北方戦争編 第十三話 危機
その後、守備隊はさらに二度交代した。3月半ば、帝国北部の最後の雪もやみ、積もった雪が解けはじめるころ、アイカド軍は鉄籬堡への小規模な攻撃を再開した。それから、すでに半月余り。サバルトたちは今、ストムセの守備に就いている。
4月。城内の街路はきれいに掃き清められ、木々の枝には緑の芽がのぞく。サバルトはストムセの北の城壁に立ち、晴れ渡った空の下、遠くのアイカド軍の大きな野営地を見つめていた。
十数歩離れた持ち場では、エドヴォンスがうまそうなパンをかじっている。
「それ、どこで手に入れた?」とサバルトが聞いた。
「ああ、昨日、休みのときに買ったんだ。夜に食うのを忘れててさ」
エドヴォンスは何気なく答えた。サバルトは笑って首を振ると、また城外をじっと見つめる。
「サバ、あっち見ろよ。アイカドの連中、また出てくるんじゃないか?」
エドヴォンスがパンを噛みながら、遠くの野営地の門を指さした。サバルトは眉の上に手をかざし、まぶしい陽を遮って目を凝らす。遠すぎて、よく見えない。
「そうみたいだな。門のあたりで列を作ってる。結構な数だぞ」
「ああ、第二団の連中もついてねえな」
エドヴォンスはパンを食べ終え、ぱんぱんと手をはたいた。野営地に集まりつつある兵たちの背後に目を留めたようだった。
「ん? サバ、見てみろよ。何か出てこようとしてないか?」
サバルトも目を凝らす。まだ何なのか見て取れぬうちに、近くの箭塔から、見張りの兵が城内へ向かって声を張り上げる。
「投石機だ! 早く住民を避難させろ! 鉄籬堡へ早馬を出せ!」
城壁の内側の通りが、たちまち騒然となる。人々は石造りの聖堂や地下室、街の中央の市庁舎など、頑丈な造りの場所へと押し寄せてゆく。北門が開き、伝令兵が馬を駆って矢のように飛び出す。石橋を駆け渡り、鉄籬堡へとひた走る。
サバルトとエドヴォンスは、城壁の上に立ち尽くしたまま、その様子を見ていた。何をすればいいのかもわからない。ただ、事の成り行きを待つ。次の命令を待つ。
ほどなく、前線指揮官のヘルグ伯爵、第一団の団長、各連隊長が北の城壁へ上がり、サバルトたちとともに北を見渡した。
アイカド軍はほぼ総出で、いくつもの方陣を組んでいる。遠目には、およそ二万。歩兵の方陣の背後には、攻城弩が数基、投石機が五基、破城槌が一基。整然と南へ進んできた軍勢が、やがて二手に分かれる。歩兵の方陣の大半は、攻城弩、三基の投石機、破城槌とともに鉄籬堡のほうへ向きを変えた。残るいくつかの歩兵の方陣と二基の投石機が、ストムセへ向かってくる。
「ちっ、厄介なことになった」
ヘルグ伯爵は、サバルトからさほど離れていないところに立っていた。数人の指揮官と声をひそめて言葉を交わす。伯爵の最後のひと言が、サバルトの耳に届いた。
「第二団が持ちこたえてくれればいいが」
そう言い残し、ヘルグ伯爵は城壁を下り、足早に去っていった。
サバルトたちは皆、重い兜をかぶり、目の位置に開いた横長の視孔から敵の動きをうかがった。だが、ストムセへ向かってきたアイカド軍は石橋には踏み込まず、向こう岸に陣を構えた。後方の兵たちが、投石機へ大石を運んでいる。
ぶうん、ぶうん。木製の梃子が回り、石を放つ音。
二つの巨石が川向こうからストムセへ飛んでくる。高い弧を描き、サバルトの頭上を越えてゆく。慌てて城内を振り返ると、巨石は通りへ飛び込み、轟音とともに背の低い家屋を数軒、押し潰した。
