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花火大会の前に

 午後四時頃。図書館から出た俺たちは、一度家に帰って荷物を置こうということになったが、俺の家は図書館から少し遠いからという理由で、成瀬の家に行くことになった。

「緊張するか?」

「するわけねぇだろ……!」

「へぇ、俺は初めて陽希ん家行った時は緊張したぞ?」

「緊張する奴はアポなし訪問しねぇよ」

「まぁ断られない自信あったし」

「どこから来るんだよその自信」

「強引なのも好きだろ?」

 言葉に詰まる。

「図星じゃん」

「ちげぇよ!」

 咄嗟に否定したけど、自分でも説得力がないと思った。


 成瀬の家に到着し、荷物を置かせてもらって、出発しようかと思ったら、リビングから女性が出てきた。

「あれぇ、颯太が男招き入れてる」

「姉さん、なんだその言い方」

「これからどっか行くの?」

「ああ、花火大会に」

「じゃあ浴衣着て行きなよ。持ってたでしょ?」

「持ってるけどサイズ合わねぇんだよ」

「じゃあそっちの子が着れば良いじゃん」

 と、成瀬の姉さんが、俺を指さしてきた。

「それもそうだな」

 なんか納得してる!? いやいや、俺のサイズピッタリの浴衣なんてあるわけが……。


 と思ったけど、成瀬から借りた浴衣は、驚くほどピッタリだった。

「へぇ、似合うじゃん」

「そうかよ……」

 すると成瀬が耳元に口を寄せて、

「可愛い」

 俺の心臓が跳ね上がり、咄嗟に距離を取った。

「ばっ……何言ってんだ!」

「事実だろ」

 しばらくすると、成瀬の姉さんがやって来て、

「へぇ〜似合うじゃん」

 反応が同じだ……。

「陽希くん、だっけ? 写真撮ってあげる」

「はいっ!? なんで……」

「記念記念!」

「そうだな、撮ってもらおうじゃねぇか」

 隣に立った成瀬の手が腰の辺りに来て、ついビクッとしてしまう。

「撮るよ〜、3、2、1……」

 良いポーズが思いつかなくて、無難なピースをした。上手く笑えてんのかな?

 カメラを向けられると、笑顔が固いって言われるし……。

「おっけー上手く撮れたよ〜」

 と、見せてもらった写真の俺と成瀬は、お互いを見ており、明らかにカウント前に撮ったとしか思えないものだった。

 隣の成瀬は何故か黙ってるけど。

「颯太って、こんな顔すんだね」

「絶対送れよ」

「りょーかーい」

 成瀬は、自分のスマホにさっきの写真が送られて来たのを確認すると、俺の手を掴んできた。

「じゃあ行ってくるわ」

「いってら〜、デート楽しんできな〜」


 外に出てしばらく歩いたあと、成瀬が、

「姉さん、絶対気づいてたよな」

「何に?」

「俺らが付き合ってるってこと」

 そう思うと、俺は急に恥ずかしくなってきた。

「まぁ隠すつもりもねぇし、良いんだけどさ」

 そう言った成瀬の耳は、少し赤かった。

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