相殺合戦、タンポポ娘が可愛すぎる!
マグナイツ学園の授業はフルスロットルで進んでいく。
「理論魔法と実践魔法の二つの科目を担当する、エリザ・ロンドだ。二つの科目を複合的に学ぶことで効率よく力を高めていこう。では、まずは隣の者とペアを組み魔法の矢を相殺してもらう。片方が出したら、もう片方がそれと同じ威力の魔法の矢を作り、ぶつけ合う、それだけだ。ぴったり相殺できると、ポンっ、という音がなるのがこれの特徴だ」
一人の生徒が手をあげる。
「エリザ先生、そんなのしてなんの意味があるんですか?」
「いい質問だ。全ての魔法の起源は、魔法の矢にある。魔法の矢をどれだけコントロールできるかでその者の実力がわかると言ってもいい。今からやることは、できるかできないかで諸君の魔法の道のこれからを大きく左右する。分ったなら、はじめろ」
隣の席ということなので、俺はタンポポさんとペアを組むことになる。
「よろしくね」
「結構です」
「えー……」
「入試ナンバーワンの実力を見せてもらいましょう。また、魔法で人に危害を加えるのだけはやめてくださいね」
そう言って、タンポポさんは数十秒の時間をかけて特大の魔法の矢を生成する。
おー、入試6位の実力は伊達じゃないな。
チマリやマキナとは魔力の質が違う。
確かに、魔法の矢はその人のことがわかる、名刺がわりの魔法なのかもしれないな。
「どうです、この威力の魔法を相殺できますか?」
まあ、なんてことはない。
スキルが目覚める前だったなら、大変だったが、今では純粋に同じ威力の魔法の矢を作るだけだ。
タンポポさんの魔法の矢を、えっと、威力1168くらい込められてるかな。これくらいなら、余裕。
ヒイラギは、コンマ数秒でどう威力の魔法の矢を生成し、相殺する。
綺麗に、ポンっ、と鳴り響いた。
「な!どういうこと?そんな小さな魔法の矢で、私の矢を相殺するなんて」
ヒイラギの作った魔法の矢は、威力こそ等しいものの、タンポポの魔法の矢よりも圧倒的に小さかった。
「あー、ジェラノールさんさ、もうちょっと魔法の矢は小さく魔力を圧縮するように作ったほうがいいよ。いまの矢はジェラノールさんの、最大火力なんだよね?でも、無駄が多いから、魔力の返還率が悪いよ。それに、生成までに時間かかってるし。多分、ジェラノールさんの魔力は1200くらいじゃないかな?」
タンポポさんは、唖然としていた。
「合ってる……私の魔力ステータスは1200。いまのだけでそこまで分かるものなの?」
「うん、おれ、7歳の頃から魔法の矢しか魔法は使ってなかったからね。魔法の矢のことなら自信がある」
正確には、魔法の矢、しかも威力1、しか使えなかっただけなのだが。
「……ちょっとは、見直したかも」
「それはよかった」
よっしゃ!好感度アップ!
「ほら、はやくヒイラギさんも作りなよ、魔法の矢」
「ああ、そうだった」
ヒイラギは、少し思案したのち、普通の人にとっては、一番コントロールが難しそうな威力1の魔法の矢を生成した。
「それくらいなら、余裕よ」
そう言って、タンポポさんは魔法の矢を生成し、おれの矢とぶつけ合う。
すると、タンポポさんの矢が俺の矢を消し去り、俺の顔に魔法の矢が直撃する。
ボンッ!!
おそらく、いまの矢は威力が300はあっただろう。
威力300といえば、俺が昔、岩を貫いた威力と一緒だ。
つまり……顔面がグロテスクなことになっていた。
昔の俺だったら。
いや、まじで昔の感覚でいたから死を覚悟したよ、うん。いや、昔でも1固定のおかげで多分死ななかったけれども。
魔力耐久値のおかげで、人間は岩なんかよりも何倍も頑丈にできている。
失恋戦士の発現により、ステータスが普通になったおかげで、俺もこの程度の矢では、死にはしない。
ただ、非常に、痛いことには変わりなかった。
俺は、痛みに悶絶する。
「え!えっと、ごめん!え、大丈夫かな?私、ちゃんと相殺したはずなのに。ほんとごめん」
どこに、1を相殺しようとしている300を放つ奴がいるか!
「痛てて……ねえ、もしかしてジェラノールさんって」
俺が言おうとしていることを察したのか、タンポポさんは目をそらす。
「魔法のコントロール、苦手?」
「言わないでよ……」
当たりのようだ。
この国の12貴族に入り、チート級のスキルをナチュラルスキル以外に一つもつ彼女が、6位に甘んじている理由は、魔法が苦手だからなようだ。
あれ?
そういえば、入試の時の初めてタンポポと出会った時も、スキルの調整を間違えて止まれなくなってなかったっけ?
もしかして
「魔法のコントロールだけじゃなくて、全体的に調整とか、繊細なことが苦手だったりする?ほら、入試の時も」
タンポポさんは、深々と頭を下げながら告げる。
「その節はどうも……私、実は……細かいことが苦手です!」
「だよね」
「むう……」
タンポポさんの弱点が発覚したところで、エリザ先生が話し始める。
「この最前列の、二人がいい例だったな。諸君も見てただろう。高度な魔法コントロールができれば、魔法の発言に時間はいらないし、見るだけでおおよその威力がわかる。一方、できなかったのならば、このように相手に危害を加えるかもしれない。大事さが身にしみただろう」
その言葉を受けて周りを見ると、クラス中が俺たちのことを見ていた。
マキナは、相変わらず爆笑しながら。
チマリは、負けません!、という言葉が聞こえてきそうな目で。
「それでだ。一学期最初のテストでは、この魔法の相殺を今のペアでやってもらう。ちなみに、それは一週間後だ。それまで、ペアで練習に励むように。今日は以上だ。あとの時間は練習に当てて構わない」
タンポポさんは、冷や汗をダラダラと流しながらこっちを見てくる。
「えっと、よろしくねジェラノールさん」
「こちらこそ、よろしく……ジェラノールさんって長いから、タンポポでいいよ」
「じゃあ、俺のこともヒイラギで構わないよ」
「分かった、ヒイラギ。一週間、どうか私に魔法のコントロールを教えてください!」
「喜んで、頑張ろうぜ!タンポポ」
ついに、タンポポとよろしくを交わすことができました!
三度目の正直だね!
これは、なかなかいい傾向だろ!
好感度アップしてるよね!
多分!
「えっと、さ。私も、魔法でヒイラギを傷つけたから……ヒイラギのこともう責められないね」
少しいじけながら、そう伝えるタンポポは、可愛かった。
タンポポを語る言葉は、可愛い以外に俺には思いつかない。
「これからよろしくね、ヒイラギ」




