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素晴ラシキ世界鉄道【本編:巡礼本線】-La Mirinda Mondo Fervojo-   作者: 葦原龍矢
第七章 祝賀会(さいごのばんさん)
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第四景 ゴドーの笑顔

 表彰式が終わった後も、マリアンヌの興奮は収まらなかった。社長室に戻ってから、彼女はもう一度受賞者の名前を見た。

 

 サルヴァドール・マクジョゼフ。

 

 自分の身体に宿り、この世に復活したジャック自身。本当に出会うことができたなら、自分は一体どんな反応をするんだろうと考えていた。喜びのあまり気を失うことは想定の範囲内だった。ここまで気持ちが高ぶるとは思わなかった。彼を見ると、自分も若返ったように感じた。

 

 だが。何なのだろう。この、すれ違ったような感触は。

彼は、自分を見ても表情一つ変えることはなかった。彼が自分のことを記憶していないのは仕方のないことだ。彼は自分の人生を最初からやり直したのだから。誰から自分が産み落とされたのかも、彼は知らない。マリアンヌが一方的に期待していただけで、むしろ彼の表情には戸惑いが浮かんでいた。そして、そんな表情を、ジャックは自分には見せたことがなかった。

彼は、ジャックの似姿であって、ジャックとは別人格の、新しい人間だと感じた。そのことが、マリアンヌを寂しくさせると同時に、訪れる嵐を感じさせた。彼を「ジャック」ではなく「サルヴァドール」と無意識に呼んだのも、きっとそのせいだ。


 ハロルドやフィリップは、彼を見てどう感じたのだろうか。まさか彼が復活したとは考えまい。だが、彼に関わる誰かだと考えるかもしれない。ハロルドは彼の親友だった。だが、フィリップは違う。フィリップとジャックが対立していたことは、マリアンヌも知っていた。彼は、このあと、どのように出るのだろうか。

 

 マリアンヌは外の空気を吸おうと、社長室の外に出た。エトワール宮の中には、談笑している受賞者の姿がちらほらと見えた。マリアンヌは目立たぬよう静かに赤絨毯の廊下を歩いていたが、不意に目まいに襲われ、足をふらつかせた。


「大丈夫ですか?」


 目の前にいた男が、マリアンヌの腕を支えた。マリアンヌは我に返り、息をつくと、静かに立ち上がった。


「すみません……どうもありがとうございます」


「何のことはありません。総社長のお役に立てて光栄です」


 マリアンヌは男の言葉を聴いて、ふと男の顔をまじまじと見つめた。気の良さそうな男が、マリアンヌの顔を見て、人懐っこい笑みを浮かべた。ほのかに酒の臭いが漂う。


「おいゴドー、こっち来いよ!」ふと、後方から声がかかった。


「おう、今行く」男は元気よく返事をし、玄関の方へと向かって行った。


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