触れて、ほどけていく
なんで、お前が苦しそうな顔すんだよ。
「なぁ、答えろよ。陽希の好きな奴って誰だよ」
言葉が出てこない。
何か言わなきゃとは思うけど、なんて言ったら良いか思いつかない。
「俺が知ってる奴か?」
成瀬が一番知ってる。
「同じ学校の奴か?」
そうだよ、同じ学校。
「クラスの奴か?」
何ならいつも隣にいる。
質問攻めしてくる成瀬に、ちゃんと言葉に出来てるはずなのに、答えられない。
成瀬は何か意を決したような表情で真っ直ぐ見てきた。
「陽希、嫌だったら突き放しても良いから。でも、突き放して欲しくない」
俺は……押し返したくない。
次の瞬間、呼吸ごと奪うみたいに、唇が重なる。
重ねてるだけなのに、甘くて、永遠に続いてるみたいで、鼓動がハッキリと分かる。
やがて成瀬が離れていき、なんだか寂しく感じた。
「陽希、好きだ。俺を選んでくれ」
俺の肩を掴む成瀬の手は震えていた。
待て。しれっと受け入れてしまったけど、さっき普通にキスしたよな……? それに、告白もされてる。
「これ、夢……?」
「夢なんかじゃねぇよ」
成瀬が俺の首筋に顔を近づけ、歯を立ててきた。
「痛っ……!?」
「よし、綺麗についた」
「何すんだよ! まだお前の告白成功したわけじゃねぇのに!」
「まぁそうだな。でもお前、唇離した時、蕩けた顔してたぞ」
「はぁっ!?」
マジか。そんな顔してたのかよ俺!
顔が一気に熱くなる感覚がした。
「忘れろバカッ!」
「忘れねぇ。だって、好きな奴の色んな表情、覚えておきてぇじゃん?」
言葉に詰まった。そんなこと言われたら、何も言い返せねぇよ。だって、俺も同じだから。
「夢だって言うなよ?」
成瀬が、俺の首元に残った感触を、指で撫でてきた。
「これが現実だって、分かるだろ?」
不敵な笑みを浮かべる成瀬には、もうかなう気がしない。
「成瀬……もっかいチューしたら、分かるかもしんねぇ」
「なんだその言い方。俺のこと煽ってんの?」
「良いからっ! 早くしろよ、颯太」
再び唇が重なる。
指は絡められて恋人繋ぎになる。
さっきよりも少しだけ長く感じる。でも実際は一瞬。離れた後、やっぱりどうしていいか分からなくなって、目線を逸らした。
繋がれた手だけがやけに熱い。
「お望み通りしてやったぞ。これで分かったか?」
「うるせぇ」
「相変わらず素直じゃねぇ奴。でも、それもひっくるめて好き」
「そんなハッキリ言うなっ!」
「ははっ、顔真っ赤」
「そんなことねぇ!」
思わず顔を逸らした。
「陽希、俺聞きたいんだ。行動も良いけど、やっぱり言葉で」
また息が詰まる。こっちは勇気振り絞ってキスで返事したのに、言葉でも欲しいだと?
「強欲な奴……。俺も好きだよ、バカ」
「もう一回」
「はぁっ!? 言わねぇよ!」
「やだ。もう一回言って」
「お前半分からかってるだろ!」
素直に言えない代わりに、俺は繋がれた手をぎゅっと握り返した。




