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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
【生存確率28%】からのサバイバル

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商業都市ーベルクレア

 パチパチと爆ぜる音が止み、焚き火はいつの間にか白い灰の山に変わっていた。

 空にはまだ、薄く双月の残像が淡く浮かんでいる。

 異世界の朝は驚くほど静かだったが、森の奥からは時折、正体不明の獣の遠吠えが聞こえてくる。

 俺は冷ましておいた革袋の水を一口飲んだ。


「……よし、行くか」


 昨日よりもずっと重く感じる足取りを無理やり進め、魔物の気配に注意を払いながら丘を越える。

 すると視界の先、草原の果てに、威容を誇る巨大な石壁が姿を現した。


(魔物防御の為か? ……それとも、人間同士の戦争のためか)


 その向こう側からは、何本もの灰色の煙がゆっくりと空へ立ち上っている。

 近づくにつれ、風に乗って色々な臭いが漂ってきた。

 香辛料の刺激臭、家畜の獣臭、鉄を打つ匂い。そして、焼きたてのパンのような甘い香り。

 期待と緊張が胸の中で激しく交錯し、心臓の鼓動が少しずつ速くなる。

 意外なことに、開け放たれた巨大な正門に、厳つい門兵の姿はなかった。

 どうやらこの街は、来る者を拒まない方針らしい。

 門をくぐった瞬間、俺の目の前に圧倒的な熱量のマーケットが広がった。


(おお~人間だ。本当にたくさんいる)


 荷馬車が列を作り、泥のついた野菜を抱えた農民らしき男たちが闊歩している。

 中には、使い古された革鎧に身を包み、腰に無骨な剣を下げた『冒険者』風の連中も混じっていた。


「安いよ安いよ! 朝獲れの果実だ!」

「鉄剣の研ぎ直しならこっちだ!」

「おい邪魔だどけ! 荷馬車が通るぞ!」


(おお〜ラッキー! 何故か共通言語だ)


 石畳を叩く馬の蹄の音。鍛冶屋から響く金属の打撃音。男たちの怒鳴り声。

 それらが混ざり合い、肌にピリピリと伝わるほどの活気を生み出している。


(ここからが大事だ。まずは情報を整理しないと……)


 俺は周囲の目を盗んでスマホを取り出し、本日一回目のアドバイスを試みる。


「ノア、この街に来て俺がまず何をすれば良いか、適切なアドバイスを頼む」 


《涼さん、私を呼ぶのが少し遅かったですね。ここは商業都市――ベルクレア》

《言語は私を通してこの世界に適応済みです》


(あっどおりでね) 


《現在、あなたは完全な文無し(所持金ゼロ)です。

《本来なら、昨日の魚五匹を門前の露店で『銀貨五枚』と交換させる予定でした》

 

(マジか!?あの魚、そんなに価値があったのか)


《どちらにしても、今のあなたは初来訪のカモです。放置すればすぐに盗賊にすられていたでしょうから、結果は同じだったかもしれませんね》

 

(うーん、今のってノアなりのギャグなのか?)


《それと、宿に泊まる、仲間を集める、食べ物を購入する。何をするにもこの世界では『お金』が必要です》


(そこで苦労するのは、前の世界と一緒ってわけか)


《しかし、ここは商業都市。持たざる者が成り上がる方法はいくらでもあります》

《涼さんのツールベルトにある『プラスドライバー』を一本、目の前の露店で売ってみて下さい。交渉次第で金貨一枚迄辿り着けます》


(これを売るのか。商売道具だし、後で補充だな)


《そしてそれを元手に、便利屋としての経験を生かして【わらしべ長者作戦】を実行してください》

《今のこの街には、あなたの技術を必要としている場所が点在しています》

《あなたの高い交渉力を生かし、最小資本から最大利益を狙ってください》

《……一つ目の月の力が切れたので、アドバイスはここまでです》


「了解だ、ノア。助かった」


 画面が消え、暗転したスマホをポケットに放り込む。


(ふー……。まずはドライバーを金貨に変えるところからか。便利屋の腕の見せ所だな) 


 俺は気持ちを引き締め、目の前の露店で勝負を挑む。


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