海王(ポセイドン)戦⑤勇者 涼 爆誕!!
俺は『スカウター』の指し示す光の点を見つめながら、海底神殿の最深部を急いでいた。
(夢幻の心臓はその場に全員いないと駄目なのか? サスケの安否といい、ノアに聞きたい事が山ほどあるが、強者しかいないこの迷宮で焦って使い果たせば生き残れないだろう。
そもそもサスケが本当にライアンに殺されてしまっていたら、俺の勇者への道は絶望という事か!?)
焦燥感を振り払うように、俺は足を速めた。
辿り着いた先は、分厚い鉄格子に阻まれた冷たい地下牢だった。
だが、その重厚な扉の前には、門番である牛の頭と屈強な肉体を持つ異形の魔獣が陣取っていた。全身から不気味な海水のオーラを噴出させている。
「スカウター始動!」
すかさず声を上げると、視界のレンズに情報が展開され、脳内に直接データが流れ込んできた。
《個体識別:海牛鬼 ランクB》
《水属性オーラ、強力な突進攻撃有り》
《弱点:眉間の水魔核》
弱点を把握した俺は、即座に『イエローガムのムチ』を振り抜いた。
特殊な粘着性を持つムチがミノタウロスの巨体を瞬時に絡めとり、その動きを完全に拘束する。
「モ゛ォォォォッ!?」
俺は身をよじるミノタウロスへと一直線に踏み込み、神剣『草薙の剣』を抜き放った。
一閃が眉間の水魔核を貫き、ミノタウロスは瞬殺された。
俺は即座に便利屋の鍵開けスキルを生かし、牢獄の重い扉を開け放つ。
薄暗い牢獄の中、太い鎖の束に繋がれ、力なくうつむく一人の男の姿があった。
間違いない、彼が『竜戦士』だ。
俺は手にしていた草薙の剣を振りかざし、竜戦士の四肢を縛る忌まわしい鎖の束を一閃のもとに断ち切った。
ガシャンッ、と重たい金属音が鳴り響き、男の身体が解放される。
その直後、神殿の通路を爆風のような勢いで突き抜けてきた巨大な影が、俺のすぐ横を凄まじい速度で通り抜けた。
灼熱の業火を纏う巨大な竜。炎龍だ。
(なんてタイミングだ。流石ルーク)
炎龍はうつむく竜戦士の姿を視認するや否や、神殿を震わせるほどの咆哮を上げ、自らの巨体を眩い炎の奔流へと変えた。
意思を持った炎の奔流は、本来の居場所へ帰還するかのように、空となっていた竜戦士の肉体へと凄まじい勢いで吸い込まれていく。
次の瞬間、竜戦士の身体が強烈な光を放ち始めた。
二つの存在は完全に一つに交わり、凄まじいオーラが爆発する。
光が収まった後、そこに立っていたのは――圧倒的な覇気を纏う『竜戦士』の姿だった。
顔を上げた彼の両瞳は、左目が透き通るような青色、右目が炎龍の瞳孔を受け継いだ鋭い黄金色という、神秘的なオッドアイに変化している。屈強な肉体には、底知れない竜の魔力が静かに宿っていた。まさに伝説そのものの存在感だ。
「涼よ、解放してくれたことに感謝する。俺の名はリゼル。状況はドラゴから受け継いでいる。お前の仲間となり、再び魔獣大戦に参戦しよう」
竜戦士が俺に向けて、力強い声で仲間になる事を宣言した。
――その瞬間、スカウターに激しい警告音が鳴り響いた。
《EMERGENCY!》
《EMERGENCY!》
《警告!災厄級2体出現》
「何っ!?」
「――そこまでだ」
背後から恐ろしいプレッシャーを伴った声が響いた。
振り返ると、そこには最恐のコンビ――ギルガメッシュとアナキンの姿があった。
いつの間に真後ろまで迫られていたのか、完全に捕捉されている。
「涼、お前に恨みはないがライアンの敵は俺の敵だ。約束どおり二度目は見逃さん。すまんがここで死んでもらう」
静かな宣告と共に、アナキンの身体がふわりと宙に浮き上がる。
