今日はずっと心臓に悪い
成瀬と付き合い始めて早一週間。
鏡の前で絆創膏を貼り直しながら、俺は小さくため息を吐いた。
あの日、成瀬に結構強めに付けられたキスマークは、まだ残ってる。
さすがに薄くなってきたみたいだけど、絆創膏は欠かせない。親にはまだバレたくないからな……。
時刻は朝八時。二度寝でもしようと思ってベッドに転がったとき、スマホから着信音が鳴った。画面を見ると、そこには成瀬の名前があった。
俺はドキドキしながら電話に出た。
「もしもし」
『おはよ、陽希』
「おはよう……」
挨拶だけなのに、こんなにも嬉しいなんて思ってなかった。
『今日の予定空いてる?』
「空いてるけど」
『じゃあ遊園地行こうぜ』
「また唐突だな……」
『嫌じゃないだろ?』
「そうだけど……今後は事前に言って欲しい。いつもいつも心臓に悪いんだよ」
『後でもっとドキドキさせてやるよ』
「お前なぁ……!」
こうやって振り回されるのが嫌じゃない自分がいる。
そして十時半頃。
俺は成瀬と遊園地で園内マップを見ていた。
「陽希はどこ行きたい?」
「別にどこでも……」
「てかなんだその絆創膏」
集合した時指摘されなかったからバレてないと思ってたのに……!
「これは……その、お前のせい」
すると成瀬がニヤリと笑った。
「俺のせい、ねぇ……」
「ああもう! ジェットコースター行くぞ!!」
「耳真っ赤だぞ」
「うるせぇ!」
それから俺たちは回数券を買って、ジェットコースターの列に並んだ。
「てか、陽希は絶叫系平気なの?」
「平気に決まってんだろ」
本当はそうでもないけど。
勢いでジェットコースターって言っちゃっただけなんだよなぁ……。でも多分平気だろ。小学生以来だし、少しはマシに……。
そしてジェットコースターを降りた瞬間、足から力が抜けた。
「無理」
「平気なんじゃなかったのかよ」
「元気だなお前は……」
すると成瀬は、さりげなく俺に肩を貸してくれた。
「ゲーセンの方行こうぜ。そこなら座れるとこあるから」
いつもは強引なクセに、こういう時はちゃんと優しくしてくれて。
好きにならないわけねぇよ……。
ゲーセン内に入ると、冷房がしっかり効いていて、さっきまでの暑さと気持ち悪さが嘘のように薄れていった。
成瀬に対する熱は下がってないけど。
ベンチに座ると、成瀬が自販機まで飲み物買いに行って、スポーツドリンクを手渡して来たり、ハンカチでサッと俺の汗を拭き取ったりと、至れり尽くせりだった。
コイツ絶対モテるだろ。
そう考えていると、
「颯太?」
聞き覚えのない女の声がした。
成瀬はピタリと動きを止め、俺は彼女の方を見た。
そこには、成瀬だけを真っ直ぐ見つめる女の人が立っていた。




