面接開始、スキルの開示
入学試験は、今回で終わります!
ついに、ヒイラギが自分のスキルの正体を知る時が来ました!
魔法の試験も終わり、ついにヒイラギにとっての最難関とも呼べる、面接の時間がやって来た。
ヒイラギは、この面接をどうやって乗り切るかに必死だった。
面接官も、ステータスが1でスキル不明では、ヒイラギが駄目元で会得した肉体強化レベル10についてくらいしか、聞くことがないだろう。そう考えていた。
しかし、事態はヒイラギにとって、いい方向に転がっていたのだ。
「ついに、残すところ面接だけになったな」
「そうですね。面接が、得点の三分の二を占めていますから、ここからが本番みたいなものです」
「だよなー、てか、面接の配点高すぎだろ」
「そこらへんは、やはりいいスキル、いいステータスの若者を青田買いしたい学園側の考えですよ。それに、実技だけでは強さだけしか評価されませんからね」
「あー、そっか。この学園、鍛治コースとか治療魔導専門コースとかあるんだっけか。確かに、強さだけじゃ必要な人材があつまんないわな」
「そうです。私みたいな、知性溢れる才女を取り逃さないためにも、面接の配点を高く設定しているんですよ」
「チマリはスキルも地味だし、戦闘術も魔法もパッとしないもんな」
「人の視界を覗き見する人間には言われたくありません」
「あれ?大変だ!急に世界がおっきくなった!」
「どういう事です?」
「チマリってこんな視界で生きてるんだな」
「燃やしますよ」
「俺も炎を纏えば何も問題ない!って熱い!やめて、急に燃やされると困る!」
「報いです」
横の二人が相変わらず、俺の集中を乱してくる。
てか、お前らスキルまで教えあったのかよ。いいのかマキナ、そんな簡単に自分のチートスキルをペラペラ話して。俺も話せるスキルがあったらな……
こいつらを見てたら、面接前に緊張してる自分がバカらしくなって来た。
そうだよな、もうここまで来たら突き進むしかないよな。
やるっきゃねえ!
「1018番、1019番、1020番、順に1号室2号室3号室にお入りください」
試験監督が、3人に告げると。
先ほどまで緩んでいた空気が、少し引き締まった。
「じゃっ、また後で」
「お互い頑張りましょう」
ヒイラギは二人の発言を受けて、答える
「なあ、マキナ、チマリ。合格したら、友達になってくれるか?」
ヒイラギがその言葉を告げると、二人は一瞬顔を見合わせたのち、示し合わせたかのように
「もう友達だろ」
「もう友達ですよ」
そう、告げた。
「ありがとう」
こうして、俺は異世界で初めての友達を二人手に入れ、面接に臨む。
ヒイラギは、ドアをゆっくりと三回ノックし、室内に足を踏み入れる。
「失礼します」
そして、前に歩みを進め、ラスボスとの対面を果たす。
そのラスボスは、貫禄が感じられる豊かな髭を持つ、温和な雰囲気のおじいさんだった。
「面接官を務める、ジャガです。よろしくね。それでは、これより受験番号1019番の面接を始めます。どうぞおかけになってください」
「失礼します」
ヒイラギは、ジャガの対面にある椅子に腰を下ろす。
「では、まずはステータスカードを見せてもらえるかな」
「お願いします」
ヒイラギは、失くさないように大事にしまっていたステータスカードをジャガに渡す。
ジャガがどんな反応を示すかに、わずかに怯えながら。
すると、ジャガの顔が、驚きの色に染まった。
「これは……えっと、君はこれまでどんな訓練を積んで来たのかね?」
「幼い時より、毎日走り込みを欠かさず行って来ました。魔法に関しても、毎日の基礎訓練は手を抜かずに取り組んで来ました」
「なるほど……相当頑張って来たんだろうね。これをみると君の苦労が伝わってくるよ」
同情、してるのか?
いまいちジャガ先生の感情が読み取れないな。
だが、今のところ好感触。
「肉体強化レベル10の会得には、いくつか方法があるが、君はどれを選んだのかな?」
え?いくつかあるの!?
