今日の予定
夏休みも後半に入ってきた頃。
俺は図書館で、宿題と睨めっこをしていた。
もちろん成瀬も一緒だ。向かい側ではなく、隣に座っている。
付き合い始めてから距離感がやけに近くて……いや、恋人ってそういうものなのかなとも思うけど……。ずっと肩が触れてて気が気じゃないし、たまに耳元で「よくできました」と言ってくるし。俺の心臓がもたない。
「おい陽希、ちゃんと集中してんのか?」
「誰のせいだと……!」
すると成瀬が人差し指で、俺の唇に触れ、
「俺のせい?」
何も言い返せない。
言い返したところで、さらにからかわれるのが目に見えてる。
俺は大人しく、宿題の方に目線を戻した。
「陽希、そこ違う」
成瀬は、俺がさっき解いたばかりの問題を指さした。
「計算ミスしてる」
そう言って成瀬はノートを出して、どこが違うのかしっかり教えてくれた。
ちゃんと勉強は見てくれるし、教えるのも上手いし。彼氏として申し分ないくらい優しい。
そんな奴が恋人とか……未だに実感が湧かない。
「聞いてんのか?」
「え? ああうん、聞いてる聞いてる」
「聞いてなかっただろ」
「聞い……て、ませんでした……」
「珍しく素直だな。さて、休憩にするか」
成瀬は立ち上がると、財布を持って自販機に向かった。
俺も席を立って、気分転換に図書館の中を歩くことにした。
適当に眺めていると、ふと掲示板に貼ってあるポスターが目に入った。
「花火大会……」
「気になるのか?」
背後から成瀬の声が聞こえて心臓が跳ねる。
「お前っ……急に現れんな……!」
「悪かったな。ほら、陽希が好きなジュース」
俺は少し考えてから受け取り、
「許す」
「素直じゃねー。まぁそういうところ含めて好きなんだけどな」
「不意打ちやめろ」
「んでさ、花火大会行きたい?」
花火大会なんて、久しく行ってなかった。一緒に行く相手なんて家族しかいなかったし、混んでるところ嫌だったし。
でも、今は……。
「成瀬が行きたいなら、行きたい」
「お、デートのお誘いっぽいね」
「ちがっ……いや、成瀬と行きたい。祭りデート……これで満足かよ」
すると成瀬はニコッと笑って、耳打ちしてきた。
「よく言えました」
「だからっ、不意打ちやめろっての……!」
「そんなとこも好きなんだろ?」
いつもいつも図星を突きやがって……!
「てか花火大会っていつだよ」
そう言われて目に入った数字は、今日の日付だった。
「マジかよ」
「へぇ〜、陽希とデート続行とかラッキーだわ」
成瀬がニヤニヤしながら、俺の顔を覗いてきた。
「最初から知ってたかのような口ぶりだな」
「さぁ? どっちでしょう」
多分知ってたなコイツ。
でも、今日が花火大会で、デート続行って言われると、なんだかソワソワしてしまう自分がいた。




