第40話「闇傑の円卓 ―Ⅱ」
先ほどまでの「街ごと吹き飛ばす」という物騒な提案の余韻が、まだ円卓の上に薄く残っていた。誰も笑わない。
けれど、誰もそれを冗談として流すこともしない。そんな張りつめた空気の中で、ウィザーは苦笑混じりに肩をすくめる。
「本当に、君たちは昔から変わらないね」
その視線の先には、対照的な雰囲気を纏う2人の少年少女が座っていた。1人は椅子の背にもたれ、退屈そうに指先で机を叩いている。もう1人は口元へ穏やかな笑みを浮かべながらも、その瞳だけはどこまでも冷え切っていた。
兄妹のように息の合った2人。だが、その価値観は常人とは決して相容れない。
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【ゼノカディア】 [No.10]
夜闇の悪魔
《戦闘部》
主戦力/前線
『 アヴァ=クレア・ランオーバー 』
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【ゼノカディア】 [No.10]
夜闇の天使
《戦闘部》
主戦力/後方戦線
『 スルシィ=ルル・エレーフィル 』
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するとアヴァは楽しげに笑った。
「仕方ないでしょ。だって、一番早い方法なんだから」
スルシィも静かに頷く。
「エレメンターを探すより……全部壊した方が早いもの」
その声には一切の迷いがない。命を奪うことも、街を焼き払うことも、彼らにとっては呼吸をするのと変わらない日常だった。ウィザーは再び困ったように笑う。
「方法自体は否定しないよ。でも、君たちは新しいエレメンターについて何か知ってる?」
するとアヴァは天井を見上げ、少しだけ考える素振りを見せた。
「さあ。この前は住宅街を焼き払う方に夢中だったから」
まるで昨日遊びに出かけた話でもするような口調だった。スルシィは嬉しそうに微笑む。
「あの時の悲鳴……綺麗だったよね」
「ああ。炎の中で響く叫び声、壊れていく建物。全部が1つの芸術作品みたいで、燃え落ちる景色も、とても綺麗だった……」
2人は顔を見合わせ、小さく笑い合う。その異様な会話に、円卓の空気がわずかに冷え込んだ。
「……全く、本当に気味の悪い」
その中で、呆れたようにそう呟いたのはリムだった。その一言で、2人の笑顔が消える。するとアヴァの瞳が細くなる。そしてスルシィも静かにリムを見据えた。
「……今、何て言った?」
「あら、もう1回言ってあげようかしら?」
肌を刺すような殺気。空気が一瞬で張り詰める。誰も動かない。ほんの少しきっかけがあれば、この場で戦闘になってもおかしくはなかった。――その時。
「まぁまぁ!」
場違いなほど明るい声が響いた。
「ケンカはダメだよ!」
ふわり、と白い髪を揺らしながら、1人の少女が2人の間へ割って入る。その笑顔は、この会議室にはあまりにも不釣り合いなほど無邪気だった。
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【ゼノカディア】 [No.11]
純白の紡ぎ人
《戦闘部》
主戦力/後方支援
『 リリィ・クレアリー 』
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リリィは両手を広げながら、にこりと笑う。
「仲良くしよ? ね?」
その声を聞くと、不思議なことに2人の殺気が少しずつ薄れていく。アヴァは小さく舌打ちをした。
「……ちっ」
するとスルシィも不満そうに頬を膨らませる。
「今回は我慢する」
リリィは安心したように胸を撫で下ろした。やがてウィザーも苦笑しながら拍手を送る。
「よかったぁ。これで一安心!」
「ありがとう、リリィ。君がいると本当に助かる」
「てへへ」
照れくさそうに笑うリリィ。重苦しい空気が、ほんの少しだけ和らいだ。その様子を見届けると、円卓の反対側から軽やかな声が上がる。
「やっとおさまった〜!」
椅子へぐったりともたれながら、1人の少女が大きく伸びをする。
「それじゃ、話を戻してもいいかな?」
その一言に、全員の視線が自然と彼女へ集まった。場の空気が落ち着いたのを見計らい、少女は椅子へ座り直すと、大きく伸びをした。
先ほどまでの殺気立った空気など気にも留めていないような、どこか飄々とした雰囲気を纏っている。
