生徒会長、願いの姫
そんなわけで、やっとの思いで放課後です。
そんなわけとは、エリザ先生にあの後全授業過程を吹っ飛ばして、説教をされました。
剣術とか薬学とか色々あったのに、全てです。
反省したよ、俺は。
もう自習中にあんなことしないって。
もう、エリザ先生には逆らわないって。
でも、エリザ先生ずっとキレてたけど後半の方は、ちゃんと指導してくれた。
エリザ先生の話を一部抜粋。
「私はな、ヒイラギ、お前に期待しているのだよ」
「期待ですか」
「そうさ。言ったよな、全ての基礎は魔法の矢だと。お前は魔法の矢だけで見たら、私よりも優れているのだ」
「え!そうなんですか」
「ああ。私も若い頃はやはり派手な魔法を好んで使って、基礎である魔法の矢はバカにしていたよ。重要さに気づいた時にはもう遅かった。魔法の矢のセンスは、歳をとってからでは伸びが悪い。それでも、修練したからそんじゃそこらの生徒には負けないぞ。それだけにな、お前を見ていると、自分がどれほど甘えていたのかを認めざるを得ないのだ」
「あの、俺、魔法の矢しか使えなかっただけなんですけど」
「それを知った上でだ。スキルのことは親御さんを通じて、学園側にちゃんと伝わっている。ずっと、ステータスが1だったのだろう。ずっと、どんなスキルなのかも分からなかったのだろう。そんな暗闇の中をお前は、諦めずに光を探して、そして、あれほどの魔法の矢を手に入れたのだ。そんな中でついに、それが輝くときがきた。そうしたら、力をひけらかしたくなる気持ちも十分にわかる。でもな、ヒイラギ……」
「先生……」
「授業中に!教室で!あれほどの規模の魔法を、使うやつがあるか!」
以下、説教。
前言を撤回します。全然これ、まだ中盤だった、こっからがまた長い説教だった。
先生の話を聞いて、俺は思った。
後一回フラれたら、俺は失恋戦士の力で格段に強くなる。
そのとき、俺は今のように魔法を楽しんだり、模擬戦を楽しんだりすることができるのだろうか。
失恋戦士は、強すぎる。
条件こそ厳しいものの、そのリターンの大きさはとてつもない。
圧倒的な強さを手に入れたとき、人はどうなるのか。
それが不安でならない。
でも、いつかは手に入れなければならないのだ。
でなければ、ただの1を絶対下回らないスキルとなる。
それの方が、よっぽど気が楽なのだけれども。
失恋戦士、こんなスキルを与えるほど、魔王は強いのだろうか。
近いうちに、マキナと話し合いたい。
来たるべき時についての話を。
はい、そんなわけで放課後です。これ言うの2回目ですね。はい、さっきも言いました。
気分転換的な意味でもう一度言いました。
大事だよね、気持ちの切り替えは。
昨日考えたとおり、今日は本格的な部活動見学です。
前回はデモンストレーションだったから、今回はちゃんと、活動風景を見ます。
まずは、騎士道部でも見るか。
マキナを見るためだよ!決してタンポポのためじゃないよ!
まあ、タンポポの頑張る姿はとても見たいけど。すごく見たいけど!
よし、ダッシュだ!
