちらに有利に働きそうな気がするが、その状況でも、チマリはやられてマキナが撤退していた。

チートスキルを持ったあのマキナが、撤退したのだ。

一般的なステータスしか持たない俺がどう戦おうか……。


考えていると、魔獣の、姿が突然消えた。

理由はわからないが、消えたという事実があればそれでいい。

どちらにせよ、あいつは俺に向かってくるはずだ。


ならば、魔法の矢で対処するだけだ。

雷の属性を乗っけた魔法の矢を高速で、体の周りに周回させる。


感じろ、魔法の矢は、俺の一部だ。

感じろ、感じろ。


ビリッ


きた!


魔法の矢の雷が、魔獣の接近を察知した。


舐めたもんだな、正面から来るなんて。


マキナから預かった剣を、そこにいるであろう、魔獣の左腕に振り下ろす。


「ぬっ……」


腕の半分ほどまで刺さったが、それ以上進まない。

魔獣は驚き、一瞬止まったが再び俺にさっきを放つ。


剣が抜けない。

くそ、一旦退避。

周りの矢を、魔獣に当てて、俺は一旦後ろに退避。


その間に、いくつも魔法の矢を量産し、束ねていく。


今のままでは、決定打に欠ける。


「小僧、貴様も、ワシを感知するか。さすが、転生者、なだけあるな」

「そんなに何度も感知されるのに、消えてる間のガードがおざなりすぎるんじゃないか……え、おい、お前、今なんて」

「さあてな」


魔獣は、腕に刺さった剣を抜き、捨てる。


「これは、先ほどの小僧の剣だな。友情、とやらか?人間は軟弱だな」

「それより、お前転生者って!」

「……クハ」


ニヤリと笑いながら、魔獣が駆け出す。

俺は牽制するように、細い矢を一本放つ。

魔獣ではなく、魔獣の横を通り抜けるように。


一撃は、食らってやる。

これをなんとか、耐えるんだ。


魔獣の爪と、自分の体との間に束ねた魔法の矢を挟む。


「ぐっ……!」


爪が多少刺さるが、致命的ではない。

それ以上に身体に走るショックがでかい。


ヒイラギの体が、勢いに任せて飛んでいく。


地面を何度か跳ねるが、魔法の矢を作り、クッションにし、止まる。


ヒイラギは、苦痛に顔を歪めながらも、口角を上げる。


「どうだ!」

「むっ……!」


空に、魔獣の腕が舞う。


ヒイラギは、牽制するようにはなった、魔法の矢をマキナの剣に結びつけていた。


結びつけた剣を、引き寄せて、魔獣がヒイラギを殴る瞬間に先ほどの切り口に、再び剣を引っ掛けた。


ヒイラギは、魔法の矢を引っ張る自分の力に、魔獣からうけた衝撃を重ね、吹っ飛びながら魔獣の腕を切り落とした。


「……ハハ、クハ、クハハハハハハ!」

「ハァ、ハァ……ウッ」


ヒイラギの口元から、血が溢れる。


くそ、あんだけ矢を束ねて防いでも、この威力かよ。

だが、これで両手を使えなくした。

これでだいぶ楽になる。


「やるなぁ、小僧。魔法をそこまで器用に操るとは思わないわ。フン、いいなぁ。楽しいなぁ……燃えてきたわい」


魔獣は、切断された部分を、掲げ、そこに魔力を込める。

すると、なくなったはずの腕が、再び生えてきた。


「はぁっ?」

「ワシは魔法は使えないが、まあ、魔力はある。そして、魔力を込めれば身体の部位欠損ですらも、修復できるのだ。魔獣たる特権だな。もちろん、こちらの腕もな」


そういうと、魔獣はチマリに焼かれた腕を自分で切り落とし、再生させた。


「嘘だろ……」


やばい、これは、絶望的だ。

ダメージ覚悟で、勝負を決めたと思ったのに、まったく、戦局に動きを持たせられなかった。

むしろ、俺の方が圧倒的不利に陥っている。


「さあ、もう一度やろうか、転生者の小僧!」

「いや、もう時間切れだ、グリモアのおっさん」


どこからか、突然声が聞こえた。


「む……ハァ、時間切れだそうだ」

「どういうことだよ」

「貴様の粘り勝ち、ということだよ」


突然、魔獣の隣に、人一人が通れるほどの穴が開いて、中から、出て来るものがいた。


「なんだよ、グリモアのおっさん、見てたぜ?両腕をやられてんじゃねえか」

「ちいとばかし、面白くてな、この転生者が」

「ん?へー、お前が転生者なのか」


穴から出てきたやつは、人間だった。


それも、ヒイラギと同年代の少年。


「よお!同郷の者よ!」

「……お前は、まさか」

「ああ、転生者だよ」

「なんで、魔物側についてるんだよ」

「そんなの、俺の自由だろ?」


こいつは、さきほど穴を開いてそこから出てきた。

それに、元々、この事態は結界の中に突然起きた。

つまりだ。


「お前のスキルは、ワープゲートか」

「ごめいとー。俺のスキルは穴と穴を繋ぐんだ」


ーーこんな風にさ。


その声は、ヒイラギの背後から聞こえた。


ヒイラギは、反射的にそこに魔法の矢をぶつける。

しかし、それは空を切った。


「どう?すげえっしょ?俺のスキル」


厄介な奴が、魔物側についてしまった。

くそ、なんで、こんな奴に、便利な能力が……。


「まっ、もう撤退の時間なんで俺たちは帰るわ」

「おぉ、それじゃ。なぜ、撤退が早まったんだ?まだ時間はあったはずだろ」

「あー、お前以外の魔物、もう、ほとんど全滅状態だし、生徒たちは速攻で逃げちゃったから。それに、あんま深入りすんなって言われてるしさ。まあ、ノルマも果たしたしね。けど、全然被害者を出せなかったわ」

「なるほどな」

「てことで、じゃあ、またな。転生者のヒイラギくん」

「お前!まさか、この学園のデータを!」

「派手な動きで陽動して、俺はスキルを活かした個人活動。素晴らしいだろ?」


転生者は、再び、ゲートを開き、そこに足を踏み入れる。


「今回は運が良かったな、失恋戦士のヒイラギくん。あと一歩で、お前は死ぬとこだった。お前のスキルは、ここで死ぬには惜しい。次会うときを楽しみにしてるぞ」

「待て!」

「おお、そうだ。先制布告的な感じで、名乗っとくわ」


転生者は、恭しく一礼し、


「俺は、魔王軍の24の幹部の一人、水瓶座のグラジラ。前世の名前は捨てた。以後お見知り置きを」


そう言って、グラジラとグリモアは消え、


一連の騒動は幕を閉じた。


少なくない、犠牲を残しながら。

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