表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

気づいてしまった

 クラゲ空間を抜け、エスカレーターを使って次のフロアに向かうと、そこにはカフェテリアがあった。成瀬が顎でそこを示す、

「なんか飲むか? 今なら人少ねぇし」

「おう……」

「何飲む? 食べもんでも良いけど」

 俺は少し考えてから、

「キーホルダー付きドリンク……」

「りょーかい。買ってくるわ。高坂は空いてるとこ座ってろ」

「金は……?」

「いーから座ってろって」

 俺は渋々、空いてる場所に座って、成瀬を待っていた。

 しばらくして、戻ってきた成瀬からキーホルダー付きドリンクを受け取った。

 付いてきたのはアザラシのキーホルダー。可愛いけど、クラゲが欲しかったな……と少しだけ肩が落ちた。

 成瀬は俺の隣に座った。手元にはバジル風のナゲット。一口食べると「うま」と言って、また一口と進めて行った。

 そんな呑気な成瀬との距離は、肩が触れそうな距離。もう少し離れて欲しいという気持ちと、離れないで欲しいという気持ちがせめぎ合って混乱してくる。

 するとナゲットを食べ終わった成瀬が、

「やっぱ飲み物買えば良かったな。ちょっと買ってくるわ」

 そう言って買いに行き、帰ってきたと思ったら、成瀬の手元には、俺と同じアザラシのキーホルダーがあった。

「高坂がクラゲのやつ物欲しそうにしてたからさ、出たらやろうと思ったんだけど……ただのお揃いになっちまった」

 その言葉に心臓が跳ね上がる。

 キーホルダーはランダム。三分の一だけど、まさか同じキーホルダーだとは……

「高坂、イルカんとこ行こうぜ」

「おう……でもショーって」

「今日はもうなかったはずだぜ? だから良いんだろ、ゆっくりイルカ見れるし」

 歩き出す成瀬に付いて行く。正直手を繋がれると期待してしまった自分が恥ずかしい。


 イルカスタジアムの観覧席には驚くほど人が少なかった。

 俺たちは最前列に座り、のんびり泳ぐイルカたちを眺めていた。

 ドリンクを飲みながらボーッとしていると、成瀬が突然ポツリと言った。

「落ち着いたか?」

 何がだ、と言いかけて、気づく。

 さっき泣いたからか。

 人混みから離れて、静かな場所に連れてきて、俺のためにだったって。

 わざわざ気を使われたことに、胸の奥が、じわりと熱を持つ。

 それ以上何か喋るわけでもなく、ただイルカたちを眺めながらドリンクを飲んでるだけ。

 それが心地良かった。


 そしてドリンクを飲み終わり、二人でカフェテリア近くのゴミ箱に戻ろうとしていた。

 が、途中でクレーンゲームを見つけて、ついその中にあったイルカストラップを見つめてしまった。

 それに気づいたのかどうか分からないけど、成瀬が、

「お、あのイルカ取れそうじゃん」

 と躊躇う事なく百円と投入し、プレイし始め、たった二回でイルカを取ってしまった。

「すげぇ……」

「ほら、やるよ」

 と言いながら、イルカストラップを差し出されて驚く。

 やっぱり気づかれてたのか、それともただの偶然か、どちらにせよ俺のために取ったんだと思うと、胸が苦しくなる。

 ただ嬉しくて。

 成瀬からイルカストラップを受け取ると、なぜか頭を撫でられた。それが慰めだと気づいた時には、もう……

 もう、無理だ。誤魔化せない。認めざるを得ない。


 俺は、成瀬が好きなんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