騎士道部は、訓練場Aで活動を行なっている。
訓練場はAからZまであり、その一つ一つが広大な面積を誇り、様々な用途での訓練ができるようそれぞれに特徴がある。
Aは、一番シンプルな訓練場だ。
訓練場Aにつくと、さっそく、騎士道部の声が聞こえてくる。
「かかって来いやオラァァ!」
「んだとコラ!舐めた口聞いてんなよ小僧が!」
「舐めてねえよ!三下が!」
「んな口は、俺に勝ってからきくんだな!」
「ッサコーイ!」
「エーイ!」
「エィーチ!」
「ヌィー!」
「エ!ッサーン!」
「そこ力抜くんじゃねえ!ハッ飛ばされてえのか!」
「抜いてねえわ!てめえの目は節穴か!」
あー、うん。
騎士道って何って感じだねもう。
とてもじゃないけど、こことは合わないわ。
タンポポの姿が見えないのが残念だけど、きっとあれを見て入部を諦めたんじゃないかな。
よし、移動だ。
次はどこに行こうかな。
ヒイラギがそう考えていると、突然ヒイラギは声をかけられた。
誰の気配も、感じていなかったはずなのに、その人はいた。
「ねえねえそこの、失恋戦士、次はどこに行くのですか」
ヒイラギが、驚き、跳びのきながら振り向くと、そこには……絶世の美女がいた。
ヒイラギの好みはもちろん、タンポポであるし、タンポポも素晴らしく美しいのだが、その人は次元が違った。
それは、恋愛感情すら持つことがおこがましくなるような、圧倒的なオーラ。
そばにいるだけで、体の奥底から力が湧き出てくるような、神々しさを、その人は持っていた。
にも関わらず。ヒイラギは気づかなかったのだ。
「どうして、俺のスキルを?」
その人は、妖艶な笑みを浮かべる。
「さあ、どうしてでしょう」
「俺に、何の用ですか?」
「用、ですか。部活を見学しているようなので、先輩の私が案内でもしてあげようかと思いまして。これで、答えになってますかね?」
「ええ、まあ。でも、なんで俺に」
「たまたま、目に止まったからですよ。入試で満点を取った、失恋すればするほど強くなる、あなたのことが」
この人はやばい、警戒しなければ。
そう、思っているのに。
なぜが、敵意を向けられない。
「部活動案内をするだけですよ。あと、そんなにじっと見つめられると、流石の私も照れます」
「あ、すいません」
「冗談ですよ。見られれのは慣れてますから。ああ、申し遅れました」
その人は、ゆっくりとした動作で、一礼し、告げる。
「私の名前はジーナ。この学園の、生徒会長です。ほら、これで君の疑問も解決ですよ。生徒会長たるもの、全生徒の情報を網羅しているものですから」
「……それはおかしくないですか」
「いえいえ、それほどでも」
ジーナさんは、謎の間を作り、謎のペースで話す。その話し方が、どうにも、人を惹きつける。
これが、生徒会長。学園7500人の頂点に立つもの。
「そう、私は7500人の頂点なんです。肩書きだけでなく、実力も」
「生徒会長とは、そういうものなんですか」
「はい、あらゆる面で学園のトップに立つものこそが生徒会長です。まだ、三年生ですがね」
「え……この学園、五年までありますよね」
「はい、生徒会にも五年生の先輩はいらっしゃりますよ。それでも、私が最強です。良かったですね、あなたのとりあえずの目標ができて。強くなりたいのなら、私を超えなさい。もっとも、あと一回フラれれば、力だけなら超えられますけどね。それでも、負けないのが私ですが」
ジーナさんは、相変わらず独特にくすくすと笑う。
「あなたが、どうしようもなくなったら、私があなたを止めてあげましょう。それが生徒会長の私の役目です」
「……それは、どうも」
「もう!なんですか!さっきからそんなにかしこまっちゃって、もっと肩の力を抜いてください」
言われた瞬間に、肩の力がストンと抜けて、気が楽になった。
どういう原理なんだ、カリスマだけでは話がつかない。
スキルか?