再び川向こうを見る。二基の投石機の射角が調整され、また巨石が載せられる。ぶうん、ぶうん。
「伏せろ!」第二連隊の指揮官が怒鳴った。
サバルトが反応するより早く、どん、と凄まじい音が響く。足もとの城壁が震えた。一発はサバルトから数十尺離れた石壁にぶつかったが、分厚い城壁の表面を削っただけだった。もう一発は、そばの箭塔の上端を砕いた。弓兵が一人、悲鳴を上げて落ちてゆく。
サバルトは城壁の上にへたり込んでいた。立ち上がる間もなく、背後の城壁の下から叫びが届く。
「敵は攻め寄せてきたか!?」
サバルトと第二連隊の数人の兵が、その声を聞いた。一人が急いで城外をのぞく。アイカドの歩兵はまだ、石橋の向こう岸に整然と方陣を組んでいた。その兵はすぐさま下へ叫び返す。
「まだ攻めてきていません!」
サバルトは身を低くして城壁の内側の縁まで這い、下をのぞいた。声の主はヘルグ伯爵だった。背後には、精鋭の強弓兵が一隊。伯爵は手を振り、全員に上がれと合図している。
「強弓兵は全員、城壁へ! 箭塔へ上がれ! 重歩兵は下りろ!」
伯爵の声が続く。サバルトとエドヴォンスは目を合わせ、それから第二連隊のほかの兵たちを見やった。皆がすぐに命令に従い、城壁の階段へ駆け出す。
轟音はなおも続く。重歩兵たちは足並みを乱さず城壁を下り、壁の根元に身を寄せて命令を待った。城壁に上がった強弓兵は、川向こうのアイカド軍へ繰り返し矢を浴びせている。
「第二連隊、第三連隊、ここで待て。敵が攻め寄せたら、すぐに城壁へ上がれ。伯爵閣下と東の城壁を見てくる」
第一団の団長は両連隊の指揮官にそう命じ、ヘルグ伯爵のあとについて東の城壁へ急いだ。
「隊長殿、どうするんですか。打って出ますか?」
兵の一人が、焦った声で第二連隊隊の指揮官に尋ねた。
「出撃もくそもあるか! 命令を待て!」
「ですが、隊長殿。このままじゃ、鉄籬堡が……」
第二連隊の指揮官はため息をつき、力なく首を振った。
矢を補給する軽歩兵が、いくつもの矢筒を背負って次々と城壁を駆け上がり、空の筒を持って下りてくる。アイカド軍の投石の間隔も、戦いが始まったころより長くなっていた。石が尽きかけているのだろう。城壁の弓兵はなおもしばらく矢を放ちつづけた。陽が、次第に西へ傾いてゆく。
ヘルグ伯爵が心配そうな面持ちでやってきて、城門前の空き地で第一団の団長と何か話し合った。やがて意を決したらしく、重歩兵たち全員へ声を張り上げる。
「帝国の誇りたる重歩兵たちよ! 今、鉄籬堡が危機に瀕している。鉄籬堡が落ちれば、次はストムセだ。蛮族どもは帝国の奥深くへなだれ込み、お前たちの故郷を蹂躙し、家族も子供も虐殺する。我々が何よりも避けねばならぬ惨事だ! この窮地を打開するには、お前たち重歩兵全軍を出撃させ、石橋の前で敵を足止めするほかない。ここの敵を、決して鉄籬堡への増援に向かわせてはならん! その間に弓兵を川の南岸沿いに鉄籬堡の対岸まで進ませ、城を攻める敵に矢を浴びせさせる。それで、まだ活路が開けるかもしれん!」
「出ろって言えばいいだろ。ご立派な理屈なんかいらねえよ」
エドヴォンスが小声でぼやいた。サバルトは笑って、なおも熱弁を振るうヘルグを眺めていた。その先の言葉は、何ひとつ耳に入ってこない。
「結局、出るんだろ。じゃあ、そうするか」
