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素晴ラシキ世界鉄道【本編:巡礼本線】-La Mirinda Mondo Fervojo-   作者: 葦原龍矢
第七章 祝賀会(さいごのばんさん)
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第八景 ジーモンの否認

 ジーモンは夜中に目を覚ました。酔いが回っているはずなのに、眠りが浅かった。サルヴァドーロとバルバラはまだ帰って来ていない。不意に不安に襲われ、部屋を出て駅へと向かった。

 

 真夜中近くのホームは、明かりも落ち、人影も少ない。一瞥したところ、二人の姿はホームに見えなかった。ジーモンは酒臭い溜息をついて、重たい身体をベンチの上に落とした。電光掲示板に取り付けられたアナログの時計を呆然と見ているうちに、瞼が落ちてくる。眠りに誘われるままに、ほどよく冷たいベンチに寝転がる。

 

 突然、強く身体を揺さぶられる。大儀そうにまぶたを開けると、懐中電灯の光に照らされる。


「鉄道警察だ。乗車券とパスポートを呈示しろ」


 ジーモンは半開きの目を指でこすりながら、機嫌の悪そうな声で唸った。


「俺は乗客じゃねえよ。鉄道員、ここの。ほら」


 財布に入ったIDカードを見せる。しかし彼らは、それでも満足の行かない様子だった。


「お前がジャック・ロックという男と一緒にいたという通報を受けた。その事実を確認したい」


 ジーモンは顔をしかめた。「ジャック・ロック? 誰だその男? そんなの知らねえよ」


「嘘を吐くな。お前がいつも傍にいる、金髪の男のことだ」


「だから本当に知らねえんだって。人違いも大概にしな」


「言い逃れは許されない。最後に訊くが、本当に知らないんだな?」


「ああ、知らねえよ。……ったく、しつこいな。三回も言わせるな」


 電灯の影になって、警官の顔は見えない。ジーモンには聞き取れない声で何かを相談した。


「なら、用件は以上だ。家に帰ってよく休め」


 警官たちの去っていく姿を、ジーモンは白い目で見つめた。


「……何だあの態度は。鉄道警察って、本当、鼻持ちならねえよな」


 顔を上げる。ちょうど時計の長針が、カチッと動いた。


 ホームに鐘の音が響いた。四回の高い音の後、頭の奥を打ち付けるような低い音がホームを満たす。その音が一つ、また一つ鳴るたびに、ジーモンの酔いが醒め、ぼんやりとした目に生気が戻ってくる。


「……あいつら、何て言った? 俺がいつも一緒にいる、金髪の男って……」


 立ち上がり、警官たちを追いかけた。だが、鉄道警察の姿は既に闇に消えてしまっていた。


「あいつら、兄貴をどこに連れて行きやがった……?」


 足が力を失い、ジーモンはホームに崩れ落ちる。膝の上に握りしめた拳が震えた。暗く冷たいホームに、いくつもの水滴が落ちて弾けた。だが、ホームに轟く鐘の音で、ジーモンの泣き叫ぶ声はかき消されてしまった。十二回目の鐘の余韻が壁に染み込んで行くと、ホームには小さな嗚咽以外には、何も聞こえなくなった。


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