マキナと、チマリと……後編
お久しぶりです。
夏が終わると、なかなか忙しいですね。
火炎のスキルを用いて、敵を燃やす。
ただの炎では燃えないので、ちょっとした工夫を施す。
炎を、いくらか束ねて矢の形にして射抜く。
背後から、奇襲を仕掛けてきた奴や周りを囲んでいた奴らを、空流のスキルで、吹っ飛ばす。
その隙に、剣を抜き、加熱する。
ただ、炎を纏わせるのではなく、手間はかかるか剣の炎の耐性をあげないことで、純粋に熱を与えるのだ。
肉を切るのなら、やはり刃物だろう。
さあ、死に晒せ。
スキル、貴方と私。共有対象はザック先生。
スキル、身体強化レベル2発動。
大地を踏み抜く。
まず一体、一瞬のうちに斬りふせる。
視線の先にいる奴から、順に切る。
一振りで、三体のグレムリンの首を跳ねる。
跳ねた首を蹴り飛ばし、他のグレムリンにぶつけ牽制。
グレムリンから爪を引っこ抜き、投擲。
それは、グレムリンの首に突き刺さり絶やす。
剣の先に魔力を貯める。
その間、剣はふるえないので肉弾戦に入る。
ザック先生の力を手に入れた、俺の拳はグレムリンの体を容易に砕く。
グレムリンの頭を掴み、地面に叩きつける。
耐性を崩したので、そのまま回転し蹴りをぶつける。
休むことなく壊し続ける。
剣の先の魔力が溜まった。
グレムリンから一時距離を置く。
そして、腰を落とし剣に十全に力を伝えるようにして、横薙ぎに振るう。
すると、そこから魔力の巨大な刃が飛んでいった。
その刃は、直線距離にいたグレムリンをかたっぱしから真っ二つにしていく。
「ははは、もろいな」
再び、蹂躙を始めようとした。
しかし、先ほどの一撃が負担になったのか、腕が痺れて動かない。
その隙をついて、襲ってくる奴がいた。
だが、その爪は俺に届くことはなく、焼けただれた。
「マキナさん、油断は禁物ですよ」
チマリが、助けてくれたからだ。
チマリの火炎は、やはり生涯付き合っているものだけあり俺のものとは練度が違う。
操った炎は一撃必殺の名にふさわしく、相手を燃やしつくす。
「ありがとう。チマリの炎は凄いな」
「そうでしょうか。まあ、これくらいの相手なら燃やすことなんて容易いですよ」
「俺じゃ燃やせなかったよ」
「それは、炎に対する理解が甘いからですよ。今度、みっちり叩き込んであげます」
「楽しみにしてるよ」
「それよりも、今は……この集団のボスのお出ましのようですね」
「ああ」
俺とチマリの前に、ひときわ体の大きいグレムリンが現れた。
「あれは、おそらく魔獣です」
「魔獣?」
「魔物の一段上に位置する存在です。その上には魔人などが、存在するのですが。魔獣でも、十分驚異的です」
「なるほどね」
「どうします、退きますか?」
「そんなわけないだろ。殺すさ、あいつも」
「そうですか。では、マキナさんは前衛をお願いします。私は、後方から支援します」
「ああ」
俺とチマリが、構えると、魔獣が口を開いた。
「作戦会議は終わったか?」
「えっ!」
「喋るのか、魔獣って」
「知りませんよそんなの」
「一言に魔獣といっても、いろいろな奴がいる。ワシのような高齢の魔獣にもなると、しゃべりもする」
魔獣は、目をギラリと光らせる。
「して、貴様ら。敵を前にして随分と長くおしゃべりをしたな……舐められたものだ。ワシじゃなければ、殺していたぞ」
「はっ!襲いたければ、襲えや良かったじゃないか!たとえそうしたとしても、殺せてはいなかった」
「戯言を……」
そう呟くと、魔獣はこちらに迫ってきた。
大丈夫、目で追える。
魔獣を、斬りつけようとした瞬間。
目の前から姿を消した。
「なっ!どこいった!」
「マキナさん!跳んでください!」
チマリに言われて、俺は跳躍する。
跳んですぐに、地面が割れて魔獣が現れた。
「そこにいたか!」
先ほどよりも軽く、魔力を込めて剣を振るう。
しかし、それは魔獣の爪に振り払われた。
そして、また姿を消した。
「どういうことだよ!」
「右斜め上です!」
「ほう、偶然ではないようだな」
魔獣は、チマリの入った方向から姿をあらわす。
振り下ろされた爪はなんとか相殺する。