嘘だろ。じゃあ、あの会得方法は、その中でもネタの部類だったんじゃないか?
「私は、24時間歌いながら走り続ける、という条件を達成し、そのスキルを会得しました」
そう俺が告げると、ジャガ先生は、クスリと笑った
「何かおかしな点がありましたか?」
「いやそんなことはないさ。ただ、その方法を選んだ豪傑が昔にもいたことを思い出してね。あぁ、もしかして君はクスノキ君の息子か、その血縁かい?」
豪傑ってなんだよ!クスノキ父さん、本当に何者なの?
「ええ、クスノキは私の父にあたります」
「なるほど、それならばこのステータスにもうなづける」
どういうことだろうか?
どうして、ステータスが1なことと、クスノキ父さんの息子であることが繋がるのだろうか?
何かがおかしい。
「次に、君はこの学園に入ってどんなことを学びたい?」
「まだ、決めあぐねているというのが本音ですが、現状は、騎・魔コースで学び、卒業後は前線で国のために戦いたいと考えています」
「分かりました。それでは、最後にスキルについて聞きたいのですが」
ついに来た。
「はい」
「君は、失恋したことはあるかな?」
何かおかしい質問をされた気がする。
いや、多分聞き間違いだ。
こういう時は聞き直してもいいんだったな。
「すいません。よく聞こえなかったのでもう一度質問をお願いできますか?」
「君は、これまでに何回失恋してきましたか?」
聞き間違いじゃなかったし、質問も少し変わっている!
一応、答えるべきなのかな。
「一回です」
「なるほど。それを聞いて安心しました。これまでよく頑張りましたね」
「すいません、今の質問にはどういう意図が?」
「ん?君のスキルについての質問だよ」
「どういうことでしょうか?」
「君は、自分のスキルを把握していないのかね?」
「いえ、私のスキルは不明になっているはずなのですが」
「そんなことはないよ。君に渡されたカードにはしっかりと、スキルの名前と詳細が書いてある」
「本当ですか!」
どうやら、俺は昨日から今日の間に、スキルの解放条件を満たしていたらしい!
よかった。これで、どうにかなる!
「じゃあ、そろそろ面接は終わりにしようかね」
「え、あの、もう終わりなんですか」
「ええ、もう十分に聞けたいことは聞けましたので。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「はい、ステータスカード。返しておくね」
「ありがどうございます」
やばい、スキルは解放されたけれど、まだ全然ステータスのマイナスを覆すアピールができていないのに終わってしまった。失恋の経験を聞かれて、ひたすら、同情されただけだったよ!
「失礼しました」
そう告げて、ヒイラギは部屋を出るなり、ステータスカードを見つめた。
それは、昨晩とは全く異なると言っても過言ではないほど、変化していた。
「なんだよ、これ!」
それをみたヒイラギは、驚く一方で合格を確信した。
今までの努力は報われていたのだ。
神の選んだスキルによって、それが目に見える形に現れてなかっただけで。
ヒイラギは、前世の知識で知っていた。
どんな数も、0乗したら1になり、そして、決して0にはならないことを。
ヒイラギのスキルは極めれば、どこまでも強くなるスキルだった。
それは、チートの名にふさわしい。
だが、 ヒイラギはどうしても素直に喜ぶことはできなかった。
「失恋必須のチートスキルなんて、使い勝手が悪すぎるわ!」
ヒイラギは心の底から、叫んだ。
マキナへの八つ当たりで消火された神への怒りの炎が、再び、ヒイラギの心に灯った瞬間だった。
ーステータスカードー
[名前]
ヒイラギ・リーフ・ウッド
[能力]
体力……3000
力……2500
魔力……4500
俊敏性……2800
耐久力……700
魔法耐久力……950
[スキル]
失恋戦士……ステータスが失恋の回数の累乗倍になる
肉体強化レベル10……一定時間体力と力を3倍にする