「まあ、スキルという面もあるかもしれませんね。でも、それを含めて私ですから」
また、くすくすと笑う。
「じゃあ、行きましょうか。部活動を案内しますよ。迷っている子羊を救うのも生徒会長の務めですよ。ヒイラギ君」
そう言って、ジーナさんは歩みを進めた。
俺はジーナさんの案内のもと、様々な部活を見て回った。
陸上競技部、弓道部、総合武術部、双剣部、登山部、魔道工学部、魔道科学部、魔生物部、薬剤研究部、回復魔道部、カミナリ大好き同好会、属性魔法部、等々。
このように様々な部活を回ったが、やはりピンと来るものはなかった。強いていうならば、魔道工学部だが。やはり、微妙。
「はいはい!ここが眷属魔法部だよー、ヒイラギ君のお友達のチマリちゃんがいるところだね」
「本当、なんでも知ってますね」
「生徒会長ですから!あっ、眷属魔法部は気をつけて、こう見えて一番のトラブルメイカーなんだ」
と、いうやいなや。
眷属魔法部の研究室のドアをぶち破って、一匹の水の竜人が走ってきた。
「グェェェェ!」
「もう、ダメでしょ。学校の器物を壊しちゃ、メ!するよ?」
そう言って、ジーナさんはほんわかしたオーラを、凶悪なオーラに一変させる。
竜人は、足を止め、ジーナさんに跪いた。
直接当てられていない、俺ですら冷や汗と足の震えが止まらないのだ。
竜人は、その比ではないだろう。
「あー!このオーラ、やはりと思ったら、会長でしたか」
言いながら、のんびりと白衣姿の男釜歩いて来る。
「テレスー、何度言えばわかるの?」
常習犯なんだ。
「研究室のドアはもっと頑丈に補強しなって、いつも言ってるじゃん。あれだったら、私がやっちゃおうか?」
「そんな、とんでもない。生徒会に貸しを作ったら、どんなことになるかわかったもんじゃないよ。まあまあ、こうしてリュートも反省してるようだし、被害が大きくなる前に会長が捕まえてくれたんだから。今回はお咎めなしってことで」
「まー、今回はだよ。次、リュート君が暴れてるのを見かけたら……リュート君のこと貰っちゃうから」
「そんな、眷属を奪うなんてできるわけが」
「私に、不可能はないんだよ?忘れたのかな?この前、ケルック先生から勝手にコンパスを借りて、あまつさえ、返す時には磁場を逆転させるイタズラまで仕込んだ、テレス君?」
ケルック先生を迷わせた犯人あんたかよ!
あの先生と災難だな。
「以後気をつけます!それでは!」
「あー、待ちなよ、これから研究室にもどって仲間にグチグチと私の愚痴をのたまおうとしているテレス君」
「……なんでしょうか?」
「今日はね!部活動見学の子をつれてきたんだよ!」
「え?……ああ」
なにその反応!
どの部に行っても、ジーナさんがそういうと、みんなそんな反応するんだけど!
どういう反応なのそれは!
「まあ、じゃあ、どうぞ。大したことはやってないけど」
「ありがとうございます」
「ありがとねー、テレスー」
研究室は、他の研究室よりもいくらか狭く感じた。
中に入ると、チマリが気づき、こちらに駆け寄って来る。
「やっときましたね、ヒイラギさん。いい部はありましたか?」
「全然」
「それは残念です。まあ、この部も多分お眼鏡には敵わないでしょうが、楽しんでってください」
「ありがとう」
ジーナさんは、部長らしき先ほどのテレスさんとなにやら話し込んでいる。決して脅しているわけではない。
なので、部の案内は、チマリに頼むことにした。
「分かりました!といっても、見たとおりです。各々が自由に眷属を作る魔法陣を改良しては、実験しているだけですね」
「どうなんだそれは?」
「まあ、上級生の魔法陣は参考になります。それに、過去のデータをまとめた実験資料もあって、なかなかに過ごしやすいですよ」
そこまで話すと、チマリは俺の耳元で小さな声で話す。
チマリの高さに耳を合わせるのは、とても腰が辛かった。
「ここだけの話。やはり、チマリの作った自分で進化するヒノスケは前代未聞の天才的な魔導だったっぽいです。秘密ですよ!タイミングを計ってるんですから」
チマリは、とても楽しそうだ。
そういえば、ヒノスケの姿が見えない。
「ヒノスケは?」
「忘れました」
「忘れました?」
「はい、寮に」
「どういうこと?」
「寮で出したまんま寝かせといたんですよ、そしたら魔法を消すのを忘れまして、今寮に取り残されてる状態なんです」
