表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
【生存確率28%】からのサバイバル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/101

異世界ソロキャンプと便利屋の知恵

(まずは暗くなる前に、水と食料、そして寝床の確保だ)


 元の世界に居た時に、趣味でソロキャンプを始めていた。しかし、こんな死と隣り合わせの状況で、その経験が役に立つとは思わなかった。


(まずは高所に行って水場を探そう)


 丘の上に立つと、世界が一気に開けた。


「……嘘だろ」


 はるか遠くに、街らしき影が見えたのだ。

 石壁に囲まれ、煙がゆっくり空へ伸びている。


(よし! 文明があるぞ!)


 そして手前には、広い湖も見える。

 陽光を受けて、水面が静かに光っていた。


(流石に街までは遠すぎるな。今日は無理だ)


 日没までに辿り着ける保証がない。


(夜の移動は危ねえ)


 夜に魔物出現率が跳ね上がるのは、ゲームをやったことがある中学生でもわかる鉄則だ。


 丘を下り、湖に着いた。

 用心の為、大きな岩を背にして陣取る事にした。


 まずは火起こしだ。

 腰の作業ベルトを外し、持ってこれた手持ちの道具を確認する。

 使い込まれた作業用ナイフ、ドライバー、レンチ、ビニールテープ……。

 数え切れないほどの現場を共にしてきた、俺の大切な相棒たちだ。

 

「チッ、ライターがあれば一発だったのに」 


 乾いた枝を集めて、枯れ草をほぐす。

 木同士を擦りつけて摩擦を起こす。

 煙はすぐには出ない。


(焦るな、湿気がある。根気よくいけ)


 枝を削り、摩擦点を固定する。

 空気の通り道を作る。


 ――四十分。

 ようやく細い煙が上がった。

 息を吹き込むと、小さな火種が赤くなる。

 用意していた小枝達に移すと、パチパチと心地よい音を立てて炎が立った。


「よし!成功だ」


 一息ついてから、次は水の確保に動く。

 湖へ向かう。

 倒したゴブリンから調達した粗末な革袋を念入りに洗い、水を汲む。

 だが直接は飲まない。

 用心深い俺は、しっかり煮沸消毒する主義なのだ。


 拾ったヤシの実の殻のようなものを鍋代わりにして火にかける。

 冷ましてから、おそるおそる一口。


「……美味しい。生きてる」


 途端に、腹が大きく鳴った。

 俺は即席の釣り竿を作ることにした。


 しなやかな木の枝にビニール紐を結びつけ、釣り針は手持ちの針金を加工した。

 餌は湖岸にいた虫だ。

 釣り経験もある俺は、タンパク源になる水辺の虫は何でも餌にできる事を知っていた。


 第一投。


 即席の道具のせいで、いつもより狙ったポイントに投げられない。

 だが、しばらく待つと竿先がピクピクと震えた。

 竿が大きく弧を描き、手のひらに生き物の力強い鼓動が伝わってくる。


(キターーー!!)


 強引に引くと、水面で暴れる銀色の魚。

 湖岸まで引っ張り、陸地にあげる。


(釣れたー!!)


(めっちゃ嬉しい! めっちゃ楽しい!)


 釣れた魚は、体側がわずかに青白く光っていた。

 すかさずスマホを向けてみる。


《観測確定》

《種別:ルミナスパーチ》

《サイズ:32センチ》

《毒性:未検出》


(ルミナス……光る魚か)


 ノアのおかげで進化したスマホは、まるでスカウターのようになっていた。


(素晴らしいぞノア! これはマジでチートアイテムだ! 便利屋の俺にとって、この情報は最強の攻略ギアだ!)


 その後、立て続けに四、五匹と釣れた。

 完全な入れ食いってヤツだ。 

 俺は高校三年間を飲食店バイトに捧げ、調理師免許も取得していた。

 便利屋の依頼で食事を作った事だってある。


 作業用ナイフで手早く鱗を落とし、腹を割って内臓を抜く。

 近くに生えていた葉を千切って指先で擦る。

 爽やかな柑橘の香りがした。

 念のためスマホを向ける。


《芳香成分検出》

《人体への有害性なし》


 刻んで魚の身に擦り込む。

 細い木の棒を口から通して、焚き火の傍で串焼きにする。

 脂がポタポタと火に落ち、食欲をそそる香りが立ち昇る。

 焼き上がった身に、かぶりつく。


「うまっ!!」


 過酷な異世界サバイバルの初日だが、一瞬の幸せを感じる事ができた。

 スマホのメモ帳アプリを開き、親指でフリック入力する。


【ルミナスパーチ 可食】

・柑橘系野草と相性良

・強火で皮目パリッ


(次は塩を手に入れたいな)


 夕暮れ。

 双月が昇る。

 二つの白い月がゆっくり近づいていく。

 焚き火の光が柔らかく周囲を照らしていた。

 少しだけ、胸が締め付けられる。


(キャンプの時に火を見るのって、何かよくわからんけど落ち着くんだよなあ)


 火の揺らぎ越しに、夜の湖を眺めながらセンチメンタルになり、自然と涙がこぼれた。


(……帰りてぇ)


(いや、待てよ……。ここは異世界だぞ。テンプレ通りなら、街に行けば可愛いエルフとか、癒やし系の美少女との出会いがあるんじゃないか?。明日、必ずあのアノ街に行ってやる……!)


 現金なものだが、下心のおかげで、冷え切っていた心に少しだけ生きる活力が湧いてきた。


 ふとスマホを見ると、画面の端で充電マークが点滅している。

 なるほど、月の力でバッテリーが充電されていっているようだ。 


 その時。

 静かな森の奥から、空気を裂くような悲鳴が聞こえた。

 以前聞いた、ゴブリンの声だ。

 鈍い衝突音と、肉を裂き骨を砕く生々しい音が、遠く離れたここまで響いてきた。

 慌ててスマホのカメラを起動し、望遠ズームで音のした方角を覗き込む。

 

《巨大狼型:ワーグ(魔獣LV5)》

《弱点:炎》


 画面越しに見えたのは、四足の巨大な影がゴブリンを丸呑みしている凄惨な光景だった。

 どうやら昼間俺を襲ったゴブリン達が、ワーグという、より上位の魔獣に狩られてるらしい。

 血塗れのゴブリンを咥えたワーグが、遠くからこちらの焚き火の光を見つめている。

 しかし近づいてくることはなく、ふいっときびすを返して森の奥へ消えていった。


(まさに弱肉強食だな。焚火が無ければ俺もあいつの腹の中だったかもしれない……)


 この時俺は、お気楽なキャンプなんかじゃない、本格的な死と隣り合わせの異世界サバイバルが始まっている事を完全に理解した。


(果たして俺は、この世界で生き延びる事ができるのだろうか?)

 

 焚き火の火を絶やさないよう薪をくべると、俺は大きな葉っぱの陰に隠れるように横になった。 


(いや、生き抜いてみせる。そしていつか必ず、あのスーパースターに打ち勝ってやる)

 

 心身ともに疲れ果てた俺は、そのまま泥のように眠った。

 最後までお読みいただきありがとうございます!


 「面白かった!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!


 皆様のイイネ評価とブックマークが、何よりの執筆の励みになりますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