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【ゼノカディア】 [No.12]
四季姫
《戦闘部》
主戦力/前線
『 ワイアット・ブレンディア 』
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「それじゃ、改めて話を戻そうか〜」
ワイアットは軽い笑顔を浮かべながら、くるりと椅子を回した。その軽い調子とは対照的に、エリックは腕を組み、真っ直ぐ彼女を見据える。
「ワイアット。何か掴めたのか」
期待を込めた問いだった。しかし、ワイアットは困ったように笑って頭をかく。
「うーん……実はね、私もこれといった手掛かりは見つからなかったんだよね〜」
その一言に、エリックは深く息を吐いた。
「……何のために話を戻したんだ」
「あはは〜⋯⋯ごめんごめん」
悪びれる様子もなく笑うワイアット。その緊張感のない態度に、会議室の空気がわずかに緩む。その様子を見ていたスルシィが、隣のアヴァへ身体を寄せた。
「ねぇ、アヴァ。何かないの?」
アヴァは少し考え込むように顎へ手を当てる。
「詳しい情報はない。でも……もし見つけたら、今度こそ2人で確実に仕留めような」
そうして、静かに目を細めた。その言葉に、スルシィは嬉しそうに微笑む。
「うん。まずは吊るして⋯⋯動けなくして⋯⋯思いっきり苦しませた後、最後に首を落としてあげよ?」
無邪気な口調。だからこそ、その言葉はより一層恐ろしく響いた。するとリリィは困ったように頬へ指を当てる。
「どうしよっかぁ……できれば誰も傷付かない方がいいんだけど……」
その時だった。陽気な声が円卓へ響く。
「あれれ〜? ボクは仲間外れなのかな〜?」
すると全員の視線が1人の青年へ向く。金色に近い髪を揺らしながら、彼は悪戯っぽく笑っていた。
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【ゼノカディア】 [No.13]
悪狐の裏切り
《戦闘部》
主戦力/総戦線
『 ラオ・ディーフィ 』
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ウィザーは苦笑する。
「そんなことないよ。そういえば、この前エレメンター出没地域の近くへ派遣していたね。ラオ、その後はどうだった?」
ラオは机へ頬杖をつきながら、楽しそうに笑う。
「絶対とは言えないけどさ〜。怪しい人なら何人か見つけたよ。候補、って感じだけどね。」
「なるほど。やっぱり、その程度か⋯⋯」
ウィザーは静かに頷く。確証には至らない。しかし、候補が存在するだけでも大きな前進だった。その時。
「それでしたら――」
落ち着いた声が響く。円卓の奥に座る、1人の少年が静かに立ち上がった。透き通るような白銀と少し青を帯びた髪。氷細工のように整った容姿。そして、その瞳には常に冷静な光が宿っている。
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【ゼノカディア】 [No.14]
氷の花
《戦闘部》
主戦力/前線
『 ユリシス・マリファス 』
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「まだ確証はありません。ですが……」
するとユリシスは立体映像へ視線を向けた。
「エリックさんが以前起こした異変。あの時を境に、各地で微弱ながらエレメント反応が確認されています」
エリックが小さく眉を動かす。
「……続けろ」
「反応はいずれも非常に弱く、不規則です。しかし、一般人とは明らかに異なる波長でした」
会議室が静まり返る。ユリシスはさらに続けた。
「恐らく、〔第5代〕エレメンター本人か……あるいは、その極めて近しい人物。現在確認できるのは、そこまでです」
するとウィザーは満足そうに笑みを浮かべた。
「さすがだね、ユリシス。断片的とはいえ、十分参考になる情報だよ」
エリックも腕を組んだまま頷く。
「……仕事が早いな」
するとユリシスは少し照れたように目を伏せた。
「いえ、まだ推測の域を出ません。それでも、何もないよりかは」
その冷静な言葉に、円卓の空気は再び情報共有の場として引き締まっていく。
――だが、この会議で語られる“重要な情報”は、まだ終わりではなかった。
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