打ち上げパーティー
大臣室には俺一人だけが呼ばれた。
待機室では、カインやリリア、そして合流したエリスやレイナ、ルークたちが久しぶりの再会で楽しそうに会話をしている。
「……便利屋の涼とか言ったな。今回は君たちのおかげで、大事なオークション品を取り戻す事ができた。ありがとう」
豪華な執務デスク越しに、防衛大臣がわざとらしく咳払いをして切り出した。
「いえいえ、俺たちは通りすがりの雇われ武装警備員ですから傭兵みたいなもんです。『働きに見合った報酬さえ頂ければ』それでいいのです。まあ、今回はそれが『た ま た ま でかい案件になった』というだけで、本当にラッキーでした」
俺は愛想の良い笑みを浮かべながら、大臣の反応を窺う。
「そっ、そうじゃな」
大臣の額に嫌な汗が滲む。
「楽しみだなー。死にそうにもなったけど成功して良かったー。一体どのくらいデカい勲功が貰えるのか。待機室のみんなも、早く知りたいだろうなー。あっスミマセンついつい心の声が漏れちゃいました」
「とっ、とりあえずじゃな。私の権限で、当初の三人分の護衛料である金貨三枚じゃあれなので……追加の三名を含めた六枚。その倍の『十二枚』を出そう! さらに、ジャグジー付のスイートルームも三名分追加提供するゆえ、今日は皆で泊まってゆっくり養生するといい」
「はあ? 権限がある大臣の割には、せっこい謝礼っすねー」
俺はわざとらしくため息をついた。
「オークションを最後まで無事に終わらせて、スーパーレアアイテム十五品の奪還、さらに窃盗団達をまとめて退治しての謝礼がそれですか? ガルドレイアの国防大臣としてはケチ過ぎじゃないっすかね? ……それ、国王陛下は知ってるんすか?」
「っ!(そんな大失態、報告できる訳ないだろう)」
顔を青ざめさせた大臣は、縋るような目で俺を見た。
「なっ、何が望みじゃ?」
「まあ、金金言ってもやらしいので。代わりに『俺たちが取り戻してあげた十五品』のうち、『草薙の剣』一つで手を打ちましょう」
「なっ、何ー!? あれは今回のオークションの目玉で、倭の国の伝説剣じゃぞ!? それに落札者もすでにおる!」
「そこは大臣、色付けて返金してあげて下さいよ。それだけで済んで良かったじゃないすか。そもそも盗まれたままなら十五品分そうなったって事すよ?」
「むっ、むう……わっ、わかった。今回は特別に進呈しよう。これでいいかな?」
「ありがとうございます。あっ! それとは別に、金貨百枚で落札された『イエローガムの鞭』も、俺が同額払うので譲って下さい」
「なっ、何じゃと!? まだあるのか! それも落札者がおるし、流石に私の権限ではこれ以上は無理じゃ!」
「え? 無理? マジで? ……うーん。じゃあ、しょうがないなー。大臣の秘密を国王陛下に報告するしかなくなるなー」
「ひっ、秘密って何の事じゃ……?」
「さっき、ジャギが俺に詰められた時にゲロったぜ?黒ひげ窃盗団が国防大臣……つまりあんたに渡した、とんでもない額の『賄賂』がある事をさ」
「なっ、何ぃ―――!?」
大臣は完全に椅子から腰を浮かせた。
「証拠も揃ってるし(嘘だけど)、これって実際かなりヤバいと思うなー。国王や一般市民が知ったら相当怒るだろうなー。この先、大臣でいられるどころか、間違いなく禁固刑だろうなー」
「わっ、わかった! わかった! イエローガムの鞭を金貨百枚じゃな!? なんとか調整しよう!」
滝のような汗を流しながら、大臣は完全に白旗を上げた。
「いいねー、流石は大臣。判断が早い。じゃあ、さっき金貨十二枚くれるって言ってたから、差額の八十八枚をスイートルームまで会計係に取りに来させてくれ。草薙の剣とイエローガムの鞭も、その時に一緒に持ってきてくれよな」
「え!? いっ、いや……! 金貨の代わりの報酬が、草薙剣じゃなかったでしたっけ!?」
「あ゛!?」
「ヒィッ……! いっ、いや、それで! それで行きましょう! それが一番良い!!」
「じゃあ、今すぐ追加のスイートルームの手配をお願いしますね」
俺は笑顔でそう言うと、踵を返してドアを閉めた。
バタン!
静まり返った執務室で、大臣は力なく椅子にへたり込んだ。
「……便利屋の涼、とか言ったな。とんでもないヤツじゃ……」
部屋に戻った俺たちは上機嫌だった。
少しすると、会計係が二つの装備を豪華な箱に入れて持ってきた。
ルームサービスには大臣の指示と思われる、いつもの豪華な料理より更に豪華な食べ物や飲み物が届けられた。
そして、祝勝会という名のただの打上げが始まった。
俺はリーダーとしてのイニシアチブをとる為、今迄の経緯を説明し、感謝を述べた。
「……という訳でスイートルームが一部屋追加されたので、みんな明日の旅立ちに備えて英気を養ってくれ。今回は皆の活躍で黒ひげたちを打ち負かし、『草薙の剣』もゲットできた。正直、エリスやレイナ、ルークが来てくれて本当に助かった。今後は俺も新装備で皆の足を引っ張らないように努力し、役に立ちたいと――」
「凄ーい!何このフルーツデザートプレート。涼達はウチらが修行している間にこんなものばっかり食べてたの?」
俺の言葉の途中で、レイナが目を輝かせて声を上げた。
(コッコイツまたも……)
「俺たちも闘技場に出たりとか何かと大変だったんだ。そんな事よりレイナはお酒禁止だからな」
「まあ、デザートが食べれるからいっか?」
「コホン! とりあえずクソ大臣有難う!乾杯!」
「「「「「乾ぱーい!」」」」」
「ルークは酒強いのか?」
等と盛り上がっていたら、レイナが急に何かに気付いたように首を傾げた。
「そういえばさ、一部屋しか借りてなかったはずだけど、リリアはどこで寝たの?」
「この部屋だぞ?一昨日は涼と寝たしな」
リリアが悪びれもせず爆弾を投下した。
レイナとエリスがピタリと動きを止め、声を揃える。
「「はあ!?」」
「なっ何を急におかしな事を言い出すんだリリア君! 寝たと言っても寝たの意味が違う! 寂しいと言うから抱いてあげただけで……」
「「……抱いてあげた?」」
「イヤ、チガウ、それも意味が違う!」
「変態粛清電撃!!」
「ギャワーー!!」
(やっぱり手を出さなくて正解だった)
全身を貫く電流を浴びながら、俺は心底安堵した。
ルークとカインは俺たちの騒ぎなど完全に無視して、最高級料理を黙々と堪能していた。
俺はこんなんで冥王戦は大丈夫なんだろうかと思いつつ、騒がしい打ち上げの夜を楽しんだ。
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