冥王(ハーデス)戦③ライアンチームの痕跡
荒涼とした岩場を抜け、険しい山道を歩き続けること数時間。
見上げるほどの絶壁が、俺たちの行く手を遮るようにそびえ立っていた。
「ここまでだな。ルーク、サスケ。温存していた足を使わせてもらうぞ」
俺は険しい岩肌から視線を下ろし、背後の仲間たちに声をかけた。
「はい、涼さん! ドラゴ、崖を越えるために炎龍になってくれ」
ルークが腕の中にいるベビードラゴンに向かって頼むと、小龍は短い尻尾をパタパタと振って不満げに鼻を鳴らした。
『……また俺をタクシー代わりにするのかよ』
小さなドラゴンの口から飛び出したその生意気な文句が、なぜか女性陣の心にクリーンヒットしたらしい。
「きゃー! ルークのドラゴン、生意気なところ超ウケるんだけど!」
「本当ですね……! ぷにぷにしてて、すごく可愛いですっ」
「おっ、こいつ今日は一段と愛嬌ある面構えしてんな」
レイナ、エリス、リリアの女性陣がすぐさま群がり、小龍の頭や喉元を撫で回し始めた。
さっきまで文句を言っていたベビードラゴンも、あっさりと陥落して『きゅるる……』と気持ちよさそうに目を細めている。
(なんだ、ベビードラゴン女性陣に大人気じゃん。女はこういうの好きだからなー)
(イヤ、イカンイカン。リーダーがこんな事で妬くのは器が小さすぎる)
「……遊ぶのはそのくらいにしておけ。さっさと飛ぶぞー」
「あれー? 涼、もしかしてトカゲちゃんに妬いてるわけー?」
「馬鹿言え。日が暮れるリスクを考慮しただけだ」
レイナのからかいを苦笑いで流すと、俺は手早くチーム分けを指示した。
「エリス、レイナ、リリアの女性陣はサスケに乗ってくれ。俺とカイン、ルーク、リゼルの男連中は、こっちの炎龍に乗せてもらうことにする」
俺の指示で、巨大な怪鳥ファントムイーグルの姿であるサスケが、女性陣を乗せるために低く身を屈めた。
『承知したでござる!』
そして女性陣に撫でられていたベビードラゴンが眩い光に包まれると、雄大な翼を持つ屈強な炎龍へと姿を変える。
『我の背に乗るがよい、人間ども』
「あれ?……全然可愛くなくなったんだけどー」
重々しく威厳に満ちた炎龍の声に、レイナが露骨に嫌そうな顔をした。
「だろー?」
ルークが苦笑いしながら同意すると、その場にどっと笑いが起きた。
それを見て、俺がわかりやすく嬉しそうな顔をする。
その表情の落差に、女性陣は俺の器の小ささに気づいて呆れ顔になった。
「ちっさー。涼はどんと構えてる方が俺は好きだぞー」
リリアが呆れたように言うと、レイナがすぐさま噛みついた。
「ちょっとリリア、腕枕してもらった位で、どさくさ紛れで好きとか言うのやめてよねー」
「お前はして貰ったのか?」
「燃やすよ?」
レイナが手に黒い炎をチラつかせると、リリアは背中の武器に手をやって不敵に笑った。
「面白い。やってみろ」
「やめなさい君たち! さあ、仲良くサスケに乗せて貰いなさい」
ようやく機謙を取り戻した俺は、ニコニコしながら二人を制止した。
「……涼さん、いつもこんな感じ?」
「そう、兄貴のダサイとこ」
「ここまで来ると逆に清々しいよね、フフフ」
小声でこぼすカインに、ルークが肩を揺らして笑った。
炎龍とファントムイーグルが羽ばたき、高度を上げて崖の上の高原へと到達する。
そこは地底の深淵へと口を開く境界の地。
しかし、そこに広がっていたのは、開け放たれた巨大な『冥界の門』と、見渡す限りに転がる凄惨な魔獣の死体の山だった。
崖の下からでは見えなかった地獄の光景に、全員が絶句する。
「なっ、なんだよこれ……」
カインが青ざめた顔で呟いた。
「……半分以上消された計算でいくと、恐らく1000体以上いましたよ」
ルークが死体の惨状から冷静に数を弾き出す。
『ライアン達の仕業で間違いないでござるな』
サスケが鋭い視線で周囲を警戒しながら告げた。
(チッ、俺の計算ではライアンたちが体力消耗して俺たちは温存できると思ったが……ヤツラの強さは予想をはるかに超えている。ひょっとすると、ヤツラにとって準備運動程度にしかなってないのかもしれない)
俺は凄惨な死体の山を見つめながら、次元の違う圧倒的な暴力の痕跡に、背筋が凍るような畏怖を感じずにはいられなかった。
「リリア、そろそろ戦いが始まりそうだ、アーマーを装着しよう」
「わかった」
「サスケ、この広さはお前も飛べる。この先を偵察してきてくれ」
「御意」
「みんな!遊び気分はここまでだ。ここからは気を引き締めろ!」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」
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