勇者への道
皆が起床すると、俺の部屋のテーブルに集まった。
昨日買ったオーク肉のサンドイッチと、冷蔵庫に入っていた角長牛のミルクを皆で飲み終えると、俺は早速本題に入った。
「みんな聞いてくれ。昨日ライアンが冥王を倒したが、人類粛清計画を防ぐには、ロゴスは別として、まだゼウス、ポセイドン達が残っている。
俺の魔導機械から皆に説明する事があるので聞いて欲しい」
《皆様、お集まりいただきありがとうございます》
《現在私が得ている、この世界の真実に関わる重大な情報を共有します》
《長くなるので省エネモードで話します。サスケさんには念話で伝えます》
《信じられない話かと思いますが、大事な世界の真実の話です》
《今迄の伏線を一気に回収しますのでよく聞いて下さい》
(だからその言い回しは辞めろと。
おお〜見事に皆がひいているぞ)
《まず、この世界の人間と魔獣は、今は亡き三大神の父クロノスと母レアによって作られたものです》
(何―!?)
「「「「「ええ!?」」」」」
俺たちは最初からおったまげた。
《そして、パワーバランスで言うと人間がやや劣っていた為、均衡を図る目的で彼らのお遊びで『勇者』という特別職も設けられました》
《それだけではつまらないと思った彼らは、更に勇者が生まれる条件を作りました》
《それは七つの夢幻心臓を集める事です》
《ライアンが勇者になれたのは、彼の元にクリスタルを持った七人の戦士が集まったからなのです》
《そして天才ライアンのとった方法は、私のような魔動機を味方につけ、この世界の強い人間の順に探していったのです》
(それで一発目の戦闘がギルガメッシュだったのか。やはりやつは天才だ)
《結論から申し上げます。驚く事に、ここにいる皆さまは偶然か必然か、全員クリスタル持ちなのです》
(何―!?)
「「「「「ええ!?」」」」」
《クリスタルは個体や液体のような形があるものではありません。なので皆さまのように自覚がない人がほとんどなのです》
《一度目の魔獣大戦で勇者一行に苦しめられた三大神は、クリスタル持ちの人間が発覚次第、勇者誕生の邪魔をしてきたのです》
《以前エリスさんが冥王の部下やケルベロスに狙われたのは記憶に新しい事でしょう》
《亡くなったメフィストさんがゼウスに狙われ、処刑されそうになったのも原因は同じです》
《そしてメフィストさんは、自分の他に弟子のレイナさんのクリスタルの存在に気付き、三大神にばれないように自らレイナさんを遠ざけたのです》
《ゼインさんは弟のカインさんの、アナキンさんは幼馴染のルークさんが持つクリスタルの存在に気付いていました》
《ゼウス達に自分のクリスタルの存在を悟られ、狙われ始めた彼らは、あえて親しい者から離れる道を選びました》
《ライアンと出会うまでの彼らは、故郷やあなた達を巻き込まないよう真実を伏せ、三大神の敵意を己一身に集め、それぞれ孤独な戦いに挑んでいたのです》
《レイナさん、カインさん、ルークさん。彼らにとって、【あなた達の命は自分の命より重かった】のです》
突き放された裏にあった、大きすぎる愛と覚悟。
真実を知ったレイナとカインとルークは泣き出した。
《この世界には全部で14個のクリスタルがあります》
《クロノス神が勇者は最高二人迄という限度枠を設定した為です》
《そして、残る一つ、最期のクリスタルがポセイドンの居城にある事が判明しました》
《今、ルークさんの肩の上にいるベビードラゴンの本体であり、クリスタルの持ち主でもある伝説の龍戦士が幽閉されています》
『……俺が伝説の龍戦士だったなんて……信じられないギャ』
《残りの一つ、前回大戦時の生き残りの龍戦士が揃った時、資格を持つ涼さんが勇者になれるのです》
「まっまじか?」
《ポセイドンや最強のゼウスを倒す為にはライアンだけではなく、勇者になった涼さんと皆さんの力が絶対に必要です》
《なので次の目標は必然的にライアンたちと同じ、ポセイドンの居城になります》
俺は正直驚愕した。まさか自分が勇者になる可能性があるとは。
いや、むしろ必ず成らなくてはならない。
次回こそ、ライアンより先にポセイドンとゼウスを倒さなくてはならないからだ。
周りのみんなはノアの予想外すぎる話に驚き、言葉に出す事もできず俺の方を見つめていた。
皆の重い雰囲気を変える為、俺は冗談ぽく呟いた。
「フッ、俺が勇者か。『便利屋の勇者』それも悪くないな」
そして少しわざとらしく咳払いをしてノアに尋ねた。
「ノア、ライアンの現在の戦闘力はいくつだ?」
《冥王兜を手に入れたライアンは遂に4000を超えました》
「……なるほど。流石俺のライバルだ。ちなみに以前よりかなり強くなったと思うが、俺の戦闘力は幾つだ?」
《涼さんは以前のライアン戦で150でしたが、今は……300です》
「うんうん、俺も皆に隠れて腕立て腹筋をやったかいが……っておい!」
天然癒やし系のエリスが優しいフォローをする。
「凄ーい、涼さん前の2倍ですよ? もうちょっと鍛えればすぐ追いつきますよ!」
「追いつかねーよ! 何故ならば10倍以上の差があるから! チックショー! ノア、俺に恥をかかせやがって……アンインストールして削除してやるっ!」
《すみません涼さん、半分冗談です。ミスリルアーマーと草薙の剣の数値を加味すると1000を超えています》
《勇者になれば、倍にはなる事でしょう》
「それを早く言ってくれよ」
俺の自虐的笑いで落ち着きを取り戻したルークが、明るい声で言う。
「涼さんはライアンを異常にライバル視しているからな。
みんな、リーダーの涼さんがライアンに負けないように、神でも何でも倒すサポートしてあげようぜ!」
「「「「おー!」」」」
「おっお前ら……」
「兄貴、すぐ泣くなよ」
「三十歳を超えると涙脆くなるのよ」
――星落の霊廟。
そこは、Sランク以上の人間のみが埋葬されることを許された神聖な墓地。
俺たちが部屋で作戦会議を行っているちょうどその頃。
冷たい風が吹き抜ける中、ライアンと残った七武神が、激闘の末に命を落としたイグナイトとメフィストの葬儀をあげていた。
皆、悲しみの表情を浮かべている。
(二人ともすまぬ。俺の判断ミスだ。絶対に仇はとる)
(ごめんね二人とも、私の治癒魔法が未熟だから)
(蠅とピエロは絶対に許さんでござる)
(俺の超能力にもう少しパワーがあれば……バハムートももう一段引き上げよう)
(安らかに眠れ。俺もそっちに行くかも知れん)
(二人ともすまない。奴らは強い。俺の弓技術はまだまだ未熟だ)
声なき悲痛な思いが、静寂の霊廟に溶けていく。
皆は餞別の言葉を送ったあと、それぞれ復讐を胸に誓った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
三日間程お休み致します。




