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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
― 第二次魔獣大戦 ―

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ルークパーティー VS 神狼フェンリル

――北のアイスランド


 視界を白一色に染め上げる猛烈な吹雪の中を、一頭の巨大な炎龍フレイムドラゴンが飛翔していた。

 吐く息が瞬時に凍りつく極寒の空域。

 分厚い毛皮のコートと防寒具で着膨れしたルークは、竜の背に張り付きながら周囲の魔力探知を続けていた。


『……おいルーク。いくら俺が炎龍でも、この猛吹雪を飛び続けるのは骨が折れる。翼が凍りそうだ』


「弱音を吐かないの、ドラゴ。僕はお前のお陰であったかいけどね。……それにしても、ドラゴは炎龍になったら声も言葉使いも変わってあんまり可愛くないな」


『文句を言うな』


「はいはい。君自身の熱量ならこの程度の吹雪、どうってことないだろ? それに、探知魔法の反応が徐々に強くなってる。もうすぐ目的の場所に到達するはずなんだ」


『本当か? さっきから雪と氷しか見えないが……ん?』


 不意に、ドラゴが鼻を鳴らして飛行速度を落とした。


「どうしたドラゴ」


『……血の匂いだ。それに、とんでもなく冷たくてデカい魔力の塊がぶつかり合ってる。おいルーク、あの雪丘の向こうだ!』


「向かってくれ!」


『わかった!』


 ドラゴが吹雪を切り裂きながら雪丘を越えると、すり鉢状になった氷の谷底で、凄惨な戦闘が繰り広げられていた。

 中心にいるのは、小山ほどもある巨大な白銀の狼だ。それを、この極寒の地を縄張りとする凶悪な魔物、数十頭の氷狼アイスウルフの群れが包囲している。

 氷狼もまた一頭一頭が熟練の冒険者をほふるほどの力を持つはずだが、白銀の狼の姿はあまりにも常軌を逸していた。


 白銀の狼が天を仰ぎ、凄まじい咆哮ハウリングを上げる。

 その瞬間、まるで空間そのものが凍りついたように、氷狼たちの動きが完全に停止した。金縛りにあったように硬直した群れの中を、白銀の巨体が一条の閃光となって駆け抜ける。

 音を置き去りにする程の超速の斬撃。動きの止まった狼たちが、抵抗する間もなく片っ端から細切れに引き裂かれていった。


「……見つけた。ドラゴ、あれだ。間違いない」

『すげえ威圧感だな。あれがお前の探してた目的のフェンリルか?』


 全頭を始末し終え、血濡れた雪原に降り立ったフェンリルが、上空のルークたちを鋭い双眸そうぼうで睨みつけた。


『何だお前たちは? 今の惨劇を見ていなかったのか? わざわざ死にに来たか』


 ズシン、と地響きを立ててドラゴが谷底へ着地する。周囲の雪が炎龍の熱で瞬時に蒸発し、白い湯気を上げた。

『おいおい。フェンリルだか何だか知らねーけど、俺もいるんだ。あんまり調子に乗るな』


「ドラゴ、勝手に話すな。……君が伝説の狼、フェンリルだね?」


『だと言ったら?』


「急に来てすまないが、僕の従魔になってくれ」


『……お前は馬鹿か? しかしストレートだな。今までワシが殺してきた人間たちとは違うようだな』


「すまないが、あまり時間をかけたくないんだ」


『そうか。ならばワシもストレートに返そう。そこの炎龍を含め、何匹で来ようと構わん。お前らが勝てば言うことを聞いてやる』


「そうくるよね。――召喚! ミスリルゴーレム!」


 ルークが前方に展開した巨大な魔法陣から、白銀の輝きを放つ純金属製の巨兵が現れた。

 フェンリルが目を細め、先ほど氷狼の群れを一掃した『王の咆哮ハウリング』を放つ。大気がビリビリと震え、後方にいるドラゴすらも一瞬怯むほどの圧倒的な威圧感が谷底を支配した。


 だが、ミスリルゴーレムは微動だにしない。無機物である巨兵は、呪縛の咆哮を意に介さず重厚な拳を振り上げた。

『ほう、無機物か。恐怖を知らぬ人形ならば、ワシの精神呪縛も通じぬというわけだ。面白い!』


 次の瞬間、フェンリルの巨体が吹雪に溶けるように掻き消えた。

 鋭い金属音が連続して鳴り響く。速すぎる。ルークの目にも捉えきれない神速の移動から放たれた斬撃が、ゴーレムの全身を乱打に切り裂いていた。火花が散り、強固なはずのミスリルの装甲がベコベコと軋みを上げて削られていく。


「流石の攻撃力だ……! ドラゴ、ゴレムンを盾にしろ! 上空から周囲の雪原を焼け!」


『任せろ! 消し炭にしてやる!』


 ドラゴが巨体を躍らせて飛び立ち、上空から最大火力の灼熱のブレスを吐き出した。

 それに対し、フェンリルもまた大きく息を吸い込み、超低温の吹雪ブリザードを口から放つ。

 極炎と極寒の激突。凄まじい水蒸気爆発が起こり、視界が真っ白な霧に包まれた。


『竜の分際で小賢しい真似を!』


 霧を切り裂いて飛び出してきたフェンリルだったが、着地の瞬間、その体勢が大きく崩れた。

 ドラゴのブレスの真の狙いはフェンリル自身ではない。極寒の雪原をドロドロの泥水に変え、フェンリル最大の武器である『圧倒的な機動力と足場』を奪うことだったのだ。


『チィッ……!』


 足場を失いかけたフェンリルが、全身から超低温の冷気を放ち、泥水を再び凍てつかせようとする。

 だが、ルークが待っていたのはまさにその一瞬の隙だった。


「ゴレムン、捕らえろ!」


 背後の足元から突然顕現したゴーレム――ゴレムンが、泥濘でいねいに足を取られたフェンリルの背後に肉薄し、その太い両腕でフェンリルの後ろ足をがっちりと掴み上げた。


『なっ……!?』


 さらに上空から急降下したドラゴが、鋭い足爪でフェンリルの上半身を力強く大地へ押さえつけ、その長い尾と身体を絡ませて完全に動きを封じる。


 力任せにもがくフェンリルに対し、ルークはトドメとばかりに両手をかざした。


「――調伏!」


 ルークが放った強烈な超能力サイコキネシスの不可視の重圧が、上空からプレス機のようにフェンリルの全身を覆い尽くした。ピタリと、文字通り一切の動きが止まる。


 ミスリルゴーレムの怪力、火竜の拘束、およびルークの超能力。完璧な三段構えの包囲網を前に、さしもの伝説の狼もついに全身の力を抜いた。


『……まっ、参った。そなたの従魔となろう。生まれて初めての負けだ』


「まあ、三対一だけどね。 これからよろしく!」


 ルークが笑顔で告げると、フェンリルは短く息を吐いた。


『ああ、よろしく頼む』

『よろしくな!』

『ゴア、ヨロ……シク』


「愛称は……フェンリーだね」

『そっそんな単純なあだ名になるんだな』


 猛烈な吹雪が嘘のように晴れ渡っていく雪原に、伝説の狼と火竜、そしてミスリルの巨兵という、規格外のパーティの和やかな声が響き渡った。

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