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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
― 第二次魔獣大戦 ―

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ガルドレイア闘技場(後編)

 ガァァァァンッ!!


 有無を言わさぬ開始のゴングが鳴り響き、不当な試合が強制的に幕を開けてしまった。


 作戦通り、まずはリリアが陽動のために正面から突っ込んだ。

 しかし――長男が先ほど受け取った武器を振るった瞬間、空気が震えた。


 それは本来、地下オークションに出品されるはずだった凶悪な魔具『イエローガムのムチ』だった。異常な伸縮性と粘着力を持つそのムチが、その存在に気づいていなかったリリアの足をあっという間に絡め取る。


 こちらがやろうとしていた機動力削ぎの先を越されてしまい、観客席からは地鳴りのような歓声が沸き起こった。

「チィッ!」

 俺は舌打ちをしつつ、手にしていたロープから慌てて『ホーリーナイフ』へと持ち替える。


 身動きの取れないリリアへ、次男が容赦なく青龍刀を振り下ろす。

 だが、新調したばかりの『アダマンタイトアーマー』のおかげで、辛うじて腕は守られていた。


 その隙を突き、カインが動く。【影道潜闇シャドウダイブ】を発動し、長男へ向けて奇襲を仕掛けた。

 しかし、完璧なタイミングで黒刀を突き出したにもかかわらず、なぜか動きを完全に読まれており、長男の盾にあっさりとブロックされてしまう。

 さらに、弾かれたカインを追撃するように三男の刃が襲いかかる。持ち前の反射神経でギリギリのところで躱したものの、場内の熱気はさらに跳ね上がった。


 無傷の瞬殺劇になるはずが、普通に激戦になってしまった。

 元々、人間よりも体力とパワーで勝る戦闘力の高いリザードマンは、真っ向勝負では途轍とてつもない脅威となる。


 それに追い打ちをかけるように、あのクソ審判が笛を吹き鳴らした。

 何故かリリアのドラゴンスレイヤーが『本人の身長以上あるため規定違反だ』などと謎の主張をし始めたのだ。

 仕方なく、リリアは自分の大剣を手放し、慣れないカインの『雷切』を借りる羽目になった。


 作戦もクソもなく、盤面はもう滅茶苦茶だ。

 審判が完全に敵だとわかった以上、自分たちでどうにかするしかない。頼みの綱であるノアのサポート上限もすでに使い果たしている。


 絶体絶命の状況下で、俺は冷静に敵を観察していた。

 長男が構えているあの盾――あれは伝導性の高い『銅の盾』だ。

 俺は即座に閃き、仲間に声を飛ばした。


「リリア! 長男にタイマンを仕掛けろ! 盾で防がれても構わない!」

「カイン! 【影道潜闇シャドウダイブ】をもっと洗練させろ! 兄貴を超えるんだ!」


 俺の言葉を聞いた瞬間、カインの目から焦りや怒りが消え、なぎのように静かに変わった。

 カインはそのままゆっくりと自身の影の中へと沈んでいった。


「おおおおおおっ!!」


 リリアが叫び声を上げながら、重戦士らしい爆発的な踏み込みで長男に襲いかかる。

 長男はカインの奇襲を防いだ時と同じように、反射的に銅の盾を構えてブロックした。

 ――瞬間


バチバチィィッ!!


