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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
― 第二次魔獣大戦 ―

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海王(ポセイドン)戦③勇者VSレイナVS黒ひげ

「スカウター始動!」


 命令に応じ、網膜に迷宮の広大な立体マップが瞬時に展開された。

 だが、マップ上に示されていたのは複雑な迷路の構造と、光を放つ『竜戦士』のマークだけだった。

 ノアが龍戦士を見つける為に事前にセットしてくれていたのだろう。

 事前情報で海底神殿にまつわるレア宝箱の噂等があったが竜戦士の所在やサスケを含む仲間の安否以外どうでも良かった。


「仲間の位置は……分からないか」


俺はギリッと奥歯を食いしばった。


「サスケ……!」


 ライアンに対する怒りで視界が赤く染まりそうになったが、俺は無理やりその感情を腹の底へと押し込んだ。

 今は、マップに示された最後の仲間の元へ向かうしかない。

 俺は草薙剣を握り直すと、スカウターが標す迷宮の部屋へと歩き出した。



――その頃、別の階層。


 冷たい石造りの広間。着地したライアンの頭上には、崩落の最中から彼を追って飛び込んできたレイナが空中に浮遊していた。


 兄であるサスケを奪われた怒り。彼女の双眸そうぼうはすでに鮮烈な『緋の眼』へと染まり上がる。

 莫大な魔力が暴走し、神殿の石畳が、上空の彼女から放たれる魔力の重圧だけでメキメキとひび割れていく。


「……何だ、あの魔力は?」


ピピッ、ピピピッ!

 ライアンの左目に装着されたスカウターのレンズに、レイナの戦闘力が1800、1900、2000と異常な速度で跳ね上がっていく数値が流れる。

 それを見た勇者の顔に苦悶の色が浮かんだ。


「何いっ!?パワーが上がったのか!?」


 緋の眼になったレイナは赤い涙を流しながら冥王ハデスロッドに極大の魔力を圧縮させる。空間そのものが、圧倒的な熱量で陽炎のように歪む。


「ライアンンンンンッ!!」


 勇者の名前を叫びながら、小さな顎をガクガクと震わせ、なんと無詠唱で極大爆炎魔法を放った。


「【極限虚無アブソリュート終焉爆炎砲ブレイズキャノン】!!」


 逃げ場のない一直線の極太の熱線に対し、ライアンは咄嗟にマイクに叫ぶ。


「シールド展開!」


 ライアンの周囲に七重の魔法障壁が瞬時に展開され、さらに左腕にイージスの盾を構える。


ズガァァァァァァァァンッ!!!!


 極大魔法と神盾が激突し、広間全体が悲鳴を上げて激しく揺れた。

 凄まじい閃光と爆風が吹き荒れる。だが、煙が晴れた後には、盾を構えたまま無傷で立つライアンの姿があった。


「メフィストの弟子か知らんが、勇者に二度同じ技は通じんぞ!」


 ライアンが冷酷に言い放ち、無防備に宙に浮くレイナへ向けて『聖剣エクスカリバー』を一閃した。

「【覇王極光斬はおうきょっこうざん】!!」

 必殺の聖なる光刃が、レイナの小さな体を両断しようと迫った――その瞬間。


 レイナの目の前の空間が、グニャリと不自然に捻じ曲がった。


ズガァァァァァンッ!!


 直進していたはずの聖なる斬撃が、まるで見えない壁に弾かれたように直角に折れ曲がり、神殿の壁を吹き飛ばす。

 歪んだ空間の奥から、巨体を揺らして姿を現したのは――黒ひげだった。


 ライアンのスカウターに情報が流れる。

《個体識別:ソロモン・ティーチ ランクS(LV55)》

《ジョブ:黒ひげ海賊団船長 兼LOGOS》

《空間変形魔法、闇属性魔法有り》

《弱点:常人と真逆位の右心臓》


「ゼハハハ! 危ねェところだったなァ、お嬢ちゃん」


「ティーチ……! なぜ貴様が邪魔をする!」


 ライアンがギリッと歯を食いしばり、凄まじい殺気を放つ。

 黒ひげは虚空を掴んだまま、不敵な笑みを浮かべて言い放った。


「ここで便利屋一味が死んだら、盤面のバランスが悪い。数を減らすなら……お前の強チームからだぞ、ライアン。もっとも、そうなればお前らは『四武神』になっちまうがなァ!」


 失った仲間たちを強烈に侮辱されたライアンが完全にブチ切れる。


「私の帰還を邪魔する愚者よ! 光となって死ね!!」

「ライアン!いつまでも俺様を格下扱いしてると死ぬぜ!? 俺様はイザークとネクロガルから得た二つの能力で無敵にな……」

「邪魔だー! 糞デブッ!!」


 元々ブチ切れているのはライアンだけではなかった。  

 レイナが立て続けに二発目の極大冷凍魔法をまたも無詠唱でぶっ放す。それはレイナが師メフィストと同レベルに成った事を意味していた。


「【絶体零度凍結アブソリュート・ゼロフリージング】ーー!!」


 黒ひげが慌てて掴もうとした空間を掠め、絶対零度の閃光が一直線に走る。

 次の瞬間、黒ひげの左手が凍り付き、その凍結の閃光は止まる事なくライアンへと襲い掛かった。

 

「ぐあああっ! あぶねーな、この糞ビッチが!この場合の俺をふつー巻き込むかー!?」

「メデューサよ!! 跳ね返せ!!」


 ライアンは迫り来る絶対零度の冷気をイージスの盾で強引に受け止めた。

 すると盾に埋め込まれているメデューサの眼が見開かれたまま、イージス盾が分厚い氷に覆われ凍結していく。

 その規格外の威力に舌打ちをしたライアンは、全身から目眩ましの強烈な光を放った。


「チィッ……! 貴様らの相手などしている暇はない!【聖光爆散ホーリー・フレア】!」


「きゃあっ……!?」

「うおっ、目が……!」


 視界を真っ白に染め上げる光。


 それが収まった時、ライアンの姿は影も形も無くなっていた。ライアンの現在の緊急目的は涼と海王ポセイドンのみだった。


「チッ!逃げたか。ううう……マズイ、腕を早く治さなくては……【闇穴ダークホール】!」


 黒ひげは悪態をつきながら自身の足元に空間の穴を開き、仲間のユリアの元へと向かうべく姿を消した。


 冷たい広間に、レイナだけが残された。

 緋色だった瞳が徐々に色を失っていく。


「兄貴……ううっ……」


 極大魔法連発と緋の眼の反動が限界に達し、レイナは糸が切れたようにその場にへたり込む。

 ボロボロと涙をこぼしながら、彼女は冷たい石の床を掻きむしった。

 怒りと絶望が交差する中、三つ巴の激突は唐突な幕引きを迎えたのだった。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 現在ストックは無く、可能な限り新規エピソード執筆に励んでおります。

 その為、 誤字や矛盾点等チェック漏れが稀に出てくるとは思いますが、気付き次第、随時修正・加筆のブラッシュアップを行っていきますので温かい目でみて頂けると嬉しいです。


 皆様の応援が何よりの執筆の励みになります。

 今後とも応援よろしくお願致しますm(_ _)m


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