地下オークション②涼一行絶体絶命!
視界の端でアラートが激しく点滅している。シュレンの炎、ファルコの雷、そしてレイの治癒能力。
(考えろ、ライアンならこの修羅場をどうする?……まずはノアだ!)
「ノア!、二回目を使う、最適解を大至急だ!」
俺の呼びかけに応じ視界の端に青白い光の幾何学模様が展開された。
《……解析完了。涼さん大変危険です!結論から申し上げます。現在の戦力での生存確率は約9%》
《昨日の斥候のアミバとの戦闘データが魔蟲の邪眼によってジャギに転送されていました》
「何!?」
《私の計算より敵戦力が増強されたのはその為です》
《そしてそのデータを元に、こちらの弱点を突く殺戮部隊を組んできています》
《まず、敵の頭脳のジャギを叩きたいところですが影が無いためカインが潜れません》
《接近戦がメインのリリアさん達にとって、敵のシュレンとファルコが交互に炎と雷を叩き込むという『ハメ殺し』の布陣です》
《カインさんのシャドウダイブも対策済みで炎と雷のエネルギー光波でうまく影を消し合ってます》
《そして万一、二人が負傷してもヒーラーのレイがいます》
その時だった。ジャギが背後に控える部下たちに顎で合図を送った。
十五人の部下たちは、奪った目玉商品を一つずつ、しっかりと抱え込んでいる。
「俺は一足先に港へ向かう。お前たち三人に、そこのゴミ掃除を任せる。跡形も残すなよ」
「承知した」
ジャギと宝を持った部下たちがその場から姿を消し、五番、六番、七番隊長との三対三の死闘が幕を開けた。
「兄貴、追うぜ!」
「待てカイン!陣形を崩すな! 宝は一旦あきらめろ」
「だが涼、このままでは敵の攻撃でジリ貧だぞ」
《上昇した現在生存確率13%を更に33%に引き上げる作戦が出ました》
「何だ?急げ」
《非常に痛みを伴う『特攻』しかありません》
(ノアが特攻を推してくるのは初めてだ。それ程ヤバい状況って事か?)
《敵陣形は強固ですが、前衛二人が同時に致命傷を負い戦闘不能に陥った場合のみ、後衛のレイは『対象に直接触れて修復する』ために前に出ざるを得ません》
《リリアさんとカインさんを囮にし、レイが前に出たその僅かの隙に、涼さんの一撃でレイを破壊する。これ以外に突破口は存在しません》
「何言ってんだノア!? 味方を囮になんてできねーぞ!?」
シュレンの放つ灼熱の炎がリリアを襲い、ファルコの雷光がカインの退路を塞ぐ。
圧倒的な火力と速度。ジリ貧の防戦を強いられる中、カインとリリアが叫ぶ。
「兄貴、聞こえたぞ!今はそれしかない!」
「同感だ!カイン、一が八か突っ込むぞ!」
「おうさ!」
「二人とも、辞めろー!!」
「死ねェッ!」
シュレンの猛火が爆発的に広がり、ファルコの極太の雷光が空気を焦がして迫る。
「チィッ!」
止むを得ず俺は、腰のマジックポーチから小斧を引き抜く。
リリアはシュレンの火球を真正面から受け止め、アーマーを真っ赤にし、全身に重度の火傷を覆いながらも懐に潜り込み、ドラゴンスレイヤーでシュレンの肋骨を粉砕した。
「げふっ!」
時を同じくして、カインもあえて雷撃を左腕の雷切で受け相殺するも、左上半身から感電で焦げたきな臭い煙が上がる。
その痛みを無理矢理推進力に変えてファルコの足腱を鬼徹で切り裂く。
「ぐあああ!!」
――その瞬間。
「今だ!」
俺は倒れ込む前衛二人の間に割って入り、トマホークをレイの中心線(顔、首、心臓)を目掛け思い切り投げ込んだ。
運命をかけたトマホークがレイの致命箇所に向かって縦回転で飛んで行き、突き刺さった。
ガスッ!
極太の金属が肉と骨にめり込む嫌な音を出して突き刺さったのは、レイの心臓と右肩の間だった。
「ぐふっ! ざ、残念だったわね。べっ便利屋」
パーティーの命運がかかったトマホークは、慣れないアーマーで僅かに左にずれたのだ。
レイは血がしたたるのトマホークを無造作に引き抜き、傷口に片手を添え回復を図る。
「う゛っ! 癒しなさい!」
致命に近い深傷が数秒で完治する。
「……はぁ。使えないね貴方たち」
白衣を羽織ったレイがため息をつき、倒れ伏す二人に触れると、シュレンの肋骨も、ファルコの腱も、異常な速度で細胞結合していき、いずれも完治してしまった。
「チッ……高価なプロテクターが壊れちまったじゃねえか。てめえらの安い命じゃ合わねえぞ?」
シュレンが忌々しげに首を鳴らす。
「手間をかけさせたな、レイ。 ……貴様ら、もう楽には死ねんと思え」
ファルコが冷酷な声で宣告する。
ノアの助言を聞き、リリアとカインが必死の特攻で作り上げたダメージ。それすらも、彼女の指先一つで、ただの『徒労』にされたのだ。
敵は三人共無傷。リリアは全身に重度の火傷を負い、カインも左腕を中心とした上半身が麻痺して動かない。
今の俺に残されたのはエリスに貰ったホーリーナイフ位しかなかった。
「さて。そろそろ灰になれ」
無傷のシュレンとファルコが、再び圧倒的な熱量と雷光を練り上げる。
俺は膝をつく二人を庇うように前に出たが、実際にできる事は何も無かった。
心が折れる音がした。
絶対的な死が、俺たちの目の前まで迫っていた――。
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