伝説の超能力戦士
俺たちは祭りの後、その足でガルフの造船所へと向かい、手に入れたばかりの鉱石を親方の前にドンッと積んだ。
「持ってきたぜ、親方。頼む」
「おお!? まさか本当にあのドルフのスケベ野郎を陥落させてくるとはな。上出来だ」
ガルフは蒼海石を満足げに撫でると、周囲のドワーフたちに向かって大声で怒号を飛ばした。
「野郎ども、仕事だ! 徹夜でこの船をポセイドンの海に潜れるように改造するぞ! 急げ!」
活気づく造船所を見つめながら、俺は次なる舞台である絶対渦潮の海の底へと思いを馳せていた。
――モンスタードーム前。
空から巨大な炎龍が突風と共に、巨大な黒ドーム前へと舞い降りた。背から降り立ったのはルークだ。
彼は重厚な扉を押し開け、中にいたゲド爺さんに一言告げた。
「これ、メフィストさんからゲド爺さんにって」
そう言ってルークが差し出したのは、ずっしりと重みのあるピンクの豚の貯金箱だった。
「こっ、これはひょっとして……」
――五年程前
「ゲド爺、金を貸してくれ。今日はレイナの誕生日だからご馳走を食わせたいんだ」
「今までお前に貸して返ってきた事あったか?」
「真面目になろうと思って、店をやめてブタの貯金箱を買ったんだ。いつか金貨一杯にして返すから」
「まあ気長に待つよ」
――現在
金貨で一杯になった重いピンクの豚の貯金箱。それを見た瞬間、ゲド爺さんは一瞬で『全て』を理解した。
あの日の約束が、今、果たされた意味を。
しわがれた目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
ゲド爺さんは貯金箱を抱きしめ、ただ静かに泣き崩れた。
泣き明かすのを静かに待ってから、ルークは真っ直ぐな瞳で彼を見据えた。
「爺さん。これはエルダーリッチが落としたレアドロの『オリハルコン魔石』だ。これで僕のミスリルゴーレムを、オリハルコンゴーレムにしてくれ」
ゲド爺は涙を拭い、力強く頷いた。
「よかろう。やってやるわい」
ゲド爺はすかさず、ドーム内の設備にオリハルコンの魔石を掲げた。
「魔獣進化魔法!」
魔石が神々しい光を放ち、ミスリルゴーレムへと降り注ぐ。ルークもまた『超能力調伏』を展開し、強大な力へと変貌していく巨兵を完璧にコントロールしてみせた。
眩い光を取り込んだミスリルの装甲は、一切の不純物を持たない伝説の金属、最高硬度を誇る『オリハルコンゴーレム』へと見事に昇華を果たした。
ルークが視線を向けると、巨兵は新たな主の圧倒的な魔力に呼応し、ズシンと地響きを鳴らして恭しく片膝をついた。
「流石ゲド爺さん!最高の出来だよ!」
ルークはオリハルコンの巨兵を従え、ドームの外へと姿を現した。
ちょうどその時、上空から巨大な翼が突風を巻き起こし、アナキンが従属するバハムート・改を駆ってドーム前へと降り立った。
ドームを警護していた炎魔神イフリート、ルークの炎龍、そして姿を現したバハムート。
三柱の強大な召喚獣が、三角形を描くように相対した。
ギチリ、と空間が軋む。極まる三獣が放つ圧倒的な熱量と覇気により、周囲の温度が爆発的に跳ね上がった。
『『『久しいな』』』
三獣の重低音が、同時に大気を震わせる。
これら最高峰の炎獣が三柱揃って顔を合わせるのは、実に約百年ぶりのことであった。
そして二主人も交錯する。
「ルーク」
「アナキン」
交わした言葉はそれだけだった。だが、すれ違う二人はそれ以上何も話さずとも、互いの心の内と覚悟を深く感じ取っているようだった。
ルークが炎龍と共に飛び去っていくのを見送ると、アナキンはバハムート・改を引き連れ、巨大なドームの内側――ゲド爺の工房へと足を踏み入れた。
「爺さん。これはヘルケルベロスが落としたレアドロ魔石だ。これでバハムート改をもう一段格上に引き上げてくれ」
アナキンが漆黒の魔石を無造作に放り投げると、続けて鋭い視線をゲド爺へ向けた。
「それと……精神と時の部屋を、もう一回使わせてくれ」
「ば、馬鹿なことはやめろ! これ以上の負荷は無理じゃ……死にたいのか!?」
血相を変えて止めるゲド爺だったが、アナキンの揺るぎない覚悟を見てハッと息を呑んだ。
「お前……もしかして、シュナイダー一族の中で百年に一度だけ現れるという伝説の『超能力戦士』を目指しておるのか……?」
「ほう、流石ゲド爺、よく知っているな」
ゲド爺は深く嘆息し、やがて諦めたように重く頷いた。
「……わかった。お前ならなれるかもしれない。最後の一度だけあの部屋に入る事を許可しよう」
「ありがとう。じゃあこれでルークにだけフェンリルの存在を教えた件を許そう」
「(根に持っておったか……)」
――そして、現実の時間が一時間経過した頃。
重い扉が開き、そこには以前とは全く異なる底知れぬ圧を纏い、紅銀の眼を輝かせるアナキン姿があった。
「お、お前……ひょっとして……」
「ああ。なんとか成れたようだな……伝説の戦士に」
紅銀色に輝く眼と同じ色に、アナキンの髪までもが染まっていく。
「さあ、次はこいつの番だ」
アナキンはドーム内で待機していたバハムート改へと向き直る。
ゲド爺がドームの力を借りて『魔獣進化魔法』を放つと同時に、アナキンも圧倒的な力で『超能力調伏』を行った。
漆黒の魔石が怪しい光を放ち、二つの力がドーム内で共鳴してバハムート改へと降り注ぐ。
眩い光が収まるとそこには、神々しい波動を放つ更なる絶望の象徴――『バハムート零式』が顕現していた。
圧倒的な力を得た零式と共にドームの外へ出たアナキンは、ゲド爺さんにお礼を述べた後、その背に飛び乗り大空へと飛び立っていった。
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