59-05
蒼が去った後のハイランドの店内。
先月、フロアのアルバイトとして入ったばかりの女子高生、ノエル・クラン・エルスタードは、長い銀色の髪を靡かせながらキッチンの久志を呼んだ。
「あの、お客様が安倍さんを呼んでほしいと……お願いできますか?」
「俺を? わかった。海神、ピークも過ぎたしあとは頼めるか?」
久志は同じキッチン担当の海神雅人に後を託した。
「了解です。でも、もし危ない客だと判断したら、すぐに呼んでいいですか?」
「それで構わない。頼む」
久志が促されるままに向かったテーブル席。
そこに座っていたのは、見慣れた顔__悪友の高橋優也だった。
「オレを呼んでる客ってのは、優也、お前のことか」
高橋優也。
高校入学以来の付き合いで、出会ってからもう三年近くになる。
お互いに、言葉では言い尽くせないほどの出来事を共にしてきた仲だ。
「よっ」
優也は軽く手を挙げ、久志に短く挨拶した。
「……で。唯とは、まだすれ違ったままなのか?」
単刀直入な問いに、久志は苦笑を漏らす。
「そのことか。お前にとっちゃ大事な幼馴染だもんな。心配して当然か」
藤村唯。
優也の幼馴染であり、久志の恋人でもある少女だ。
「……ちょっとした誤解が重なった。最善は尽くすが、もしダメだった時は……その時はすまない」
久志は、親友の優也にだけは正直な胸の内を明かした。
「そうか。それならそれで仕方ない。ただ、オレが言えた立場じゃないけどさ、悔いだけは残さない方がいい」
優也の言葉には、自らも葛藤を乗り越えてきた者特有の重みがあった。
「で? そんな説教を言うために来たわけじゃないだろ」
「あぁ、ただの待ち合わせ兼、暇つぶしにお前の仕事の邪魔をしに来ただけだ」
「ったく、ここを待ち合わせ場所に使うなよ。……あぁ、そうだ。、少しお前の話をしてやりたい奴がいるんだが、いいか?」
「オレの話? 別に構わないけど……そいつも、何か背負っているのか?」
久志は少し視線を落とし、言葉を繋いだ。
「どうなのかはオレにもまだ解らない。ただ、必要ならお前の経験を聞かせれば、何かが変わる可能性がある。もしそうなったら、力を貸してやってほしいんだ」
「……じゃあ今度、何か奢ってくれ。それでいい」
「了解だ。それくらいなら安いもんだ」
久志と優也は、言葉の代わりに拳を軽く合わせた。
かつて共に戦い、支え合ってきた二人の絆は、場所を変えても決して揺らぐことはなかった。
to be continued.