独り言のように返した。
「おおっ!」
一部の兵が声を上げた。サバルトやエドヴォンスも、形ばかりに腕を上げる。
「整列! 第一連隊、左前! 第二連隊、右前! 第三連隊、左後ろ! 第四連隊、右後ろ! 全団、城門を出たらすぐに橋へ上がり、亀甲陣を組め! 敵を一人たりとも渡らせるな!」
第一団の団長が配置を命じた。サバルトとエドヴォンスは再び兜をかぶり、第二連隊の兵たちとともに北門の前に並んだ。門がゆっくりと開いてゆく。
「走れ!」指揮官が怒鳴った。
帝国重歩兵第一団の兵たちが、全身に鋼の鎧をまとい、重い足取りで石橋へ駆け出す。橋の向こうのアイカド兵は一瞬、面食らったらしく、すぐには動けずにいた。アイカドの指揮官が事態をのみ込み、兵たちに橋へ上がれと命じたときには、第一団の重歩兵はすでに石橋まで百歩もない距離に迫っていた。
「大盾、前へ!」
先頭を走る指揮官が、後ろの兵たちへ怒鳴る。
重歩兵たちは走りながら中央を開ける。精鋼の大盾を背負った、とりわけ体の大きい数十人が、人波を抜けて先頭へ出てくる。アイカド兵が橋の半ばに達したころ、大盾兵たちもようやく石橋へ踏み込んだ。轟音とともに、精鋼の大盾が橋の敷石に下ろされる。十六人の大盾兵が横一列にひしめき合い、橋の幅を余さず塞ぐ。残る大盾兵は、そのすぐ後ろに列を組む。サバルトたちは隊列の右前方で、大盾兵のすぐ後ろについた。戦斧を掲げたアイカド兵が、狂ったように叫んで迫る。最前列の大盾兵は一斉に腰を落とし、面甲を盾の陰へ隠した。中腰のまま、ゆっくりと前へ進む。
アイカド兵が激突する。肉体が大盾にぶつかり、激しい音が響く。二列目の大盾兵が、自分の盾を前列の兵の背に押し当てる。重歩兵の陣は、微動だにしない。はじき飛ばされたのは、アイカド兵のほうだった。数人が橋の両脇から、冷たいソーン川へ落ちてゆく。
「押せ! 前へ!」指揮官が陣の中で叫んだ。
後列の重歩兵たちも石橋へ押し上がり、一斉に前へ力をかける。最前列の大盾兵は片手に盾を持ったまま、もう片方の手で短剣を抜いた。盾の上から敵を突き、あるいは盾を持ち上げ、その下から敵の足首を斬りつける。アイカド兵の叫びが天を揺るがす。前へぶつかってくる者の雄叫び。剣を受けて倒れる者の絶叫。この鋼鉄の堡塁を前に、なすすべがない。敵の後列はなおも前へ押し、前列は押し返されるままに退いてゆく。川へ落ちるアイカド兵は増える一方だった。
帝国の重歩兵は、石橋の上を着実に押し進んでゆく。
「足もとに気をつけろ!」
切り落とされた足を一つ踏み、よろめきかけたサバルトが、そばの兵に叫んだ。橋の敷石は、すでに赤く染まっている。血が石の継ぎ目を伝って広がり、橋の縁に並ぶ排水口へ集まっては、ソーン川へ流れ落ちる。橋を横から見れば、血の幕のような滝が見えただろう。橋上のアイカド兵が後退するにつれ、その滝の幅は、ますます広がってゆく。
ようやく、橋の北の端まで二十歩ほどに迫った。面甲の視孔越しに、対岸の大勢のアイカド兵の姿がはっきりと見える。目に怒りと殺意を燃やし、こちらを待ち受けている。
「橋を渡ったら、すぐに半月形の防衛線を敷け!」
第一団の団長が、兵たちの中から再び命令を飛ばす。
前列の兵たちが声を上げ、さらに押し込む。最後の一人も、ついに橋の上から押し出された。
橋を渡った。