「遠隔では消せないんだ」
「はい、遠隔でも眷属のつながりでコンタクトは取れるんですが、消すときは直接触れなければいけないんです。まあ、魔力に影響はないんで、そちらの方が本来無駄がなくて済むのですが」
「眷属魔法って、実際のところどんな魔法なの?」
「えっと、眷属するといえばそれで終わりなんですが。手順としては、魔法陣を組んで魔法を発動し魔導生物を作ります。それで満足のいく生物ができたら、眷属契約ってことで、魔法陣に遠隔通信の術式やその他、主従関係の云々、などを書き込んだら完成です。それ以降は、魔導生物も眷属として言う事を聞くし、記憶を引き継ぎます。生物魔法との違いはそこですね。生物魔法は、動物をただ放つだけですが、眷属魔法は動物とともに戦います!」
「なるほどな。そしたら、さっきのリュート君の難易度ってどのくらいなんだ」
「超高レベルです。眷属魔法なんて基本的には郵便なんかにしか使われない技術なんですが、あれほどの魔法ですとそのまま闘いにも投下できるので、非常に高レベルです。まあもっとも、チマリのヒノスケもじきにそうなりますが」
「俺も、やってみたいな」
「部に入りますか?」
「それはいいや、あの部長頼りないし」
「それは確かに」
「だから、こんどチマリが教えてくれよ」
「……しょ、しょうがないですね!チマリが直々に教えてあげますよ!この天才チマリが!」
「ありがとう」
「いえいえ」
チマリはニッコリと笑いながら、快諾してくれた。
どうやら、頼み事をされるのが嬉しい様子。
「部活このくらいだけど、気に入ったのはあった?」
眷属魔法部を後にすると、ジーナさんが尋ねてくる。
「なかったですね。やっぱり、部活は入らなくていいかな」
「ダメだよ。まだ一つだけ見てない部活がある」
「どこですか?」
「生徒会執行部」
「ああ、部活の扱いなんですね」
「そうだよ。てか、もともと私はその勧誘に来たんだよ」
生徒会執行部か、活動次第では入ってもいいかもしれない。
この会長のもとで学べるのならば、俺は確実に強くなれる、そんな確信があった。
「生徒会執行部は、各学年の入試一位を基本的に誘うことになってるんだ。その子に、どうしても入りたい部活がない限りね。それで、君にははいりたい部活がない様子、これはもう入るしかない!と!」
「じゃあ、見学に行きましょうか」
「ちなみに!眷属魔法部を出る時点で、先生に連絡して君の所属はすでに生徒会執行部になっている!」
「え?……俺の許可は?」
「私のしたいことに、拒否権があるとでも?入試の日から、告白して大玉砕したヒイラギ君。入寮の日に、その子に再開して嫌われちゃったヒイラギ君。最近仲良くなれそうで、つい浮かれてエリザ先生に絞られたヒイラギ君」
そこで一度黙り、改まって口を開く。
「転生者のヒイラギ君」
その瞬間、世界から音がなくなったかのような心地がした。
「どこでそれを?」
「私は、会長だから、じゃダメ?」
「はい」
「そっか、じゃあ、私がこの国のお姫様だから、だったらいいかな?」
「え?」
「私の名前は、ジーナ・マグナイツ。100人のうちの一人が国に協力的でね、情報を携えて、ある日やって来たんだよ。それで転生者の存在を知った」
「ですが!」
「うん、君をそれと見極めた理由にはならないね。それは、私のスキル。マグナイツ王家に引き継がれるスキルは、願えば叶う、それだけのスキル」
願えば叶う、規格外すぎる。
これが、王家なのか。
「さあ、生徒会に入る気になったよね?」
「……あー、もう!分かりましたよ。俺にも、あなたといるほうがメリットがあるようです」
「もっと素直に、私と一緒にいたい、って言いなよ、ヒイラギ君」
「俺は、タンポポが好きなので」
「失恋戦士のくせに。まあ安心して、スキルでも魔法でもなんでも、望めば、私が叶えてあげるから。来たるべき時に向けて、一緒に強くなろうね」
こうして、俺の部活は生徒会執行部に決まった。
ーステータスカードー
[名前]
ジーナ・マグナイツ
[能力]
体力……100000
力……100000
魔力……100000
俊敏性……80000
耐久力……82000
魔法耐久力……75000
[スキル]
威光……あらゆる物を従え、その力を引き上げる
マグナイツ……願いの力に見合う恩恵を授ける




