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失恋戦士〜ステータスが、失恋の回数の累乗強くなる  作者: キサラキ
第2章 一年編〜水瓶座の刺客
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咲き誇れ!氷漬け!

翌日になり、今日もタンポポと魔法の練習をする。


「無理!」


練習は難航している。


「どうして、そんな絶妙な威力の矢ばかり作るの!」

「絶妙も何も、威力1の単純な矢だよ」

「無理なんだってば」

「まずは魔力を抑えられるようにならないと」

「分かってるよー……どうやるの?」

「何度も言ってるけど、肩の力を抜いて矢を生成する、1にならなかったら、そこから魔力を放出して近づける。それだけ」

「出した矢から魔力を抜くなんて概念がわからないんだよ」

「抜くじゃなくて放出する」

「うー……こんな感じ?」


タンポポは、特大の魔法の矢を作り、そこから少しずつ魔力を放出していく。

しかし、放出された魔力が、攻撃となってヒイラギに降り注ぐ。

ヒイラギは、同じ威力で相殺しているのでなにも害ではない。

が、他のクラスメイトはそれを見て、悉く苦笑いを浮かべていた。


「そう!そんな感じ!」


「どんな感じだよ!」と、多くの人が心の中で叫ぶ。

チマリは「あんな方法が……」と呟く。


「よし、そのまま減らし続けろ、1になるまで減らし続けるんだ……そう、いいぞ、その調子」


だんだんと、魔法の矢が縮み、やがて小さな矢となる。


「できた!できたよヒイラギ!」

「できたな!タンポポ!その感覚を覚えるんだ、それが基準となる1だ」


クラスメイトは、呆れを通り越して、ヒイラギ流のレッスンを参考にし始める。

やがて、全員の手の上には1の矢が浮かんでいた。


「よし、次は最初から1を出すつもりで」

「やってみる」


タンポポは小さな矢を浮かべるが、先ほどと比べればやや大きい。


「おー!近づいてる近づいてる!また、少しずつ魔力を放出させて、1に近づける。完全に1を出せるようになるまではその繰り返しだ」


クラスメイトの多くは、二度目の挑戦ですでに1を出せるようになっていた。ベスト30は伊達じゃない。

しかし、タンポポは何度やってもできるようにならないでいた。魔力コントロールのセンスがよっぽどないのだ。


「あっ、そうだ。さっきの魔力放出はこういうこともできるんだ」


ヒイラギは、手の中に特大の魔法の矢を浮かべる。

そして、先ほどのタンポポのように魔力を放出する。

その際、魔力を矢として放出し指向性を持たせたことが、タンポポとの違い。

放出された矢は、様々な軌道を描いては互いにぶつかり合い消滅していく。


「まあ、ただの魔法の矢とは変わらないんだけど、こっちのほうが発動スピードが若干早いかな」

「なにそれ、すごい!私もできるようになるかな」

「練習すればできるようになるはずだよ」

「もっと見せて!他にも何かバージョンがあるの?」

「もちろん」


ヒイラギは、タンポポにせがまれて、浮かれていた。


だから、持てる限りの技術の魔法を披露した。


まず、先と同様に特大の魔法の矢を浮かべ、そこから魔法の矢を放出し様々な軌道を描く。

そして、だんだんと、変化をつける。

放たれる魔力の矢の色がそれぞれ違う。

赤や黄色、青など属性が込められた多種多様な魔法の矢が教室を飛び交う。

それだけでは止まらない、入試で披露したようなねじれながらの軌道も披露する。

異なる色同士が交互に目に入り、とても、幻想的な光景。


やがて、ヒイラギの手もとの魔法の矢の大きさが半分になる頃。


教室の対角線上に、大き目の魔法の矢が浮遊する。

そして、そこから先ほどと同様に魔法の矢が放たれ始める。


「コントロールになれれば、こんなこともできるんだよ。まだまだ、いくよ!」


やがて、手元を離れた大き目の魔法の矢が二つ三つと増え、手元を含めれば8個の魔法の矢が完成する。


人々が、次はなにが起こるんだと息を飲む中。


ゆっくりと、それぞれの魔法の矢が回転を始める。もちろん手元の矢もだ。

その矢は、加速しながら魔法の矢を放ち、吸収と放出を繰り返す。

もちろん、属性変化も交えながら。

本来、手元を離れた魔力には属性変化はできないが、その矢は先ほどあらかじめ属性をつけられたものであるため、あたかも属性を自由に変換しているかのように見える。


「これで締めだ!」


ヒイラギの調子は最高潮である。

交換を繰り返していた矢は一変、中心で相殺を繰り返す。

ポンっという音は数え切れないほど響き渡り、弾ける色鮮やかな光の粒は、見ようによっても光のタンポポにも見えなくもない。

もちろん、ヒイラギはタンポポをイメージしてやっている。


最後に、回転していた魔法の矢が8本全て同時に中心に放たれぶつかり合う。

誰もが、光に目が絡んだ。

ようやく目を開くと、そこには形を失った白い魔力がふわふわと漂う。


ヒイラギが、フッ、と息を吹きかけると。

魔力は教室全体に霧散した。

それはまるで、タンポポの綿毛のように。


「おーー!」

「さすが、入試一位!」

「魔法の実技唯一の満点!」

「魔法の矢を極めし男!」


などと口々にクラスメイトがさけび、クラスが大歓声に包まれる。


「どうだった?」


と、ヒイラギが得意げにタンポポの方を見ると、タンポポは顔を青ざめながら教室の入り口を指差していた。


その指の先には、今にも人を殺すのではないかと紛うほどの眼光で、ヒイラギを睨みつける、エリザの姿があった。


「エ、エリザ先生……」

「ヒイラギィ……貴様、自習の時間をなんだと心得ているぅ。あ?反省の意思があるなら、今すぐこちらにこい。いや、やはりいい。私も貴様のように魔法を一つ披露するとしよう」


その瞬間、エリザの姿が消え、次の瞬間にはヒイラギの姿も消えていた。

人々が慌てて周りを見渡すと、気づけばエリザは元いた位置に戻っていた。氷漬けになった、ヒイラギを携えて。


「ふむ、今の解説をするとだな。なに、単純なこと、雷の魔法で体を一時的に稲妻とかし、一瞬のうちにヒイラギを捉え、水魔法でヒイラギを包み、そこに極寒の冷気をぶつけただけだ。な?簡単だろ?コツは稲妻状態で触れるとただじゃ済まないから、相手に触れるかふれないかの瀬戸際で魔法を発動させることと、あらかじめ、起動設定をしておくことだな。こいつのように、マニュアル操作では限界があるのだよ。分かったな?貴様らにも、これくらいはできるようになってもらうからな、そのつもりで」


そう言い残して、エリザはドアをぴしゃりと閉め、ヒイラギを連れ去り教室を後にする。


残されたタンポポは、調子に乗りすぎたヒイラギに呆れつつも。未だ漂い続けていた、白い綿毛を手に取り、クスリと微笑んだ。


もちろん、マキナとチマリはニヤニヤと笑いながら、その様子を眺めていた。

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