指輪
ショッピングモール内をただのんびりと歩いていた俺たちは、アクセサリーが置いてある雑貨屋に辿り着いた。
「そういえば颯太って、ピアスとか付けないんだな。開けてもないみたいだし」
「だって痛そうじゃん?」
「それはそうだけど……」
「クラスメイトが耳から血を流してんの見ちゃったらさ、余計に」
「俺もそれ見たら止めると思う……でもちょっと憧れるな」
「開けてやろうか?」
颯太にやってもらうとはいえ、怖いものは怖いと感じた俺は、
「遠慮しとく……」
「そっか」
すると颯太は、イヤリングの中から一つ取り、俺の耳にかざしてきた。
シンプルで丸くて、さりげない感じのデザインのものだった。
「んー、陽希は付けない方が良いかもな」
「なんでだよ」
「そのままが一番良いと思ったから」
颯太はイヤリングを棚に戻し、その流れで俺の左手を握った。
「なん……」
「こっちに指輪あるじゃん」
「誤魔化すな」
颯太はシンプルなデザインの指輪を持って、俺の左手薬指にはめてきた。
「似合うじゃん」
「おい、なんでこの指なんだよ」
「いつかつけるんだし良いだろ? それにサイズも分かったし」
顔が熱くなる感覚がした。
本当にズルい。そういうことをサラッと言いやがる。
「顔赤い。照れてる?」
「照れてねぇし」
「じゃあ目ぇ合わせろ」
「それは、無理……」
「照れてねぇなら合わせられんだろー」
顔見せれるわけねぇだろ……だって左手薬指って、つまり……。
商品だから外さなきゃいけないけど、外したくないって気持ちがあって……。
でも結局外して、別の店を回ることになった。
ガチャガチャコーナーや本屋、普段俺が着ないような服が売ってる店。いろんな場所をぐるぐるしてたら、いつの間にやら夕飯の時間になっていた。
フードコートで夕飯食べた後も、またショッピングモール内を歩いていたけど、段々眠くなってきた。
「陽希? 眠い?」
「そんなわけねぇだろ……」
「噓つくな。帰るか?」
「やだ。帰りたくない」
あれ、今、俺何て言った?
「陽希、今日陽希ん家行っても良い?」
「なんで」
「まだ一緒にいたいから。俺の家でも良いけど。泊まる?」
「じゃあ……って、さすがに泊まらないぞ」
「なんだ残念。せっかく教えてやろうと思ったのに」
「は? 教えるって、何をだよ」
「言わない」
「おい! 気になるだろ!」
「秘密」
結局教えてもらえなかった。
夜中、俺は自分の部屋で布団に入ったは良いけど、颯太が言っていたことが気になって、中々寝付けなかった。




