離さないまま
遊園地内のゲーセンで、見知らぬ女性が成瀬だけを真っ直ぐ見つめて立っていた。
「やっぱ颯太じゃん。奇遇だね」
俺が唖然としていると、成瀬がそっと俺の手を握ってきた。
表情は見えないけど、多分警戒してる。
「ねぇまた今度遊ぼうよ〜」
「悪いけど、俺らデート中だから。邪魔すんな」
彼女に冷たく言い放った成瀬は、俺の手を引っ張って外に出た。
着いた先はフードコートで、俺は空いてた席に座らされた。
成瀬は対面に座り、
「何食べたい?」
「えっと……考えさせて」
「おう」
とは言ったけど、正直メニューが頭に入ってこない。
さっきの女性は誰なのかとか、何で警戒してたのか、とか。
「陽希」
心臓が跳ね上がって我に返る。
「な、何?」
「いや、メニュー頭ん中入ってないだろ」
「いやいや入ってるって」
「嘘つくなよ。勉強集中できてない時と同じだったし」
「んなっ!? なんで分かんだよ」
「ずっと見てきたからな。だから、気になることがあるってのも分かる」
思わず目を逸らした。何もかもお見通しって顔だし。
俺は、聞いても良いのかと迷ったけど、覚悟を決めて聞くことにした。
「さっきの女の人って誰?」
成瀬は深呼吸してから口を開いた。
「あれは元カノ」
やっぱりそうだったんだ。
「アイツは何股もしてたクズ女でさ。俺はキープ枠だったらしい」
「成瀬ほどの奴をキープって……」
「だからこっちから振った。なのにアイツは、まだ俺が未練持ってるって勘違いしてんだ」
「だから『今度遊ぼう』って言ってたのか」
「俺は陽希にしか興味ねぇのに。な?」
不意打ちの不敵な笑みをくらってしまい、顔が熱くなる。
「顔真っ赤。まだ暑い?」
熱中症と勘違いしてんのか? なら好都合……。
「それとも、俺に見惚れてんの?」
「はぁっ!? ちげーし!」
「えー、傷つくなぁ」
「面白がってるの間違いだろ……!」
いつものからかい、いつもの笑顔。
胸の奥にあったモヤモヤが薄れていくのを感じた。
元カノって言われた時は焦ったけど……。だってあの人『今度遊ぼう』とか言ってたし。
今でも繋がりあるのかと思ってたけど、よくよく考えたら、成瀬は元カノを警戒してたみたいだし。
「なぁ陽希、何でニヤけてんの?」
「ニヤけてねぇ!」
「俺が陽希を選んだから嬉しかった?」
図星。
「ははっ、ホント陽希って分かりやすいな。そういうとこが好き」
「うるせぇ」
でも嫌じゃない自分がいる。
我ながらチョロいなとは思う……。
それからフードコートで昼食を済ませ、夜になるまでアトラクションに乗ったり、ゲーセンで景品を取ったりして遊んだ。




