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待ってたわけじゃない

 あれから何もないまま、夏休みに入ってしまった。

 別に……最終日に何か言われるんじゃないかと期待していたわけじゃない。期待していたわけじゃない……!

 ベッドの上で、宿題もやらずにゴロゴロしていると、突然スマホが震えた。

 画面を見ると、見慣れた名前が表示されている。

『成瀬』

 一瞬で心臓が跳ねた。

「来た……」

 いやいやいや……! 別に待ってたわけじゃないし。

 クソッ、なんでこんなにも心臓がうるさいんだよ。

 指が少し震える。

 ただの連絡だろ。なのに、やけに呼吸が浅くなる。

 チャットを開くと、

『今、暇?』

 短い一文。

 それだけなのに、妙に意味深に見える。

『まぁ暇』と打って送信。即答するのも、なんか悔しいから、少し間を開けてから。

 既読がつくのは早かった。

『陽希ん家行って良い?』

 は……? なんで……。

『お前、俺の家知ってんのかよ』

 案内した記憶はないぞ。

『知ってる』

『この前自分で言ってただろ』

 んなわけ……と思ったけど、なんか言ったような気がしなくもない。

『てかもう家前来てる』

「はい??」

 次の瞬間、インターホンが鳴り響いた。

「ちょ、待っ……!?」

 反射的に立ち上がる。

 部屋の中を見回して、思考が止まった。

 しっかりと散らかってる。

 机の上には開きっぱなしのノート、床には脱ぎっぱなしの服。

 ゴミもそのまま。最悪だ。

「なんでこのタイミングで来るんだよ……!」

 慌てて適当に物をまとめて、クッションの下に突っ込む。

 意味があるのか分からないけど、やらないよりマシだ。

 もう一度インターホンが鳴った。

「はいはい今行く!」

 深呼吸を一つして、玄関へ向かい、ドアノブに手をかけた瞬間、心臓がまたうるさく鳴った。

 ゆっくりドアを開けると、そこにはいつも通りの顔をした成瀬が立っていた。

「やっと出て来た」

「出て来た、じゃねぇよ! なんで来てんだよ!」

 思わず声が裏返った。

 成瀬は特に気にした様子もなく、鞄を開いた。

「蛍光ペン、教室に忘れてたぞ」

 差し出されたそれを見て、言葉が詰まる。

「また見づらいノートになるだろ」

「余計なお世話だ……!」

 反射的に言い返しながらも、受け取った蛍光ペンを握る手に力が入る。

 なんでわざわざ……別に会えて嬉しいとかそんなんないし……!

「それだけかよ」

「あとついでに」

 成瀬は当たり前みたいに言った。

「宿題やるぞ」

「は?」

「どうせ終わってねぇだろ」

 なんで分かるんだよ。

 呆れて言葉も出ないまま立っていると、成瀬は一歩近づいてきた。

「お邪魔します、っと……」

「いや、勝手に入ろうとすんな!」

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