「そこの少女。貴様、良いな。どうやって感知している……ああ、炎の揺らめきか。なるほど。それに比べて貴様」
魔獣が俺を指差す。
「動きが単調でつまらん。体のレベルは高いのに、技術がそれに伴っていない。肉体強化系のスキルといったところか?いや、先ほどまでの戦いぶりを見るに、様々なスキルを使うようだな。だが、どのスキルも熟練度が足りていなさすぎて、話にならん」
「黙れ!!」
斬り付けるも、受け止められる。
魔獣はニヤリと笑いながら続けた。
「焦りか?戦場で冷静さを欠けば死ぬだけだぞ?」
「うるさい!」
「何をそんなに焦る。意思なき刃にやられてやれるほど、ワシは甘くないぞ」
「グッッッ!」
魔獣に振り払われて、地面に叩きつけられる。
「クハハ……貴様はそこで見ていろ。ワシが、そこの少女を殺す瞬間を」
そういって、瞬きをするよりも早く、魔獣はチマリの前に移動し、その爪で……
チマリを切りつけた。
ゆっくりと倒れ崩れるチマリ。
この瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「やはり、厄介であったなこの少女は。切り裂いた瞬間に、腕を一本ダメにされてしまったわ」
「おい……」
「なんだ?」
「チマリは、生きてるか?」
「さあ?生きていたとしても、この出血では、時期に死ぬのではないか?」
「そうか、じゃあ」
俺はゆっくりと立ち上がり、剣を構える。
「返してもらうぞ!」
「良い覇気ではないか、小僧!」
俺は、魔獣と斬り合った。
先ほどのように、吹き飛ばされぬように、何合も斬り合う。
魔獣を蹴り抜き、一度距離を取る。
そして、再三、剣の先に魔力を込める。
「まだ懲りぬか!そんなザッパな攻撃が通ると思うなよ!」
魔獣が、姿を消す。
それを待っていた。
さっき、チマリはこいつを感知した。
そして、こいつはそれは炎によるものだといった。
ならば、俺も火炎を使えば、感知ができる。
体を包んでいた、ザックのステータスを捨てて、炎を纏う。
この状態では、とても、あいつの爪は受けられない。
けれど、あいつの場所はわかる。
また、俺の死角にいる。
その位置は、チマリの対角線上。
上出来だ。
俺は、チマリの放った周りに散らばる炎たちをできる限り体に集めながら、それを噴射する。
噴射した炎は、あいつを吹き飛ばす。
俺では燃やすことはできないけれど、あいつを吹っ飛ばすことくらいはできる。
そして、その勢いで、チマリの元へ飛び、チマリを抱える。
「俺にはお前を倒せない!だけど、チマリを助けることはできる!」
そして、俺はチマリと一緒に、炎の中から飛び出した。
何を焦っていたのだろうか。
大人しく、退いておけば良かったのだ。
そうしたら、チマリを傷つけることはなかった。
俺は愚かだ。
でも、友達を越えるために、友達の命を捨てるほど、愚かじゃない。
ヒイラギに勝つのは、今じゃなくて良いんだ。
いつかでいい。
いつか、超えられればいい。
その時に、それを笑って讃えてくれる、友達が俺にいるのだから。
チマリを抱えて、可能な限り早く飛んだ。
だが、後ろからあいつは追いかけてきた。
「クハハハハハ!いいぞ小僧!勝てないのならば尻尾を巻いて、惨めに逃げる!それもまた、強さだ!だが!ワシから逃げ切れるかな!」
翼を広げて、迫ってくるそれに、俺は追いつかれそうになった。
だが、その時、俺は、空をかける一筋の光を見た。
「ははは……やっぱかっこいいな、ヒイラギは」
矢は、魔獣を押し飛ばした。
そして、ヒイラギが、新しく小さな魔法の矢を作り、俺の隣に浮かぶ。
「遅くなってごめん」
「いや、ベストタイミングだよ。あと、任せてもいいか?」
「ああ。チマリはさっきのステージに連れて行け、生徒会長に頼めば、きっとなんとかなる」
「分かった」
「じゃあ、俺は行くよ」
「ちょっと待て。これを持って行ってくれ」
俺の剣をヒイラギに渡す。
「それで、俺の分までぶった切ってきてくれ」
「分かった」
そして、ヒイラギは魔獣のいる方へ、俺は、生徒会長のいる方へと、急いだ。