その両眼は蒼銀色に染まり、髪が凄まじいオーラと共に逆立ち、同じく眩い蒼銀色へと変貌していく。
「出でよ! キングベヒーモス!」
アナキンの鋭い号令と共に巨大な召喚陣が展開され、キングベヒーモスが顕現した。
「あの男を殺れ!」
アナキンの冷徹な命令が下り、暴君の咆哮が最深部を震わせた。
直後、キングベヒーモスの極太の尻尾が鞭のようにしなって薙ぎ払われ、防御の間すら与えず、俺の身体を捉えた。
「がはっ……!」
ミスリルアーマーがきしみ、紙屑のように吹き飛ばされ、遥か後方の石壁に激突して動けなくなった。
「大丈夫か!? 涼、借りるぞ!」
キングベヒーモスの攻撃を紙一重で躱したリゼルが、俺の手から離れた草薙の剣を拾い上げ、再び俺たちに迫る追撃の尾の先端を鮮やかにぶった斬る。
「うううう……ッ」
俺はうつ伏せに倒れたまま、口からごぼりと大量の血を吐き出した。
視界が明滅し、意識が遠のきそうになった。だが――。
その時、背後の通路からリリアが追いついてきた。
「涼、大丈夫か!? うっ!」
彼女が声を上げた瞬間、その心臓の辺りから眩い聖なる光が発せられる。
「……ん?」
キングベヒーモスにトドメの命令を下そうとしていたアナキンが、不審に眉をひそめた。俺の様子がおかしい事に気が付いたのだ。
よく見れば、前方に立つ竜戦士の心臓の辺りも同じように光っていた。それだけではない。カイン、サスケ、エリス、レイナ……離れた場所にいるはずの仲間たちの心臓までもが、次々と共鳴するように光り出していたのだ。
「これは、まさか!? あの時のライアンと同じ……まずい!ギルガメッシュ!今すぐ涼を殺せ!!」
アナキンが血相を変えて叫んだ。
「かしこまった!アナキン、涼を抑えられよ!」
「うおおおおおっ!」
アナキンが両手を前方に突き出し、強烈な念力で俺を地面に抑え込もうとする。
(なんだ?この内側から湧き上がってくる熱い力は……ひょっとしてこれは!?)
俺の両目が神々しい光を放ち始め、先ほどの竜戦士すら凌ぐ凄まじいオーラが爆発し、神殿全体を揺るがした。
全身の骨がきしむ音を立てながら、俺は立ち上がろうと力を込め、アナキンの念力と凄まじい押し合いになる。
「「うおおおおおっーーー!!」」
圧倒的な重圧と、俺の内から溢れる光の奔流が物理的に衝突し、足元の石畳がクレーターのようにミシミシと陥没していく。
(くっ、抑えきれない!)
「急げギルガメッシュ! わかるだろ!? ヤツはライアンと同じになったんだ!!」
絶叫するアナキンの鼻と耳から、限界を超えた念力の負荷によって鮮血が噴き出した。
「今っ! ここで!! 殺るんだーーー!!!」
アナキンの悲痛な叫びに応え、ギルガメッシュが妖刀『初代鬼徹』を握りしめ、凄まじい跳躍で俺へと迫る。
しかしアナキンの念力をとてつもない底力で押しのけ、完全に起き上がった俺は、必殺の間合いに飛び込んできた巨躯を見据え――静かに手をかざした。
「『天戒の白閃』ッ!!」
神々しい極大の閃光が放たれ、ギルガメッシュの巨躯が宙に吹き飛んだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
現在ストックは無く、可能な限り新規エピソード執筆に励んでおります。
その為、 誤字や矛盾点等チェック漏れが稀に出てくるとは思いますが、気付き次第、随時修正・加筆のブラッシュアップを行っていきますので温かい目でみて頂けると嬉しいです。
皆様の評価やブックマークが、何よりの執筆の励みになります。
今後とも応援よろしくお願致しますm(_ _)m