二列目、三列目の大盾兵が、一列目の前進の速さに合わせて橋を下り、すばやく両翼へ広がって最前列に加わる。たちまち、石橋の北側に半円形の盾の壁ができあがった。サバルトとエドヴォンスも、ようやく北岸の土を踏む。すばやく右前方へ移り、右翼の大盾兵の後ろについた。振り返ると、南岸ではストムセの弓兵たちが全員、川沿いに東へ走っていた。大量の矢を背負った軽歩兵が、そのあとを追っている。
北岸のアイカド兵が、こぞって押し寄せてきた。サバルトは長槍を握りしめ、中腰の盾兵の頭越しに、何度も外へ突き出す。たちまち大盾の前に、数人のアイカド兵が倒れた。
大盾の防衛線は整った。だが、橋の上には、まだ数百人の重歩兵が詰まり、渡りきれずにいる。さらに前へ出て弧を広げれば、第一団の両翼は大盾の守りを失う。それでも、命令は下った。
「さらに前へ広がれ! 後ろの者は両翼へ! 川沿いに横陣を敷け!」
サバルトは舌打ちし、前の大盾兵の肩を叩いた。大盾兵が再び、死体を跨ぎながら前へ出る。一歩進むのも容易ではない。盾と盾の間が少しずつ開き、アイカド兵の戦斧が、その隙間から陣の中へ振り下ろされる。重歩兵にも、ついに倒れる者が出た。
陣は次第に広がってゆく。橋にひしめいていた重歩兵たちは、そのまま両翼へ回った。弧を描く盾の壁の両側で敵を斬り払い、どうにか場所を空けて横一列の陣を組む。ひときわ激しい喊声が、両翼から上がる。
サバルトから右へ少し離れたところでは、大勢の重歩兵が戦槌を振り上げ、剣を振るい、アイカド兵と入り乱れて斬り合っている。第四連隊の兵たちだ。左隣では、エドヴォンスが盾の外へ猛然と槍を繰り出している。そこへ、大斧を掲げたアイカド兵が一人、仲間の死体を足場に二歩駆け、跳び上がった。盾兵の頭を越えようと、空中から斧を振り下ろしてくる。エドヴォンスは反射的に槍を持ち上げた。宙にいる男に、避けるすべはない。穂先がその体を貫く。男の体が槍先に引っかかり、その重さにエドヴォンスの手が緩む。死体が滑り落ちた。
しかしアイカド兵は、盾の陣を破る術を覚えたかのようだった。次々と仲間の死体を踏み、最前列の盾の壁を跳び越えようとする。宙で殺される者もいれば、後列へ飛び込み、重歩兵と入り乱れて斬り合う者もいた。
夕陽が地平線へ近づいてゆく。赤みを帯びた橙の光が血の色を鈍らせ、入り乱れる戦場を影絵に変えていた。
「踏ん張れ! てめえら、踏ん張れ!」
第二連隊の指揮官も最前列に立ち、アイカド兵を一人斬り倒して叫んだ。
サバルトの長槍は、すでに折れていた。今は長剣を握り、盾の上から斬りつけつづけている。目の前の盾兵は片膝をついたまま、微動だにしない。打撃で気を失っているのではないかとさえ思う。精鋼の大盾には、もはや平らなところが一寸もない。アイカド兵が一人、戦槌を振りかざし、盾の脇から陣へ割り込もうとする。サバルトは振り下ろされる槌の柄を左手で受け止めた。手甲に守られていても、虎口に激しい痛みが響く。右手の剣を持ち上げ、その喉へ突き入れる。血が面甲に噴きかかった。その血の霞越しに、遠くの鉄籬堡が視界の隅に映る。城壁の下には激しい炎が上がっている。だが、城門はなおも固く閉ざされたままだ。
新たな命令はない。そばの者を気にかける余裕もなく、自分が何人斬ったのか、もうわからない。前の盾兵は、すでに地面に倒れていた。盾だけが土に突き立ち、まだ立っている。サバルトはその裏に体を押し当て、正面からの攻撃を少しでも防ぐ。機械のように、剣で受け止めては斬りつける。それでも、目の前のアイカド兵はなおも襲いかかってくる……。
