魔法でビリビリ、タンポポがピリピリ
「それでですね、私はサバイバルをする上で……あぁ、もう王都ですか。いやあ、ヒイラギ君と話していると、王都までの時間があっという間だったよ」
ヒイラギにとってそれは永遠にも感じられる拷問の時間だった。話の内容がつまらない、何が言いたいのかが分からない、ここまでならヒイラギは許せたのだ。
しかし、どうしても許せないことがあったのだ。それは、ケリックがそこはかとなくウザイということだ。
笑い方、話し方、手の動かし方、あらゆる動作の全てがヒイラギにストレスに感じられた。
「じゃあ、私はこの辺で。君は寮までかい?」
「……はい」
「そうかい。寮は広いから迷わないようにね、私のように!それじゃあ、また!学園で会いましょう」
そう言って、ケリックは去っていった。
ヒイラギは、やっといなくなったかと心の荷を下ろした。
馬車に揺られること、数十分後、ヒイラギは学園の寮へと続く細道にたどり着いた。
馬車はこれ以上は進めないので、ここからは少し歩く。
ここまで乗せてくれた礼を告げて、馬車から荷物を下ろす。三人分。
さて、この荷物どうしてやろうか。
「おーい、ヒイラギー!」
「ヒイラギさん!」
俺の名前を呼ぶ声が、空から聞こえてきた。
それが二人の友人の声だと気付いた時には、ヒイラギはすでに魔法の矢の生成を始めていた。
魔力が1ではなくなったため、魔法の矢に属性変化をつけることが可能になったので、ここでそれも試してみるかと、雷の属性を軽く流し込む。
そして、魔法の矢を絡めて束ねて、最終的に6本用意した。
そして、空から降ってくるマキナとチマリにそれぞれ3本ずつ放つ。
1本の矢を、腹に当てて、どんどん空に打ち上げる。
その間に2本の矢を両手に巻きつけて、そして、体の後ろに引っ張りながら矢を束ねる。すると、魔法の矢はちょうど二人をしばりあげる形となった。もっとも、本来の魔法の矢はこんな使用法はしない。
縛るには縛るための魔法がある。
しかし、魔法の矢は全ての魔法の基礎となるため、あらゆる魔法の再現が魔法の矢で可能なのだ。
それをしないのは、魔法の矢を複雑に操作することが相当量の練習を必要とすることと、現在の魔法学の発達に起因する。
二人を空に打ち上げたら、流し込んでいた魔力を解放し、雷を流す。
マキナは
「なにこれどういう状況?あー、ビリビリする、ははは、めっちゃビリビリする!」
と、案外楽しそうな様子。
対してチマリは
「魔法の矢はこういう使い方するもんじゃねえですよ!はやく、下ろしてください!わっ、ビリビリしてきた!やめてください!ひっ、わっ、ちょっ、ぎゃー!」
と、途中から叫んでいた。
まあ、ヒイラギからは遠すぎて何を言っているのか全く聞こえないわけだが。
二人は、地上30メートルの地点に浮遊していた。
もう、そろそろいいかと思い、魔法を解除する。
すると、当然二人は重力加速度9.8メートル毎秒毎秒で、加速しながら落下してくる。
ヒイラギは、また、火を纏って空を飛べばいいからと、叫びながら落ちてくるチマリと絶叫アトラクションを楽しむように落ちてくるマキナを満足そうに眺めている。
二人が、地上10メートルに差し掛かった時だった。
ヒイラギの目の前を、一つの影が通り過ぎた。
その主は、大地を走るかのように空をかけ、マキナとチマリの元へと走り、二人を掴んだ。
それに驚き、炎を纏うのを忘れているマキナとチマリとともに、主は急に足場なくなったかのように突然落下を始めた。
そして、地面にぶつかる、そう思った時。
ドン!という衝撃音とともに、彼らの落下は空中で一度停止し、トスっと地上に着陸した。
「私は、アン・ジェラノール・ダンデライオンと言います。ダンデライオンの名を継ぐ者として、人が目の前で傷つくことを見過ごすことはできません。どれほど魔法の腕が優れていようとも、それで人に害を加えてはならないと思ういます。だから、なんていうか、あなたのことが嫌いです。幻滅しました」
そう言い残して、寮の方向へ歩いて言った。
「当然の報いですね」
「いやー、あの子すごいな、空中歩行かな?あとで、使ってみよっと」
なんともなかったように話す二人の横で、ヒイラギはただ一人絶望に打ちひしがれてた。
アンと名乗ったその彼女は、あの日、ヒイラギが告白した、タンポポ娘だったのだ。
ーステータスカードー
[名前]
アン・ジェラノール・ダンデライオン
[能力]
体力……850
力……830
魔力……1200
俊敏性……820
耐久力……1800
魔法耐久力……2500
[スキル]
綿毛……空中浮遊、空中歩行、空中跳躍が可能
ダンデライオン……任意の、あらゆるモノを弾く
肉体強化レベル1……一定時間体力と力を1.2倍にする
落下の衝撃がなくなったのは、ダンデライオンのスキルで直前に弾いたからです




