地下オークション③涼一行集結!
絶対的な死が、俺たちの目の前まで迫っていた――。
――その時だった。
「涼さん、諦めたらそこで終わりですよ!」
背後から響いたのは、この場に似つかわしくないほど凛とした、それでいて慈愛あふれるエリスの声だった。
「何……? なんだあの女どもは」
後方のレイが怪訝そうに眉をひそめる。
「エリス、レイナ!」
俺が驚きに目を見開く中、レイナが挑発的に言い放つ。
「最強無敵! セクシー・ダイナマイト・シスターズ参上!!」
……さっきまで死にかけていた緊張感が一気に霧散する。
だが、彼女たちから溢れ出す魔力量は、以前のそれとは比べ物にならないほど膨大だった。
彼女たちは『魔法使い』から『魔導士』へクラスチェンジを果たしていたのだ。
「涼さん、これ、受け取って!」
エリスが『ホーリーナイフ』を握り、俺に向かって投げた。だが、その投擲速度は異常だった。
ドシュッ!!
ナイフは俺のアーマーの股間をかすめ、床に突き刺さり震えている。
(危なっ! エリスは天然だから恐ろしいぜ……)
「フン、雑魚が二人増えたところで何が変わる」
シュレンが鼻で笑い、再び炎を練り上げる。だが、エリスとレイナは微笑みを崩さない。
「涼さん、【スペシャル・ラブ・バースト】行きますよー!!」
「レイナも行っくよー!」
と言って、レイナは呪文の詠唱に入った。
「……ルーゼ・エリュ・グレア・スコルヴィア
汝、昏き魂にて我を浄めたまえ……」
「レイナ!あいつらはお前と同じ炎と雷属性だぞー!」
エリスのロッドに聖光が集まり、「ホーリー・レイ零式!」と叫び放った。
全てを浄化する黄金の奔流。
その光の中へ、俺は二本のナイフを“必殺の双翼”として放つ。
黄金の奔流に乗った刃は、超高速回転しながらすべてを穿つ光の削岩機と化す。
「「「何ー!?」」」
敵三人が同時に叫ぶ。
シュレンとファルコの顔面をかすり、二人の間を直線的に通過した聖なる光と刃の削岩機は、レイの身体を残酷にも再生不能状態にまで切り刻んでしまった。
「おお氷の女王よ
至高なる者どもの強き連なりの中にて
我は死の氷嵐をその身に纏いし者
今、新たなる契約により氷雪の力を束ねん――
『氷晶契章』!!!」
今度は左右に分かれた二人に、レイナの冷凍範囲魔法が炸裂する。
ガッキーーーン!!
超低温の波が一気に駆け抜け、シュレンとファルコがその場で精巧な氷柱へと変貌した。
炎は一瞬で掻き消え、雷光は霧散していた。
「涼! トドメいーよ!」
「おっおう!」
俺は地面に落ちていたトマホークを拾い、二つの氷柱を打ち砕いた。
敵を粉砕した直後、エリスがカインとリリアに向けて杖を小さく振った。
温かな聖なる光が、満身創痍だったの二人の体を同時に包み込む。
焼け焦げた肌も、雷で麻痺した手足も、瞬く間に完全に癒えていく。
「……信じられねえ」
「たっ、助かった。ありがとうエリス」
二人同時に一瞬で全回復させるのは、これまでの彼女ではあり得ない事だった。
呆然とするカインたちを余所に、俺は即座に港の方角を睨んだ。
「エリス、レイナ、助かった! よく間に合ってくれた!」
「はい!良かったです!」
「レイナの実力!」
「最高のタイミングだったぜ! だがジャギがお宝を持って港へ逃げた! 急いで追うぞ!」
――ガルドレイア港湾
十五人の部下を引き連れたジャギが、自前の船に商品を積み込もうとしていた。
そこへ、堤防の方から一人の青年が近づいてきた。
「あれ?君たち、黒ひげ海賊団でしょ?」
「……ん? 何だ、お前は」
船には黒ひげの海賊旗が掲げてあった。
「やっぱり。何か悪い事ばっかしてそうだもんね」
「野郎、死にたいか!? 殺せ!」
部下たちが一斉に襲い掛かろうとした瞬間、ルークは静かに言い放った。
「召喚!ミスリルゴーレム!フェンリル!」
突然地面からミスリルゴーレムが出現すると、鋼の重圧を伴った無骨な腕が、逃げる間も与えずジャギを無理矢理地面へとねじ伏せ、拘束した。
同時に、フェンリルは銀色の流星の如きスピードでモブ兵たちの間を切り裂くと、鋭い牙と爪で一瞬で全員を始末してしまった。
「な……なんなんだ、こいつらはぁぁぁ!!」
拘束されたジャギの悲鳴が響く中、駆けつけた俺たちは港へと到着した。
そこには、ゴレムンに捕まって身動きが取れず震えるジャギと地面に転がる仲間たちの躯、十五個の商品箱。そして、のんびりとあくびをしているルークの姿があった。
「久しぶり!涼さん、どうぞ」
「ルーク! お前まで間に合ってくれたか!
ジャギ!俺はお前みたいな清々(すがすが)しい極悪人が好きだぜ。殺しても全く良心が痛まない」
「ま、待て! 金ならいくらでも……!」
「拷問されないだけありがたいと思いな」
そういって俺はトドメをさした。
その後、合流したサスケに乗ったカインが警備部長と警備員たちを呼んできて、その場の後始末と奪われたオークション品を回収をしてくれた。
騒動が一段落すると、俺たちは防衛大臣の部屋へと招かれた。
その道中、開けっ放しになっていた治療室をふと覗き込むと、俺たちを散々馬鹿にしていた警備隊の三人が、強硬突破したジャギたちにボコボコにされたらしく、悲惨な顔と身体で呻き声を上げていた。
一瞬、見事事件を阻止した俺たちと目が合うが、気まずそうに目を逸らした。
その無様な姿を見て、俺とカインとリリアは鼻で笑いながら大臣の待つ部屋へと足を進めた。
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