太陽は西へ沈み、地平線の上に半分も残っていない。光がほとんど水平に、東へ射している。サバルトが斧を一撃受け止めたとき、目の前で歯をむき出しにしていたアイカドの大男が、ふいに東を振り返ったように見えた。その隙に剣の柄を顔へ叩きつけ、そのまま横薙ぎに斬る。男は頭を半分削ぎ落とされ、倒れた。だが、その後ろのアイカド兵は、もう誰も襲いかかってこない。一斉に、怯えた顔を東へ向けている。
何があった? サバルトには何も聞こえない。耳の中は、耳鳴りで埋め尽くされている。面甲の視孔から見える範囲は狭い。剣を握ったまま、眼前の大勢のアイカド兵を睨み据えることしかできない。敵が背を向ける。逃げてゆく。野営地のほうへ、退いてゆく。
敵が数十歩ほど離れると、サバルトは何が起きたのか確かめようと、兜を脱いだ。自分も東へ目をやり、驚いた。鉄籬堡を囲んで攻めていたアイカド軍が、崩れ、散ってゆく。逃げ惑う敵の群れの中で、陽を照り返す大きな光の塊が、目も眩むほどに輝きながら、縦横に駆けている。
そばの者も、次々と兜を脱いだ。エドヴォンスも。第二連隊の指揮官も。残った重歩兵たちも、皆。東を、あの眩い光を、思いもよらぬ光景を、そろって見つめている。光の塊は敵を追い、東から西へ、近づいてくる。百歩余りまで近づいて、サバルトにもようやく見えた。あれは、無数の鎧が放つ照り返しだ。重騎兵の大集団。三、四百騎ほどもいる。人も馬も全身を白銀の重い鎧で覆い、騎兵たちはその上に純白のサーコートとマントをまとっている。胸甲を覆う白布にも、盾にも、教廷の紋様。人馬一体となって剣を振るい、逃げるアイカド兵を追って斬り伏せてゆく。遠く、少し外れたところには、もう一隊。五、六十騎ほどが、人も馬も黒みを帯びた鋼の鎧で身を固め、別の側から、退却する大群へ斜めに斬り込んでいる。盾に描かれているのは、帝国皇家の紋様。鉄翎軍だ。
さらに遠く、鉄籬堡の城壁の下からも、大勢が腕を振り上げ、声を上げながら、こちらへ走ってくる。馬には乗っていない。何者なのか、サバルトには見分けがつかなかった。だが、わかる。鉄籬堡は救われたのだ。
「おおおっ!」
重歩兵たちが再び腕を振り上げ、声を上げる。サバルトとエドヴォンスも最後の力を振り絞り、拳を握り、腕を掲げ、その声に加わった。それからサバルトは、地面にどさりと尻をついた。
先ほど倒れた盾兵の兜を外し、自分の手甲も脱ぐ。震えの止まらない指を、その鼻先へかざしてみた。まだ、生きている……。
ストムセの城内では、軽歩兵たちが負傷者を一人ずつ、仮の病院となった大きな兵舎へ運び込んでいる。死体は、城外の広い空き地に積み上げられていた。聖騎士とともにやってきた聖職者たちが、重歩兵の傷を一人ずつ診てゆく。住民たちは家から食べ物を持ち出し、通りで兵たちに配っている。
サバルトは頭に二度打撃を受け、戦場を離れてからも、ずっと頭がくらくらしていた。エドヴォンスは肩と肋骨のあたりに、包帯をきつく巻かれていた。二人は椀を手に、住民からもらった肉のスープとパンを飲み込む。ヘルグ伯爵、鉄翎軍の指揮官、聖騎士の指揮官が、そろって通りを見回りながら歩いてゆく。その姿を、二人は目で追っていた。
ヤラから戻った仲間は、十五人になっていた。