『雷切』から放たれた紫色の強力な放電が、銅の盾を伝わって長男の全身を駆け巡る。

「ガアァァッ!?」


 強烈な感電により、長男の巨体がビクンと硬直する。その一瞬の隙を、Aランク戦士であるリリアが逃すはずもなかった。

 事前のノアのアドバイス通り、鱗の薄い首元へ向けて容赦なく雷切を振り抜き、深々と掻っ切る。

 さらに、この展開を完全に想定済みだった俺が間髪入れずに踏み込み、あっさりとナイフを心の臓へ突き立てた。


 陣形の要であった長男が崩れ落ち、残された二体は明らかに動揺した。

 そこへ、普段とは別人のような恐ろしいほどの集中力でギアを上げたカインが襲いかかる。

 影から影へと変幻自在に移り渡りながら、軌道が全く見えない黒刀で一瞬で四の太刀まで斬りつけ、次男と三男の足を四本とも瞬く間に切り落とした。

 重いアダマンタイトのアーマーを着用しているとは思えない身軽な動きでリリアが追撃し、刀と盾を持った二体の両手を次々と斬り落としていく。


 手足を失い血を噴き出すリザードマンたち。血だるまになったそのエグい場面が闘技場中央の大画面魔導モニターに大写しになるが、観客たちは悲鳴を上げるどころか、この日一番のヒートアップを見せた。


 俺は転がる二体の心臓に冷酷にホーリーナイフを突き立てる。


「極悪三兄弟の解体完了だ!」


 決め台詞を放つと、闘技場は爆発的な熱狂に包まれた。

 三体とも完全に息絶えているため、あの審判も試合を続けようがなかった。


 八倍まで膨れ上がった大穴のオッズをものにしたと思われる、百人規模の観客たちから狂気じみた大歓声が沸き起こる。やがて終了のゴングが打ち鳴らされ、俺たちの勝利を告げるアナウンスが会場内に鳴り響いた。


 審判は苦虫を噛み潰したような苦々しい顔で歩み寄り、忌々しそうに俺の手を挙げた。そして、証拠隠滅とばかりにイエローガムのムチはちゃっかりと回収していく。


 試合後、控室へ戻ると、闘技場の警備部長が目を丸くして待っていた。

 俺たちの圧倒的な実力に驚愕した彼は態度を急変させ、賞金の代わりに『オークション終了までのスイートルームと極上の食事の提供』を提案し、見事、俺たちを臨時警護団に採用してくれたのだった。


 あのクソ審判の不正をここでチクリたかったが、今はオークション警護の任務をこなすのが最優先だ。下手に波風を立てて作戦に支障が出るのも面倒なので、今回はあえて黙認してやることにした。


 その後、俺たちはギルドへと立ち寄り、八倍に跳ね上がったオッズの配当金――金貨八十枚という大金をきっちりと回収した。

 ホクホク顔で案内された闘技場併設の『五つ星超高級ホテル』は、ふかふかの絨毯に巨大なシャンデリアが輝く、王族が使うような広々としたスイートルームだった。

 眼下に広がる要塞都市の美しい夜景を見下ろしながら、俺たちは見たこともないような高級シャンパン『アルマンドン・ペリニヨン』が注がれたグラスを掲げた。


「それじゃあ、金貨八十枚の大勝利と、あのクソ審判の引きつった顔に……乾杯!」

「「乾杯!!」」


 運ばれてきた最高級ガルドレイア料理のフルコースは、まさに絶品の一言だった。

 リリアは重戦士らしい見事な食べっぷりで、肉汁が滴る分厚い『ガルドレイア特牛の霜降りステーキ』を頬張り、幸せそうに目を細めている。ほっぺについたソースが可愛い。


(完全に肉食系女子だな。まあ、それも嫌いじゃないよ)


 今回の実戦で【影道潜闇シャドウダイブ】に磨きがかかったカインも絶好調で上機嫌だ。高級シャンパンのグラスを傾けながら、大ぶりの『エマールエビのグリルソテー』を美味そうに平らげていく。

 俺も一口食べてみたが、異世界特有の濃厚なバターと白ワインの風味がエビの甘みと絶妙に合わさって、控えめに言って最高だった。


【料理メモ】

・エマールエビのグリルソテー最高!

・異世界バターと白ワインが合うようだ


 金貨八十枚をゲットした強烈な余韻に浸りながら、俺たちはタダで提供された五つ星の極上料理と美酒を腹いっぱい詰め込んだ。


 理不尽な死闘を臨機応変にひっくり返した俺たちは、この上ない達成感と贅沢なひとときを心ゆくまで堪能したのだった。

 最後までお読みいただきありがとうございます!

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