66-12
翌日。
蒼は久志との約束を果たすため、昨日メールで送られてきた住所へと辿り着いた。
蒼のマンションから電車を乗り継ぎ一時間ほど、閑静な住宅街に佇む「如月荘」。
その一階の一番奥、一〇三号室。
そこが久志の住まいだった。
蒼は一度深く息を吐き、意を決してチャイムを鳴らす。
すると、待ち構えていたかのようにすぐさま玄関のドアが開いた。
「久志くん、お邪魔してもいいかな?」
「……アオザキ、悪い。今からお前に会わせたい奴がいるんだ。話はそいつのところへ向かってからでいいか? 決して、お前の事情を言いふらすような男じゃない」
「でも……本当に信用できるんですか?」
不意の提案に、蒼は不安を隠せない。
自分の抱える問題は、そう簡単に他人に明かせるものではないからだ。
「ああ、俺が保証する。それに、そいつはお前が求めている答えに、誰よりも近い経験をしている人物だ」
「久志くんがそこまで言うなら……」
蒼は久志の真剣な眼差しに圧され、その言葉を信じることに決めた。
「よし、善は急げだ。行こう」
久志はそう言うと、駅の方へ向かって足早に歩き始めた。
「えっ? 急ぐって、どこへ行くんですか?」
「ここからリク電で一時間半ほどかかる場所だ」
矢継ぎ早に歩く久志の背中を追いながら、蒼は困惑混じりに問いを重ねる。
「目的地は、どこなんですか?」
「巫女ノ丘公園だ」
どうしてそんな遠い場所へ、という疑問が脳裏をよぎったが、何か深い理由があるのだろう。
久志が自分のために動いてくれていることは痛いほど伝わっていた。
蒼はそれ以上、何も言わずに隣を歩いた。
「……優也が待ってる」
不意に久志の口から漏れた名を、蒼は無意識に繰り返した。
「優也……?」
「ああ。お前の現状に、一番適任な奴だよ」
久志に続いて券売機で切符を買い、改札を抜ける。
「適任、ですか?」
「俺の経験なんて、せいぜい彼女と別れるだの、すれ違うだの、そんなレベルだ。けど、優也はもっと重いものをいくつも乗り越えてきてる。言葉の重みが違うんだよ」
ホームに滑り込んできたリク電に二人は乗り込んだ。
ガタンゴトンと車輪の音を響かせ、車両に揺られながら、彼らは「答え」が待つ巫女ノ丘を目指した。
to be continued.




